欧州サッカー、新シーズンの「静かな開幕」/UEFAスーパーカップ@インテル・ミラノ 0-2 アトレチコ・マドリード

UEFAスーパーカップ。

と言ってももちろん、容量 1.5倍のカップラーメンの名前ではない。

昨シーズンのUEFAチャンピオンズリーグとヨーロッパリーグ、その2大大会のチャンピオンが激突する、夏の風物詩とも言うべき試合。
毎年この時期に行われる、シーズン最初のメジャータイトルの掛かった一戦が、この日に行われた。

そして言い換えれば、ヨーロッパの新しいシーズンが、いよいよ本格的に開幕することが告げられたのである。

大きな動きの見られない新シーズン

ヨーロッパの移籍市場は8月の末でいったんクローズする。

まだ残り3日で「駆け込み移籍」の可能性も残されているけれども、ここまでのところ、今シーズンは比較的マーケットの動きは落ち着いているようだ。
昨シーズン開幕前の、クリスティアーノ・ロナウドやカカー、ズラタン・イブラヒモビッチのような “超大物” の移籍は、あまり見られていないのが現状である。

その理由ははっきりしないけども、レアル・マドリードのようなビッグクラブが、今年はあまり選手を買い漁りに走らなかったことも一つとして挙げられるだろう。
大きな移籍がまとまると、移籍元のチームはその選手の穴を埋めようとするために、そこから連鎖的に「玉突き移籍」が発生することが多い。
しかし今年は、その引き金を引く超大型移籍が発生しなかった。

そういうわけで、ワールドカップイヤーだったにも関わらず、あまり移籍が活発に行われないオフシーズンだった印象である。

この日に試合を行った両チームも、戦力に比較的大きな変動のないまま、新シーズンを迎えていた。

インテルのマイコンやディエゴ・ミリート、スナイデル、アトレティコ・マドリーのフォルランやアグエロらは、移籍が盛んに噂された時期もあったけれども、今のところチームに残留する可能性が高そうだ。

逆に両チームともに、目立った新加入選手も見られない。
最大の変化といえばインテルのジョゼ・モウリーニョ監督が退団し、後任にラファエル・ベニテスが就任したことくらいだろうか。

大きな入れ替わりのない、裏を返せば成熟した戦力で新ーズンを戦うことになりそうである。

慎重な展開に終始した、平凡なタイトルマッチ

それを反映してどうかは知らないけれど、試合のほうも静かな立ち上がりを見せた。

この両チームは、普通に考えれば UEFAチャンピオンズリーグを制した「真のヨーロッパチャンピオン」、インテルのほうが実力が上なのは間違いないだろう。
しかし試合を通じて、インテルに格上の風格は感じられなかった。

それだけ拮抗した勝負だったとも言えるし、両チームとも慎重だったとも言えると思う。
様子を伺っているようにも、リーグ開幕を控えてあまりリスクを負いたくないと考えているようにも見えた。

そんな中、先制点が生まれたのは 61分。
ピリっとしない試合の中でひとり気を吐いていたホセ・アントニオ・レジェスが、中央のパス交換から強引な突破を図る。
一度はインテルの DFに突っかけられたものの、粘りのドリブルで持ち直してシュート。
これが決まって、アトレチコが貴重な先制点を挙げた。

追う立場になったインテル。
しかしゲームの展開は大きく変わらなかった。

逆に 81分、シモン・サブローサに右サイドをあっさりと破られて、いとも簡単にクロスを上げられてしまう。
これを中央で待っていたセルヒオ・アグエロが決めて2点目。

けっきょくアトレチコがこの2点を守りきって、シーズン最初のタイトルを手に入れた。

熱しきらなかったストーブリーグ

戦力面では大きなプラスもマイナスもなく、新シーズンを迎えた両チーム。
この試合ではあまりテンションを感じられなかったけれども、リーグが開幕すれば、昨シーズンからの継続性のある安定した戦いぶりを見せてくれそうである。

ただ僕は、一抹の寂しさを感じなくもない。

オフシーズンはストーブリーグとも言われる。
新シーズンに向けた移籍マーケットの動向は、それ自体がファンの一つの楽しみでもある。

しかし今年のストーブリーグは、僕にとってはやや物足りない印象を受けたのだ。

3大リーグで大きな補強を行ったチームと言えば、ダビド・ビジャとハビエル・マスチェラーノを獲得したバルセロナと、メスト・エジルとアンヘル・ディマリアの加入したレアル・マドリード、マリオ・バロテッリとダビド・シルバを獲ったマンチェスター・シティくらいだろうか。
それでも、例年に比べれば小粒感を感じる部分もある。

移籍の活発化は年棒の高騰などの弊害も生むけれども、適度な移籍は各国リーグを活性化させる大きなエネルギーにもなりうる。

個人的にはあまり闇雲に移籍が行われるのはどうかと思う部分もあるし、クリスチャン・ビエリのような地に足のつかない放浪癖のある選手もあまり好きではない。
逆にパオロ・マルディーニやポール・スコールズのように「生涯一クラブ」を貫く選手たちは、カッコいいなあと思ったりもする。

ただ、適度な移籍の活性化や、年に数名の大型移籍には、やっぱりワクワクさせられる。
そういう意味ではバランスよく移籍は行われて欲しいとも思うし、今年の動きのない移籍市場には、ちょっと物足りなさも感じてしまうのである。

ただそうは言っても、もちろんそれが即、各国リーグの質を落とすようなことにはならないだろう。

見た目にはちょっと寂しい形になりそうな、この夏の移籍マーケット。

でも各国のクラブには、そのぶん充実した「濃い」戦いっぷりを、今シーズンも期待したいものである。

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