大観衆を魅了した「大阪・Fの陣」/Fリーグ@シュライカー大阪 2-6 名古屋オーシャンズ

僕が競技フットサルの試合を見るのは、2回目である。

1回目は先月の東京で観たFリーグ開幕戦

2回目となる今回は、初めて地元の大阪での試合に足を運んでみた。

シュライカー大阪のフラッグ@シュライカー大阪 VS 名古屋オーシャンズ_201009

大阪はコンパクトな街だ。

僕は横浜出身だけど、子どもの頃に東京に行って山手線に乗ったときはいつも、どこまで行ってもビルの林立する東京という都市の巨大さにビビったものだ。

大阪は大都市だけども、東京と比べると街自体がとても小さい。
主要な施設は狭い範囲に集中していて、小回りが利くところがこの街の良いところでもある。

この試合の会場だった大阪市中央体育館も、大阪の中心街からほんの 10分、15分地下鉄に乗った駅の目の前にある。
思いついたら気軽に行けるこの距離と、ほど良くマッチするフットサルのカジュアル感。

そんなこともあってか、この日の会場にはすごい数のお客さんが来場したのだった。

大阪を埋めた大観衆

Fリーグの発足以来3連覇中の絶対王者・名古屋オーシャンズを、地元のシュライカー大阪が迎えたこの一戦。

入場者数は 4,969人を記録した。

これはFリーグとしては、けっこう驚きの数字である。
何とセントラル開催を除いては、これまでのリーグ史上最多の観客動員数になるそうだ。

大阪市中央体育館@シュライカー大阪 VS 名古屋オーシャンズ_201009

シュライカー大阪はもともとリーグの中でも集客力のある方だったけれども、それでも今季ホーム開幕戦の入場者数は 1,668人。
5,000人に迫る勢いのこの日の観客数が、どれだけ記録的な数字なのかは容易に察しのつくところだろう。

そしてこの数字の要因の一つに、名古屋オーシャンズのリカルジーニョの名前が挙がるのは確実だ。

サッカーで言えばクリスティアーノ・ロナウド級とも言われる、このフットサル界のスーパースターの来日によって、今季のFリーグは俄然活気を帯びている。
開幕戦でも代々木第一体育館には、6,000人を超える大観衆が詰め掛けていた。

実際、僕のようにリカルジーニョを一目観ようと来場したミーハーファンもいるわけだから、その効果の大きさは疑いのないところだろう。

そして試合自体も、その大観衆に見せるに恥じない、ハイレベルな好ゲームとなった。

試合前@シュライカー大阪 VS 名古屋オーシャンズ_201009

披露された、絶対王者の底力

リーグ3連覇中、今季もここまで2位につける名古屋オーシャンズ。

対するシュライカー大阪は、前節終了時点で7位。
昨シーズンは3位でフィニッシュした実績を考えると物足りないけれども、ホームを埋めた大観衆の前では、是が非でも良いゲームを見せて勝ちきりたいところである。

そんな気迫が功を奏したか、試合はシュライカー大阪の先制点で幕を開ける。

7分、シュライカーの頼れるブラジル人、「エビちゃん」ことエビーニョのミドルシュートが決まって、シュライカーは理想的な立ち上がりを見せた。

両チームともほぼベストメンバーを揃えたこの決戦で、まずシュライカー大阪が主導権を握ることに成功する。

シュライカーは、開幕戦は怪我で欠場していた、リーグ3代目となる昨シーズンの MVP、「絶対守護神」のイゴールが3節から戦列に復帰。
この日も序盤は、何度もスーパーセーブを見せる。

そのイゴールを中心とした守りで、ロースコアの逃げ切りを図るというシュライカーのシナリオが、おぼろげに描かれていった。

しかし、絶対王者・名古屋オーシャンズの牙城は、そう簡単には崩れなかった。

先制点以降、名古屋オーシャンズは組織的なディフェンスで、シュライカーにチャンスの芽を作らせない。
失点は許したものの、その隙のない強さは、真綿で首を絞めるようにジワジワとシュライカーを追い詰めていく。

そして 14分、イゴールの壁はついに破られた。

パス交換から左サイドを突破した Fリーグの2代目 MVP、北原亘のフワリと浮かせたセンタリングを、前田喜史が合わせて同点に。

ここから、名古屋オーシャンズは怒涛の攻撃力を見せつける。

2分後の 16分には、FKのこぼれから繋いで北原がゲット。

さらに2分後の 18分には、カウンターから森岡薫、木暮賢一郎と繋いで最後はラファエル・サカイ。

後半に入って 26分には、Fリーグ初代 MVP、森岡薫がミドルを突き刺す。

そして 40分には、カウンターから再び北原。

さらにその直後には、パワープレーに出たシュライカー大阪からボールを奪って、リカルジーニョが無人のゴールに超ロングシュートを蹴り込んだ。

一方のシュライカー大阪は、名古屋のバックパスのミスから永井義文が1点を返すのが精一杯。

けっきょくリカルジーニョのゴールの直後に笛が鳴り、名古屋オーシャンズが下馬評どおりの大勝劇で試合を締めくくったのである。

試合を彩ったテクニシャンたち

リカルジーニョは評判通りの選手である。

僕はこの日を含めてリカルジーニョのプレーを2回観たけれども、やはりそのテクニックの高さは際立っていた。
異次元の高速フェイントをはじめ、パス、そしてディフェンスの場面でも貢献し、最後にはゴールも挙げる活躍。
リカルジーニョが素晴らしい選手であることに疑いの余地はないだろう。

ただそれでも、名古屋オーシャンズはリカルジーニョのワンマンチームではない。

試合を観ているとむしろ、両チームを合わせて見てみても、決してリカルジーニョひとりだけが突出しているわけではないことに気がつく。

この日も「観客を湧かせるプレー」という意味では、名古屋の森岡薫や、シュライカー大阪のエビーニョ、ドゥダ、イゴール、一木秀之らも決して見劣りしないプレーを見せていた。

実際、僕の周りで一番「あいつ、うめー!」と絶賛されていたのは森岡薫である。

つまりFリーグのレベルも、それだけ上がってきていると言えるのではないだろうか。

試合中@シュライカー大阪 VS 名古屋オーシャンズ_201009

「リカルジーニョ効果」が呼んだ熱気

開幕戦の記事でも書いたけれども、フットサルの観客とサッカーの観客とを比べると、客層が微妙に違っていることに気がつく。
この日の大阪の会場でも、ガンバやセレッソの試合とは少し違う客層が来場していたようだった。

一番目立ったのは、やっぱりサッカー経験者っぽい若い子たちである。
Jのファミリー向けの雰囲気に比べて、新鮮でクール、そしてプレーの美味しい部分を凝縮したようなフットサルという競技が、若者のハートを捉えるのは理解できる。
この日の客層も、明らかにJのそれと比べて若かった。

そしてリカルジーニョ効果か、この日の会場には、一見して「初めてフットサルを見に来た」と分かる、ビギナーの観客も目立っていた。

試合を観ていると周囲の観客の話し声なんかが自然と耳に入ってくるけれども、この日の僕の周りに座っていた人たちから聞こえてきたのはこんな感じである。

(「現在、◯個目のファールです」との会場 MCのアナウンスを受けて)「え、ファールが貯まるとどうなるん?」
(パワープレーでフィールドプレーヤーがGKユニフォームを着るのを見て)「え、あんなのありなん?」
(Fリーグ初代 MVPの森岡薫の活躍を見て)「え、あの金髪だれ?外人?超うまいやん」

もちろん、それが悪いと言いたいわけでは全くなくて、そういうビギナーの人たちがリカルジーニョ見たさに会場を訪れて、それでフットサルのファンになってくれるのならとても良いことだと思うのだ。
まあ偉そうに言っている僕も、最近やっとルールを覚えたばかりのビギナーなんだけど…。

だから僕は、この日の 4,969人という観客数に、大きな可能性を感じている。

音楽のライブなんかでも大阪の観客は基本的にノリが良いけれども、この日の会場は、スタンドを埋めた観客の数に比べると静かに感じられた。
観客の多くが、フットサルという競技の楽しみ方を、まだ掴みきれていないみたいな雰囲気だった。

それでもこの日の両チームが見せたハイレベルな技巧の数々は、確かに大阪の若いファンの心を捉えたようである。

「サッカーの、しょうもない(時の)試合よりも面白くね?」

「間違いないね」

東京でも聞かれた全く同じようなセリフは、フットサルという競技の価値をズバリ言い表している。

僕は同じサッカーファミリーとして、サッカーとフットサルのどっちが上か・下かという比較論はあまり好かないんだけれども、それでもフットサルには、サッカーにはない魅力があることは確かだ。

そしてこの日の両チームのプレーは、プロフェッショナルな興行に充分値するものだった。

残念ながら、僕の応援するシュライカー大阪は負けてしまった。

でもホームチームの勝ち負けに関わらず、この日の試合は、集まった大観衆に向けてのプロモーションとしては大成功だったのではないだろうか。
きっとこの日の観衆の中に、もう一度フットサルの会場に足を運んでくれる人がいるだろう。

僕がこの日、Fリーグに感じた大きな可能性。

しかし、リカルジーニョ効果もいずれは落ち着きを見せることだろう。

そして、この日の熱気を、それ以降にも引き継いでいくことができるのか。

それが今、Fリーグが一番真剣に考えていかないと行けないことなのかもしれないと、僕は感じている。

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