宇佐美貴史、その荒削りな大器の片鱗/J1リーグ@川崎フロンターレ 1-2 ガンバ大阪


Photo by electricnude

Jリーグもシーズンの 2/3を消化し、残すところは 11試合となった。

優勝争いも佳境に入り、各チームとも「勝負の秋」を迎えている。

ただ同時に、個人的にはJリーグ同様に重要ではないかと感じている大会が、すぐそこにまで迫ってきている。

10月3日に中国で開幕する AFC U-19選手権。

来年の U-20ワールドカップの予選を兼ねたこの大会で、日本は必勝を義務付けられている。

2年前のこの大会、日本は宿敵・韓国の前にベスト8で敗れ去り、7大会連続で出場していた世界大会への切符を逃す、大きすぎる敗北を喫した。

そして今回、この大会に臨む U-19日本代表でエースとみなされているのが、ガンバ大阪の宇佐美貴史である。

中学生時代から怪物と騒がれ続け、今季ついにJでもブレイクを果たした、プラチナ世代を代表する超新星。
宇佐美は U-19代表と同様に、いよいよガンバ大阪でもレギュラー格として、その座を確保しつつある。

代表とガンバ、その双方で欠かせない存在となった宇佐美貴史。

この川崎フロンターレ戦はその宇佐美にとって、代表合流前で最後のゲームとなる一戦だった。

宇佐美貴史の見せつけた「大器の片鱗」

今季の宇佐美貴史の成長ぶりには目を見張るものがある。

高校3年生にして迎えた、Jリーグ2年目となる今シーズン。
開幕当初こそプレーに迷いも見られたけれども、それは試合ごとに解消され、今や優勝争いを演じるガンバの主力の1人にまで成長を遂げた。

宇佐美貴史の最大の魅力は、何といっても積極果敢にゴールを目指すその姿勢にある。

そしてこの試合でも、宇佐美のそのアグレッシブな姿勢は、すぐに大きなチャンスを呼び込んだ。

前半9分。

安田理大のスルーパスに反応したのは、宇佐美貴史だった。

宇佐美は DFラインとの駆け引きに勝ち、絶妙なタイミングで裏に抜けだすと、GKと1対1に。
そしてこれをワントラップでかわし、あとは無人のゴールに流しこむだけ、という決定的チャンスを創造する。

しかしいきなり訪れた好機に力が入ったか、何とその後のシュートをポストに当ててしまい、ゴールはならず。

最後の場面では若さを覗かせてしまったものの、宇佐美のセンスと積極性が生み出したビッグチャンスだった。

宇佐美はさらに 38分、二川孝広のスルーパスに抜け出したルーカスのシュートのリフレクションに反応。
こちらもゴール前でフリー、GKも体勢を崩しているという絶好の場面でシュートを放つ。
しかしこれは大きくクロスバーを越えてしまい、またも決定機を活かすことはできず。

この試合で迎えた2つのビッグチャンスと、2つのシュートミス。
これが宇佐美貴史という大器の現在地を物語っているように、僕には感じられた。

煌々と輝くサッカーセンスと強気な姿勢、しかしそれをまだ生かし切れない荒々しさ。
18歳の宇佐美貴史は、いまは底知れないポテンシャルと、未完成な部分の両方を内包した「原石」である。

けっきょくこの試合の宇佐美はノーゴールに終わり、75分にピッチを去った。

宇佐美は今シーズン、ここまで5得点。
18歳の高校生としては立派すぎるほどの数字だけども、本人は「10ゴールを目指す」と、さらなる高みを目指している。

本田圭佑や香川真司が証明したように、世界で認められるには何といっても「結果」が一番だ。

この日の宇佐美はゴールこそ無かったものの、その強引な突破力、体の強さ、パス回しにも絡む柔軟性、何気ないトラップ・ポストプレーの精度、正確なクロス、そして精力的なチェイシングに至るまで、その他のプレーでは 10代の選手のレベルを遥かに超えたクオリティーを見せていたと思う。

しかしだからこそ、ノーゴールという結果がなおさら惜しい。
宇佐美貴史がゴールを量産できる選手に育てば、まさに世界に通用する傑物が生まれるだろう。

宇佐美にはぜひ、今後とも結果にこだわってもらいたい。

激戦を制したガンバ大阪

試合自体は上位同士の対決ということもあり、お互いがアグレッシブに攻め合う好ゲームとなった。

攻守が目まぐるしく入れ替わる展開の中、まず先制したのはガンバ。
前半 12分に、コーナーキックの流れから中澤聡太のヘッドでリードする。

しかし川崎フロンターレも 21分、田坂祐介からのロングボールに、チームが誇るスピードスター黒津勝が競り勝って同点に。

そしてその後は、お互いが決定機を作りあう白熱の攻防が展開する。

後半に入っても両チームの攻めの姿勢は変わらず、川崎フロンターレが中村憲剛、谷口博之、矢島卓郎を、対するガンバ大阪が平井将生、佐々木勇人、ドドをと、お互いにキーマンを投入する総力戦に。

そして迎えた後半 86分。
ルーカスの目の覚めるようなミドルシュートが決まって、アウェーのガンバが 1-2と勝ち越しに成功。

けっきょくこれが決勝点となって、ガンバ大阪がこの激戦の勝者となった。

勝ったガンバはいよいよ3位に浮上。

対するフロンターレは6位という順位は変わらないものの、ガンバとの勝ち点差を5ポイントに離された。

Jリーグは残り 10試合となり、そのクライマックスの時も近づいてきている。
この大事な時期に宇佐美貴史はチームを離れ、もう一つの重要な戦いへと参戦するために中国に向かう。

ガンバには痛手には違いないけれども、それだけに宇佐美には、アジアの舞台で必ず結果を残してきてほしい。

そしてそこで得た「修羅場の経験」をもとに、さらに一回り大きい選手へと成長してほしいと、僕は期待しているのだ。

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