川崎フロンターレ、「アウェーの洗礼」のデジャヴー/AFCチャンピオンズリーグ@北京国安 2-0 川崎フロンターレ

どこかで見たような光景だった。
AFCチャンピオンズリーグのグループリーグ最終戦、中国の北京国安と対戦した川崎フロンターレは、敵地の北京に乗り込みこのゲームに臨んだ。
勝てば自力で2位通過が可能だったこの試合、下馬評では地力に勝るフロンターレが有利と見られていた。しかし予想に反し、結果はフロンターレが 0-2 の完敗を喫する。そしてこの試合に敗れたフロンターレは、同大会からの敗退が決定したのである。
フロンターレが敗れた原因はどこにあったのか。北京に乗り込んだ彼らを待っていたのは、国内のゲームでは滅多に味わうことのない「アウェーの洗礼」であった。

フロンターレに浴びせられたアウェーの洗礼

立ち上がりから優勢だったのはフロンターレのほうだった。個人技を活かし、黒津勝やヴィットール・ジュニオールらが北京ゴールに迫るものの、得点には繋がらない。そして前半26分、攻撃にかかった隙を突かれてカウンターを浴びると、最後は北京FWジョエル・グリフィスに決められて先制点を奪われてしまう。
その後も攻め続けるフロンターレだったものの、後半47分に再びカウンターから失点。これで気落ちしたか、フロンターレの動きはじわじわと落ち始め、けっきょく反撃を浴びせることのできないままゲームは終了した。
この日の川崎フロンターレには、北京のサポーターからの激しいブーイングが浴びせられていた。僕は当然テレビでしかその様子を伺い知ることはできなかったけども、その激しさは半端なものではなかったように思えた。終始浴びせられるブーイングはスタジアム内のあらゆる音をかき消すほどの音量で鳴り響き、フロンターレのCKの際などには、客席から次々と物が投げ込まれた。

むき出しとなった反日感情

この試合に、僕はデジャヴー感を覚えていた。どこかで見たことがあるこの雰囲気。その記憶の源は、同じく中国で行われた2004年のアジアカップであった。
中国と日本には日中戦争・第二次世界大戦のころからの深い歴史的因縁がある。その後の中国の教育現場における歴史教育の影響もあって、現在でも中国国内での反日感情は非常に高い。
このアジアカップでも、日本と中国の対戦となった決勝戦では地元サポーターから日本代表に大ブーイングの嵐が浴びせられ、試合後には日本代表のバスが取り囲まれ投石を受けるなどの事件が起こった。
そしてこの日のスタジアムで川崎フロンターレが体験したのも、それと全く同じような反日感情むき出しの北京サポーターの大ブーイングだったのである。
まさにアウェーの洗礼。
いまの川崎フロンターレには、中村憲剛や稲本潤一など一部を除いて、国際経験が豊富な選手が少ない。おそらくこれほどの完全アウェーは、ほとんどの選手たちがこれまで経験したことがなかったはずである。それが彼らのリズムを狂わせ、普段の力を発揮できなかったことが、この敗戦の大きな要因だったのではないかと僕は感じた。

国際試合を戦うということ

Jリーグは、試合中のスタジアムにもどこか牧歌的な雰囲気が漂うリーグである。それ自体は僕は悪いことだと思わない。しかし、国際試合ではそうはいかない。代表の試合であってもクラブの試合であっても、国際試合は国と国のプライドを賭けた戦いになる。その厳しい雰囲気は、Jリーグでは経験することができない。そしてその緊張感こそが、国際試合をより激しく熱いゲームにさせるのである。
今回、川崎フロンターレは敗れた。しかし、この敗戦は決して無駄にはならない。こういった厳しいゲームを経験することは、必ず選手を一回り大きく成長させるはずである。
フロンターレには、来年またこの舞台に戻りアジアチャンピオンを目指して欲しい。そして、今度彼らがホームで国際試合を戦う時には、川崎のサポーターたちにもぜひ、とびっきりのアウェーの雰囲気を作り出してほしいものである。

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