昨シーズンのブンデスリーガを制したのは、ドイツカップ(DFBポカール)との2冠を達成したバイエルン・ミュンヘンだった。
そして、惜しくも2位に終わったのがシャルケ04である。
今節には、その両チームの顔合わせが実現。
しかしこの対戦が、今シーズンには5位と 15位での対戦になろうとは、昨年の今ごろには想像もつかなかったのではないだろうか。
内田篤人にとっては初めてとなる、ドイツの “盟主” バイエルン・ミュンヘンとの対戦。
その結末は内田にとって、サッカー人生の中でも大きな記念碑になるようなものとなった。
シャルケの挙げた「金星」
この試合で内田篤人に課されたミッションは、極めてシンプルなものである。
「リベリーを止めろ」。
今シーズンはフランク・リベリーとアリエン・ロッベンという2大エースを欠いて、不振にあえいでいたバイエルン。
しかしいよいよ、リベリーが長い負傷欠場から戻ってきた。
内田はこのワールドクラスのフランス代表 MFと、右サイドで対峙することになる。
内田篤人にとってはおそらく、ドイツに渡ってから最大の「大物」との対決になった。
試合は立ち上がりから、アウェーのバイエルンのペース。
しかしシャルケも、GKマヌエル・ノイアーのスーパーセーブでその攻撃をしのぐ。
そして迎えた 58分、左サイドでボールを受けたラウール・ゴンサレスが、強引なドリブルでゴール前に突進。
そのこぼれ球をクラース・ヤン・フンテラールが叩き込んで、劣勢だったシャルケが 1-0とリードした。
続く 67分には、コーナーキックの流れから CBのベネディクト・ヘーヴェデスが押しこんで 2-0。
その後のバイエルンの反撃をしのいで、シャルケが「金星」とも言える勝ち点3をゲットしたのである。
内田篤人、”参考記録”のジャイアント・キリング
試合後、シャルケのフェリックス・マガト監督は「よくリベリーを止めてくれた」と内田篤人を讃えたそうだ。
実際、この日の内田は終始安定したプレーを披露。
攻撃では相変わらず的確な繋ぎ・クロスを見せて、ディフェンスでも素早く身体を当てて手堅いプレーを見せる。
最も恐れていたリベリーにも決定的なチャンスはつくらせず、本人も大きな手応えを得た一戦だったのではないだろうか。
ただし、客観的に見てこの日のリベリーは、本調子とはほど遠かったようにも思える。
マルセイユ時代でもバイエルンでも、好調時のリベリーのプレーはまさに「王様」と呼ぶにふさわしいもので、攻撃の全てを掌握しているかのような存在感を放っているプレーヤーだった。
それと比較すれば、この日のリベリーは若干「ヌルい」相手だったとも言える。
好調時のリベリーが、沸騰してピーピー音を立てるヤカンだとすれば、この日は1時間フタを閉め忘れて放置されたお風呂のようなリベリーである。
リベリー自身も「やあ、いい塩梅だなあ」などとは決して思っていなかっただろう。
なのでこの日に関しては、あくまでも参考記録のような扱いではないかと僕は考えているのだ。
ただし、内田自身が入団当初よりも大きな成長を見せつつあることは間違いない。
そんな内田が次に対戦するとき、絶好調のリベリーを止めることができたら。
その時こそが、内田篤人にとっての本物の「勲章」になるのではないだろうか。
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