岡崎慎司、ドイツで始まった挑戦/ブンデスリーガ@バイエル・レバークーゼン 4-2 VfBシュツットガルト

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日本人とドイツ人とは気質が似ていると言われる。

そしてフットボールの世界でも、日本とドイツは古くから何かと縁が深い存在だった。

さかのぼれば『日本サッカーの父』と呼ばれたドイツ人、デッドマール・クラマーの指導のもと、日本代表がオリンピックで銅メダルを獲得したのが 1960年代。

続く 70年代には奥寺康彦が日本人プロ第1号としてドイツに渡り、9シーズンにもわたってかの地で大活躍を見せた。

そして奥寺から約20年の時を経て、2000年代には高原直泰がブンデスリーガでシーズン2桁得点の実績を残すと、その後は長谷部誠がヴォルフスブルクでブンデスリーガ優勝という偉業を達成。

そして今シーズン、香川真司が前半戦の MVPに選ばれる快挙を成し遂げたことが決定打となって、ブンデスリーガは一躍、日本人選手たちが大挙進出する「お得意様リーグ」になったのである。

以前からブンデスでプレーしていた長谷部をはじめ、香川、矢野貴章、槙野智章らの日本人選手たちが現在ブンデスリーガ1部でプレーしている。

そして移籍問題のこじれで出遅れはしたけれども、今週ついに残る1人、岡崎慎司がブンデスリーガにデビューを果たしたのだ。

岡崎慎司、ドイツで始まった挑戦

岡崎慎司の所属する VfBシュツットガルトは、4シーズン前にはブンデスリーガで優勝、2シーズン前にも3位に入り、通算で5回のリーグタイトルを獲得している名門である。

ただし今季はまさかの低迷期に陥っていて、ここまで勝ち点 19で 17位と、2部降格圏に落ち込むという苦戦を強いられている。

対するバイエル・レバークーゼンは、昨シーズンはリーグ4位、今季もここまで勝ち点 42で3位につける強豪。

実績ではひけをとらないシュツットガルトだけれども、今シーズンに限ってはレバークーゼンの半分の勝ち点も稼げていないほど、大きく水を開けられてしまっていた。

そんな強豪のアウェーゲームに乗り込んだシュツットガルトは、立ち上がり早々から、その勢いの差を見せつけられることになる。

開始6分、レバークーゼンのエースストライカー、シュテファン・キースリンクにいきなり先制点を許すと、その後も劣勢でのゲーム展開を強いられたレバークーゼン。

先発出場した岡崎慎司も、まずはディフェンスに追われることを余儀なくされた。

しかしそんな難しいゲーム展開の中でも、ブンデスリーガデビュー戦に賭ける岡崎の気迫は相当なものだったように感じられた。

ヨーロッパリーグと合わせて自身2戦目となるこの試合で、おそらく岡崎は、自分の持ち味を少しでも多く発揮しようと意気込んでいたのではないだろうか。

この日の岡崎の運動量は半端ではなかった。

自軍がボールを持てば常にラインの裏を狙い続け、相手ボールになると猛然とダッシュしてディフェンスに回る。

そしてそのプレーは特にディフェンス面で輝きを放った。

この日、岡崎慎司がプレスからボールを奪い、カウンターの起点となったシーンは1度や2度ではない。
時には自陣ゴール前まで戻り、相手のシュートをブロックする姿も見られた。

個人的な感想としては、岡崎慎司のプレーは非常に「効いていた」ように思う。

しかしチームに合流してまだ2〜3週間の岡崎は、チームメイトからの信頼を完全に得るまでには至っていないようだった。

岡崎がスペースに積極的なランニングを見せても、なかなかそこにパスが出てこない。

結果的に守備面で見せた活躍に比べて、岡崎が攻撃面で輝く場面は極めて限られたものになってしまった。

しかしそんな中でも、岡崎慎司が攻撃面で存在感を放つシーンが1度だけやってくる。

57分、カウンターから左サイドを駆け上がった岡崎は、中央に切り返すと右足からミドルシュートを一閃。

このシュートは惜しくもわずかに右に外れたものの、レバークーゼンのドイツ代表ゴールキーパー、レネ・アドラーをヒヤリとさせた場面だった。

ぬかるんだドイツのピッチに足を取られていなければ、間違いなくゴールマウスは捉えていただろう。

試合はその後、追いついては引き離してのシーソーゲームとなって、けっきょく岡崎慎司は 2-2の同点の状態だった 66分までプレー。

チームで最初の交代選手となったことには悔しさもあっただろうけれども、その直前に1枚イエローを受けていたこと、チームの中で間違いなく一番走っていて、体力を消耗していたことも交代の理由だろうか。

岡崎がベンチに下がったことと、その後チームが2失点を喫して敗れてしまったこととは、決して無関係ではなかったように思う。

岡崎慎司は決して器用な選手ではないし、身体能力に優れた選手でもない。

監督によっては評価の分かれるタイプかもしれないけれども、僕がもし監督であれば、日本人だということは別としても、岡崎のような選手がいればしばらくの間は使い続けるだろう。

それくらい、この日の岡崎の献身的なプレーには、光るものがあったように感じた。

ただしフォワードとして最も必要とされているものは、間違いなく「ゴール」だ。

岡崎がチームメイトからの信頼を得て、そのポジションを確固たるものにするには、目に見える結果が求められてくる。

チャンスを与えられている今のうちに、その「結果」を残すことができるのか。

それが岡崎慎司の未来を左右する、最大の鍵になるだろう。

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