9ラウンド終了時点で判定は 0.5ポイント差。
迎えた第10ラウンドの大一番。
ボクシングに例えればそんな一戦。
拮抗が予想された試合はしかし、想定外の立ち上がりを見せる。
いきなりダウンを取られたのは、追いかける立場のインテルのほうだった。
開始わずか 40秒。
ただしボクシングではなく、フットボールでの 40秒だ。
出会い頭に食らったアレシャンドレ・パトの一撃で、インテルのゲームプランは狂った。
ミランの繰り出した鮮烈なカウンター
チャンピオンのインテルと、チャレンジャーのミラン。
それぞれユニフォームとは真逆の色のコーナーポストを背負う両者のスタイルは、この1点でより鮮明なコントラストを描くことになる。
ボールをポゼッションして、近距離からの打ち合いを挑むインファイターのチャンピオン。
対するチャレンジャーは、カウンター主体のアウトボクシングで自分たちのペースに引きこもうとする。
一見するとインテルが押し気味のようにも見える試合。
しかしゴール前に人の壁を作りながら、時おり鋭い速攻で的確なヒット&アウェイを繰り出すのはミランのほうだった。
ロビーニョとパトという2スピアヘッドが、電光石火の速さでカウンターパンチを打ち込んでいく。
にじるように進行する神経戦。
しかしとうとう、チャンピオンが先に顔を上げてしまう。
54分、カウンターからのケビン・ボアテングのスルーパスに抜けだしたパトを、インテルのクリスチャン・キブーが倒してレッドカード。
その8分後、右サイドを上がったイグナツィオ・アバーテのクロスをパトが頭で叩き込んで、インテルに2度目のダウンを食らわせた。
インテルにとっては、あまりにも痛すぎる失点。
その後もチャンピオンの反撃を受け止めながら、ミランはさらに的確なパンチを打ち込み続ける。
迎えた終了間際の 88分。
アントニオ・カッサーノがダメ押しの PKを決めて、勝負は完全に決した。
ミラノダービーの残した「傷跡」
試合後、インテルの長友佑都は号泣していたそうだ。
この1年間でワールドカップ、セリエA挑戦、アジアカップ、そして故国の大震災と、数々の修羅場を経験してきたタフガイも、この現実を受け止めることは容易ではなかったということか。
この日、出番のなかった自分に対する怒りの気持ちもあるのだろう。
しかしそれでなくても、このミラノダビーでの敗戦は、インテルにとってはノックアウトにも等しい事実上の「終戦宣言」となった。
残りは7試合。
首位ミランとの勝ち点差は5。
数字上の可能性はある。
しかし最大のライバルを相手に喫した KO負けの傷跡は、あまりにも深い。
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