HDR Rotterdam SunsetHDR Rotterdam Sunset / Vincent van der Pas

“「宮市くんが異次元すぎて、笑うしかなかった(笑)」”。

今年の高校選手権で公立校ながら決勝進出を果たし、台風の目となった久御山高校。

高いテクニックを全面に出したそのプレースタイルとともに久御山で印象的だったのが、どんな劣勢でも絶やすことのない、選手たちの「スマイル」だった。
松本悟監督の指導のもと、技術だけでなく、常にポジティブで居続けるメンタル面の強さも持ち合わせたチームだったことも、久御山の快進撃の要因の一つだろう。

しかしその松本監督による冒頭の台詞が本音だとしたら、この時の久御山のスマイルは指導の賜物ではなく、ごく自然に発せられた “本音” だったということになる。

松本監督がこの台詞を口にしたのは、選手権の初戦・中京大中京戦のハーフタイムで、選手たちが笑いながら引き上げてきた時の心境を問われた時だ。

その後ファイナルまで昇りつめることになる強豪チームを「笑うしかない」ほどに追い込んだ選手。
それが、当時中京大中京高校に所属していたアタッカー、宮市亮だったのである。

「異次元」のフットボーラー、宮市亮

オランダリーグの「ビッグ3」と言えば、今も昔もアヤックス、PSV、フェイエノールトの3チームで間違いない。
中でもフェイエノールトは、日本のファンからすると、何と言ってもあの小野伸二がキャリアのハイライトを過ごしたチームとして印象深い。

宮市亮は、そのフェイエノールトに今シーズン途中から入団を果たした。

1992年12月生まれの18歳。

先日高校を卒業したばかりの宮市は、高校→Jリーグ、という通常の道を飛び越えて、いきなり海外へと飛び出したことになる。

僕は宮市が久御山高校と戦った高校選手権の一回戦をTV観戦したのだけれども、競馬に例えるなら一馬身・二馬身ほどの差をつけながら左サイドをぶっちぎりまくる宮市の姿は、まさに「異次元」だった。
むしろその言葉は宮市のためにあるのではないかと思わせるほど、高校サッカーのフィールドで、宮市亮の才能は突出していたと言える。

そして渡ったオランダの地。
ここでも宮市はいきなりのブレイクを果たす。

デビュー戦のフィテッセ戦でさっそく先発出場を実現させると、プロ2戦目となったヘラクレス戦ではオランダ初ゴールをマーク。
その後もほとんどの試合で先発フル出場を続けていて、オランダの名門フェイエで、宮市は既に欠かせない主力の一人となっている。

そして先週行われた前節・ヴィレムII戦では2ゴール2アシストの大活躍。
その勢いを駆りながら、今節は首位を走るライバル・PSVとの大一番に臨んだ。

フェイエノールトの挙げた「金星」

PSVアイントホーフェンとフェイエノールト・ロッテルダムは、ともにオランダを代表する名門チームの一つ。
ただし近年の成績には大きな開きがある。

前節となる第31節終了時点で、今シーズンも首位を走っていた PSVに比べて、フェイエノールトは10位と低迷。
ここ6シーズンで見ても、4度のリーグチャンピオンに輝いているPSVに対して、フェイエノールトの獲得したタイトルは、07/08シーズンのカップタイトルのみ。

UEFAカップを制してヨーロッパの舞台に名を馳せた、小野伸二のいた時代の面影は既に失われつつあった。

しかし宮市亮は、そんな名門の救世主になるかもしれない。

この日、ホームのデ・カイプに首位を迎えたフェイエノールトは、立ち上がりから気迫に満ちた攻防を仕掛ける。

両チームともに体を張った、激しいぶつかり合い。
そこに、現在の両チームの順位上の差は微塵も感じられなかった。

ちなみにオランダサッカーは昔から、ウイングを配置してサイドに起点をつくり、縦に仕掛ける攻撃的なサッカーを特徴としている。
この試合でも両チームは、まさにそのオランダサッカーの醍醐味を凝縮させたようなスタイルを貫いた。

両チームともがボールを奪った瞬間、素早く縦にボールを送り、ゴールに直結する攻撃を見せる。
そしていったん両ウイングがボールを持てば、ほぼ例外なく相手サイドバックに1対1の勝負を仕掛ける。

もちろんこの日、フェイエの左ウイングとして先発した宮市もその例にもれない。

首位を走る名門を相手にしても、宮市は臆することなく何度もドリブル突破を試みた。
90分間を通じて宮市は、再三に渡って縦への勝負を仕掛け続けたのである。

そんなアグレッシブなゲームが動いたのは 27分。
まずは右サイドからのクロスを、フェイエノールトのジョルジニオ・ヴァイナルダムが頭で合わせて先制。
下位に沈むフェイエノールトが、首位を相手に貴重な先制ゴールをマークする。

そして後半、フェイエにさらなる追い風が吹いた。
53分、PSVのオルランド・エンヘラールが危険なプレーで一発退場。

その7分後の 60分にはカウンターから PSVにゴールを奪われ 1-1と追いつかれるものの、直後の 63分、再びヴァイナルダムのゴールでフェイエが 2-1と突き放す。

そして79分には、ルク・カステグノスがとどめとなる3点目をゲットした。

終わってみれば 3-1。

首位 PSVをホームに迎えたフェイエノールトが激しい一戦に競り勝ち、底力を見せつける金星を挙げたのである。

未来を担う「モンスター」、宮市亮

高校での宮市亮のプレーを観たことのある人であれば、彼がプロでもすぐ通用することは比較的容易に想像がついただろう。
しかし実際、Jではなくオランダの地でこれほど早く結果を残すとは、少なくとも僕の予想をはるかに上回る活躍ぶりだと言っていい。

PSV戦でもゴールにこそ絡まなかったけれども、左サイドでボールを持った時の宮市亮は、ルーキーとしては充分過ぎるほどの存在感を放っていた。

宮市亮の真の凄さとは、「その凄さが誰にでも分かること」ではないかと僕は思っている。

例えば小野伸二にしても中田英寿にしても、凄いことは間違いないのだけれども、サッカーをあまり知らない人から見た時には、もしかしたらその凄さが分かりにくい部分もあるかもしれない。

しかし宮市亮の凄さは、たぶん普段サッカーをあまり見ない子どもや女性でも、一目ですぐに理解できるのではないか。

宮市のストロングポイントは、100メートルを 10秒台で走るスピードとフィジカルの強さ、そして両脚の正確なキックにあることは間違いない。

ボールを持つやいなや、サイドを新幹線のようなスピードで突破しまくる宮市亮の凄さは極めて分かりやすい。
そして、これまで日本からこんな選手が出現することはほとんど例が無かった。
宮市が「異次元」「怪物」と呼ばれる所以である。

中学まではサイドバックを務めていたという異色の経歴を持つアタッカーも、その後は尻上がりに評価を高め、今では宇佐美貴史と並ぶ同世代の「顔」となっている。
今夏のコパ・アメリカではザック・ジャパンに招集がかかるという噂もある。
今後の成長次第では、宇佐美を抜いて世代を象徴する存在になる可能性もあるだろう。

宮市亮という選手は、それだけのポテンシャルを持った選手だと言っても過言ではない。

ただ、もちろん宮市にも課題はある。

高校選手権での久御山戦。
前半は久御山を圧倒しながらも後半に逆転された大きな理由の一つは、後半からガクッと運動量の落ちた宮市亮の「スタミナ不足」にもあった。
その弱点は、このPSV戦でも多少露呈していたと言っていい。

また、最大の武器である縦への突破力が研究された時、それをカバーするだけのプレーの幅の広さを身につけて、クリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシのような選手に進化できるかどうか。
そのあたりも、今後の宮市にとっては重要なポイントになってくるだろう。

ただいずれにしても、宮市亮というフットボーラーが、日本サッカー界がこれまで手にしたことの無いような種類の、類稀なる才能であることは間違いない。

日本を牽引する「モンスター」、宮市亮。

順当に行けば今後 10年、日本サッカーの未来は、宮市亮とともにある。

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