日本代表が「13戦無敗」という新記録を達成した、記念すべき試合と見るべきか。
“お客様” チーム相手に不完全燃焼した試合と見るべきか。
おそらく後者の印象を抱いた人のほうが多かったのではないだろうか。
震災の影響で3月に予定されていた試合が中止となり、国際Aマッチとしては1月のアジアカップ以来、実に4ヶ月ぶりとなる代表戦。
そこには、いよいよザックカラーに染まらんとする段階に入った日本代表の、戸惑いと苦悩の色が見て取れた。
テストを消化した凡戦
スコアレスドローだから面白くない試合だった、というのは、ことサッカーにおいては当てはまらない。
しかしこの試合、日本が思い通りのゲームプランを実行できなかったのは事実だろう。
前半、日本は 3-4-3の布陣でキックオフの笛を聞くことになる。
アルベルト・ザッケローニがイタリア時代に寵愛した攻撃的システム。
3月のJリーグ選抜とのチャリティーマッチで初披露されたこのシステムを、このペルー戦、ザックは初めて国際Aマッチで導入してきた。
まさに「満を持して」と呼ぶにふさわしいタイミング。
昨年9月の就任からアジアカップまでの約半年間、ザックは前任の岡田武史のシステムをある程度踏襲し、ワールドカップからの継続性を重視してアジアのタイトルを勝ち取った。
そしてこの 3-4-3システムの導入は、確かな実績を残したザッケローニ監督が、いよいよ自分の「色」を発揮する段階に入ったことを告げるサインに他ならない。
ただしこの試みは、とりあえずは「上手くいった」とは言い難かった。
前半の日本は 3-4-3のシステムを持て余した。
システムに「振り回された」と言っても言い過ぎでではないかもしれない。
両サイドフォワードやリベロの選手がどこか宙に浮いたような格好となり、その反面、セントラル・ミッドフィルダーに入った遠藤保仁・長谷部誠の負担が増大する。
相手のペルーもコンディション・コンビネーションが満足な状態でなかったために、ピンチこそそれほど多くは創られなかったけれども、3-4-3のシステムを日本は満足に操縦することができなかった。
しかしダメならダメで、システムを捨てる柔軟性があるのもザッケローニ監督の特長だ。
後半、日本代表はロシアから合流間もない本田圭佑をトップ下に入れ、従来の 4-2-3-1の布陣に戻す。
同時に、3-4-3システムのテストは 45分間でいったん終了。
新システムの導入は、また次の機会へと持ち越されたのである。
ジャイアント・キリングを生む「ザックの慧眼」
不完全燃焼に終わった 3-4-3システム。
しかし本田圭佑は、
「ぶっちゃけ “何―何―何” でも同じ。その話はやめた方がいい。」
とシステム論が先行する報道に異を唱える。
確かに実際のところ、システムを変えた後半も、日本は満足のいくプレーを見せられたとはとても言えない。
後半立ち上がりこそ好リズムを創ったものの、終盤は逆にペルーに押し込まれて、あわや失点かという場面を何度も演出されてしまった。
この原因はヨーロッパ組がシーズン終了直後でコンディション不良だったことや、関口訓充や西大伍などワールドカップ以降に代表入りした選手が多く、コンビネーション面で課題が多かったことが考えられる。
「それを言い訳にするな」という声もあるかもしれないけれども、テストマッチである以上、結果よりもテストを優先することはあっても良いと思う。
結果的にこの試合は、ザック監督就任以降では最低の試合になったしまった感があるけれども、これが9月から始まるワールドカップ3次予選に繋がっていくことを願いたい。
ザッケローニ監督が 3-4-3にこだわるのは、日本がワールドカップ本大会で格上のチームと伍して戦うには、高い位置でボールを奪って速攻を仕掛けられるこのシステムが必要だと考えているからではないか、と個人的には感じている。
世界最高峰リーグだったイタリアで、「プロビンチャ(地方)」のチームを率いて並み居る強豪と渡り合ったザッケローニだけに、ジャイアント・キリングを達成するために必要なものを見抜く「目」を持っているだろう。
僕はその、「ザックの慧眼」に期待しているのだ。
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