Kuwait TowersKuwait Towers / Fawaz Al-Arbash

「ホーム&アウェー」という言葉が日本で一般的になったのは、そう遠い昔の話ではない。

Jリーグの誕生と共にこの言葉が持ち込まれる以前の時代。
例えばプロ野球の世界では、同じような意味合いとして「フランチャイズ」と「ビジター」という言葉が使われていた。
日本語に訳せば「興行権」「訪問客」という意味で、要するに「主催者か、対戦相手か」というだけの意味しか持たない言い回し。
およそ20年前までは、日本のスポーツ界においては『ホームタウン』という概念自体が希薄だったことが、これらのネーミングからも分かる。

また国際試合ともなると、ホーム&アウェーの影響はより大きなものとなる。

特にアジアの場合、中東の国で体感する「アウェー感」は半端なものではないそうだ。

そして今回 U-22日本代表が体験したのも、まさにそんな “アウェーの洗礼” だった。

日本の見せた快勝劇

来年に開催されるロンドン・オリンピックを目指す U-22日本代表。
そのアジア2次予選は、日本とクウェートの2ヶ国がホーム&アウェーで雌雄を決するガチンコ勝負である。

そして先週、日本のホーム・豊田スタジアムで行われた第1戦。
スコアこそ 3-1だったこの試合はしかし、試合内容には数字以上の差があった。

第1戦での日本は、立ち上がりから高い個人技と連動性のある攻撃を見せて、クウェートを圧倒する。

この試合では故障でエースの永井謙佑を欠いていたけれども、2列目の清武弘嗣、東慶悟、左サイドバックの比嘉祐介らを中心に面白いようにチャンスを創った日本。
対するクウェートはディフェンスラインがミスを連発し、蛇に睨まれた蛙のような萎縮したプレーに終始した。

日本が 3-0とリードした後にクウェートに1点を返されたものの、大勢に影響はなし。
この第1戦では90分を通じて、日本はクウェートにサッカーらしいサッカーをさせることはなかった。

そして第1戦を見たほとんどの人が、この両チームの間にある大きな力の差を感じたのではないだろうか。

クウェート国内のメディアでも自国の代表チームに対する悲観論が大勢を占め、第2戦での逆転はほぼ絶望、という見方が一般的だったようである。

ところがクウェートに舞台を移した第2戦。

そこで日本の前に立ちはだかったのは、まるで1戦目とは別のチームかのように変貌した、難敵の姿だったのだ。

「アウェーの洗礼」の実態

中東でのアウェーゲームが非常に難しいということは、これまでも何人もの代表選手たちの証言から明らかになっている。

と言ってもイランを除いては、中東でスタジアムが超満員になるようなことはあまり無い。
つまり単にスタンドから受けるプレッシャーがキツイというよりも、ピッチ内外で、ゲームを難しくする様々な要因があるということだろう。

それは時差であったり、夜でも40度に迫るほどの灼熱の気象条件だったり、デコボコのピッチコンディションだったり、ホームチーム寄りの笛だったりと、色々なものが挙げられる。
それに加えて、コーランが流れる、中東独特の異様なスタンドのムードが拍車をかける。

日本とは 全く違う環境そのものが、中東の「アウェーの洗礼」の実態でもあるのだ。

そしてこの試合でも、日本はそのアウェーの空気に完全に呑まれてしまった。

日本の手にした「薄氷の勝利」

ホームでの第2戦は序盤から、人が違ったように積極的な攻撃を見せるクウェート。
対する日本は最悪のピッチコンディションにも足を引っ張られ、得意のパスワークからの攻撃を組み立てることができない。

それでもまず先制をしたのは日本だった。
21分、東慶悟からの浮き球のスルーパスに抜けだした右サイドバック酒井宏樹が、GKの頭上を抜くループシュートを決めて 1-0。

そして序盤は押され気味だった日本が、このゴールで勢いに乗った。
その後はゲームを支配するようになった日本が、スコアでも内容でもリードする形でハーフタイムを迎えることになったのである。

ところが後半、その流れは一変する。

後半早々の 50分、クウェートがフリーキックの流れから同点ゴールを押しこんで 1-1。
この1点で、ホームのクウェートは完全に息を吹き返した。

ここからの 35分間は、まさに『クウェートの時間帯』となる。
猛攻を仕掛け、次々とゴールを脅かしにかかるホームチームを相手に、圧倒される日本。

58分にはカウンターからの速攻を浴び、抜けだしたクウェートのエースストライカー、ユーセフ・アルスレイマンをたまらず倒してしまった鈴木大輔がファウルを取られ、PK。
これをアルスレイマン自身が決めて、ついに日本は 1-2と逆転を許した。

その後も猛攻を続けるクウェート。
それを耐えしのぐ日本。

そして何とかこのスコアのまま試合終了へと持ち込んだ日本が、トータルスコアでわずかに1点差、薄氷を踏む勝利で最終予選進出の切符を手に入れることになった。

U-22の真のポテンシャル

試合後、日本の選手たちは口々に中東の暑さに体力を奪われたことを語り、また2点目を失った時点で精神的に動揺したことを認めた。

まだ若い U-22の選手たちにとっては、全く違った環境で全く違った相手と戦ったかのようなこの2連戦は、貴重な経験になったことだろう。

ただ僕は、このチームの行く末に一抹の不安を感じざるを得ない。

このチームは非常に高度に組織され、まとまりのある好チームであることは事実だ。
たぶんアジア最終予選も突破して、オリンピック本大会に出場する可能性も高いだろう。

しかしその先を考えた時は、どうだろうか?

このチームの現時点での個人的な印象は、「まとまりはあるけれども小粒のチーム」。
もしこのチームがアジア予選突破ではなく、オリンピック本大会での上位進出、メダルを狙っているのであれば、より個人でも決定的な仕事をやってのける選手の登場が期待される。

僕個人の意見では、今のところその条件を満たしている選手は、永井謙佑と清武弘嗣、原口元気くらいだろうか。

もっとも、選手がいないわけではない。
既にヨーロッパで活躍する香川真司と宮市亮は、今回は招集がかからなかったけれども、本大会では召集されるだろう。
そうなればこのチームは全く違うチームへと生まれ変わる。

そこに仮に本田圭佑や遠藤保仁などのA代表の主力が加われば、「個」の力はかなり補完されてくるはずだ。

そして今回召集されなかった中にも、まだまだ注目の選手たちがいる。
具体名を挙げれば宇佐美貴史、小野裕二、指宿洋史、高木善朗、茨田陽生などなど。

Jや海外リーグで実績を残し、強力な「個」の力を持つ彼らがチームに加われば、世界と戦う青写真も見えてくると言うものだ。
もちろん監督にも好みがあるだろうし、能力のある選手を全て招集できるわけでもないけれども、世界で上位を目指すのにふさわしいメンバーを、最終的には揃えてほしいと思う。

一部では宇佐美の練習態度が問題視されて、関塚監督に「干されている」というような報道もされている。
仮にそれが事実だとしても、選手の成長を促すための「愛のムチ」であれば問題はないと思う。

ただ、もしそれが単に「ソリが合わない」「気に入らない」という理由からだとしたら、「育成」を主眼に置くアンダー世代を受け持つ監督の行動としては、適切ではないと僕は考える。

いずれにしても、このチームの真のポテンシャルは、まだまだ果てしないものがあるはずだ。

逆に言えばそれを引き出していかなくては、このチームに世界の舞台での明るい未来は、待っていないだろう。

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