『九州男児』と言うと、一般的には「男気があって、豪傑」みたいなイメージが強い。

そこでサッカー界に目を移すと、九州出身のプレイヤーは本山雅志とか遠藤保仁とか平山相太とか、「豪傑」のイメージとは若干…いや、かなり…のギャップのある選手も多いのだけれど、それでも九州のサッカーは、一時期は間違いなく日本を牽引する存在だった。

「九州のサッカー」と言えば、僕の場合、真っ先に思い浮かぶのが国見高校だ。
高校選手権の優勝回数では帝京と並んで戦後最多の6回を数える、名門中の名門。
そして九州の高校サッカーでこの国見に続くのが、ともに2回の選手権制覇を誇る鹿児島実業と東福岡だろう。

この3強を中心に、’80年代後半〜2000年代前半にかけての20年間で、実に九州勢は高校選手権で10回の優勝に輝き、多数のJリーガーを輩出。
その中から前園真聖、三浦淳宏、大久保嘉人のような日本代表のスター選手も生まれていった。

そんな九州サッカーも、国内の育成の比重が高校サッカーからユースに移行するに従って、以前ほどの存在感を見せられなくなっていく。

Jリーグには九州のチームが5つあるけれども、昨シーズンはその全てがJ2所属ということで、プロの世界では大きなインパクトを残せていない。
その影響もあってか、ユースチームからの育成においては、九州は他の地域に比べて出遅れている感もあった。

気がつけば遠藤を除いて、ザック・ジャパンのレギュラーメンバーからは、九州出身の選手の名前が消えていたのである。

しかし、それでも九州サッカーの火が消えたわけではない。

若い世代に目を移したとき、次の時代を背負って立つ「スター候補生」の芽が、九州からは着々と育っていた。

「ベスト」だった会場のチョイス

「協会のマッチメイク担当の人、ありがとう!」

思わず今回は、こんな言葉が口を突いてしまう(いつもは逆のパターンが多いんだけど…)。

何が?って、この会場のチョイスがである。
ベストアメニティスタジアム(鳥栖スタジアム)は今回の試合を開催するのに、まさにベストに近い選択だったんではないだろうか。

ベストアメニティスタジアム=通称「ベアスタ」は、収容人員24,490人の中型スタジアム。
A代表の国際試合はたいてい4万人以上収容の大型スタジアムで開催されるので、ベアスタはAマッチの会場としては小さ過ぎる箱だ。

ただし、逆にU-22代表の試合は2万人前後の観客数のことが多くて、A代表と同じ会場では少し箱が大きすぎた。

そういう意味でU-22の会場としては、このベアスタの規模がジャストフィットだったのである。

「大は小を兼ねる」ということわざがあるように、日本人はつい「大きい箱はいい箱だ」と考えてしまいがちだけれども、例えばドイツでは、スタジアムに動員した観客数以上に、キャパシティに対して客席が埋まった率=「収容率」を重視するらしい。

同じ2万人が来場したとしても、それが7万人収容のスタジアムだったらスタンドの「ガラガラ感」が目立ってしまうけれども、2万人収容のスタジアムで開催されれば「満員」ということになる。
そのぶん熱気も生まれるし、盛況感も伝わって試合が盛り上がる、という考え方だ。

実際に、先日ドイツで行われた女子ワールドカップでも2万人程度収容の小ぶりな会場が多く使用されていたけれど(決勝のフランクフルトでも5万人くらい)、そのぶん客席はけっこう埋まっていて、大会の盛り上がりに一役買っていたと思う。
そしてそのドイツのブンデスリーガが、結果的には世界で一番、観客動員数も多いサッカーリーグになっている。

僕はこの「収容率」という考え方にすごく共感しているんだけれども、Jリーグで言えばセレッソ大阪あたりが(スタジアム使用料の関係もあるだろうけれど)長居スタジアムとキンチョウスタジアムを上手く使い分けていて、「収容率」を上げる手法の取り入れに成功しているように思う。

また、代表戦を地方で開催するというのもとても良い試みだ。

以前はサッカーを普及させる意味もあってか、代表の試合はメディアの集中している首都圏で行なわれることが多かったけれども、最近はそれを全国に広げていくことを狙ってか、地方での開催が増えている。

僕は大阪に住んでいるのだけれども、以前はA代表の試合は首都圏開催が圧倒的に多く、関西では滅多に開催されることがなかった。
でも最近では年間に何度か、大阪でもA代表の試合を観れるので楽しみが増えた。
やはりテレビで見るだけなのと、たまに生で観戦できるのとでは、その土地への代表人気の根付き方も違ってくると思う。

同じように他の地方でもどんどん代表の試合をやって欲しいし、U-22のような下のカテゴリーであればなおさら、地方開催を増やしてもらいたいとも思う。全国のバランスを取るという意味でも。

そういう意味でも、この「U-22 ベアスタ開催」はナイスな選択だったのではないだろうか。

実際にこの試合は、同スタジアムではこけら落とし以来最多となる、ほぼ満員の22,504人の観客が足を運んだそうだ。

そして偶然か否か、現在のU-22チームは、久しぶりに「九州人が中心のチーム」だったことも、その動員に拍車をかけたのかもしれない。

アジアの古豪、マレーシア

「その昔、マレーシアが強かった」ことをリアルタイムで体験した方がいれば、それはサッカーファンの中でも「大御所」と呼べるランクの方だろう。

日本代表はかつて、マレーシアに全く勝てない時代があった。
1970年に勝利して以後1981年に再び勝利するまでの間、実に11回対戦して0勝5分け6敗。
なんと11年間も、マレーシア代表に勝利できない時代が続いていたのである。

しかし’80年代に入ってからは、マレーシアサッカーは衰退を見せていく。
そして’93年のJリーグ開幕以降にサッカーファンになった世代にとっては、「マレーシア=弱小」という図式が、すっかり定着してしまっていた。

しかし近年、そのマレーシアサッカーにも復興の兆しが見えている。
昨年行われた東南アジアサッカー選手権で、マレーシアA代表が初優勝。
東南アジア全体がレベルアップしつつある中でそのチャンピオンとなったことで、マレーシアサッカーは復活を印象づけた。

そして、そのA代表の経験者を数多く抱えるU-22チームもアジア予選を勝ち進み、オリンピック出場のかかった最終予選へと駒を進めてきたのである。

冴え渡った清武弘嗣の才覚

「マレーシアも、意外と上手いじゃん」。

試合を観て、こんな感想を持った人も多かったのではないだろうか。

オリンピック最終予選の緒戦となった日本 × マレーシア。
立ち上がりのマレーシアは予想以上に勢いがあって、格上の日本にも決して物怖じしていなかった。

特に序盤は右サイドのワン・ザックのスピードに、日本は手を焼くことになる。
少し前までは東南アジアの選手がヨーロッパでプレーすることはあまり考えられなかったけれども、このワン・ザックは現在スロバキアリーグでプレーしていて、このあたりからもマレーシアの成長ぶりが伺えた。

しかし、それでも先制したのは日本。

前半早々の10分、ボランチに入った扇原貴宏からの縦パスを、東慶悟がポストで落とす。

ここに、いわゆるダイアゴナルラン、あるいはトルシエ監督時代の「ウェーブの動き」のような “3人目の動き” を見せて、右サイドから中央に走り込んだのが清武弘嗣。

清武はこの東からのボールを受けると、そのままグングンスピードに乗ってドリブルで持ち上がっていく。

この清武の動きを警戒して、マークを集中させるマレーシア。

しかし清武は4人のDFを引きつけながら、「ここしかない」ピンポイントの位置に、右足アウトサイドで針の穴を通すようなパスを出す。

この絶妙なパスを受けたとき、右サイドに流れていた東慶悟はフリーになっていた。

そして東は、これを冷静にゴールへと蹴り込んで 1-0。

辛口で知られる解説者のセルジオ越後氏も思わず「素晴らしい!」と絶賛したゴール。

これぞまさに「日本のサッカー」と言うべきビューティフルゴールで、日本がダークホースの出鼻をくじくことに成功したのである。

そしてこの先制点で、日本は俄然、勢いに乗った。

ショートパスが面白いように繋がり、マレーシアをゴール前に釘付けにする日本。

劇的な優勝を遂げたアジア大会から1年が経ち、このU-22チームにも関塚隆監督のコンセプトが浸透。
チームとしての成熟が感じられるプレーぶりで、好調時ならば日本は、アジアレベルでは頭2つくらい抜けている印象を受ける。

特にこの試合では、清武弘嗣がキレキレの動きを見せていた。

アジア大会当時にはクラブを優先したこともあってU-22に選出されていなかった清武だけれども、その後はチームにも定着し、さらに8月のテストマッチでA代表に選出されてからは完全に一皮むけた感がある。
以前からサッカーセンスは高く評価されていたものの淡白なプレーも多かった清武が、今ではプレー全体から責任感と貫禄が感じられるようになった。

この試合では特に、角度に変化をつけるパスのキレが見事。
個人的にはバルセロナのアンドレス・イニエスタの姿がかぶって見えた。

しかし日本は清武を中心に多くのチャンスを作りながら、けっきょく前半は1点にとどまる。

そして追加点を狙いに行った後半。

ただしその思惑には、若干の狂いが生じることとなった。

狂いが生じた日本のプラン

後半立ち上がり、マレーシアはラインを高くして積極的な攻めを見せてきた。

この勢いに押され、やや守勢に回ってしまう日本。

マレーシアは、エースのワン・ザックが前半44分に負傷退場。
日本はこれで楽になる…はずだったのだけど、交代で出てきたワン・ザハルルも負けず劣らずのクセ者だったのだ。

名前もワン・ザックと間違いそうなワン・ザハルルだけれども、プレーのキレでも本家に引けを取らない。
後半はこのワン・ザハルルのサイドから酒井高徳が何度も突破を許し、日本はピンチを招いてしまう。

そして59分、この悪い流れを変えるために、日本は満を持してエースストライカーの永井謙佑を投入。
マレーシアが引いて守ってくると予想していた関塚監督は、スピードのある永井ではなく高さのある大迫勇也を先発で起用していたけれど、予想外に前がかりなマレーシアを見て、永井と大迫の入れ替えを決めた。

続いて68分には、東慶悟に代わって山崎亮平を投入。
これに伴って山崎が左サイドに入り、左サイドだった原口元気がトップ下に入る布陣をとる。

しかしこのシステムは、思ったように機能しなかった。

日本はボールをつなぐ意識が強すぎたか、なかなか永井のスピードを活かす機会が訪れない。

また原口のトップ下は周囲との連携がイマイチで、逆に前半好調だった清武がボールに触る機会が減り、攻撃の連動性が低下してしまう。

時おり清武がトップ下にポジションチェンジしたときにはリズムが生まれていたけれども、その時間帯が長く続くことはなかった。

それでも76分、日本は2人のエースの連携から2点目を奪取する。

バイタルエリア中央でボールを持った清武弘嗣から、オフサイドぎりぎりで右サイドを抜け出した永井謙佑に浮き玉のパスが出る。

これを永井がダイレクトで中央に折り返したところ、詰めていた山崎亮平がフリーの状態からゴールゲット。

これで2-0。

けっきょくこのスコアのまま、日本が最終予選の初陣を、なんとか勝利で飾ったのだった。

求められる “バランス感覚”

チーム発足当初から、日本の絶対的エースだった永井謙佑。
そして、新エースとして名乗りを挙げた清武弘嗣。
さらには10番を背負う東慶悟と、この試合でセンターフォワードとして先発した大迫勇也の4人は、ともに九州出身の選手だ。

U-22で攻撃の核を成すポジションを九州出身者が占めるのは久しぶりのことで、九州サッカーの復興が印象づけられる。

しかし後半に限って言えば、日本は脆さも垣間見せていた。

ツボにハマった時の日本のサッカーは非常に美しいプレーを見せるけれど、いったんリズムが狂うとなかなかそれを打破できないのはいつものことだけれども、この試合は特にその傾向が顕著だったように思う。
それが、後半の苦戦に繋がったのではないだろうか。

個人的にはこの関塚ジャパンは、「チームコンセプト」を重視するあまり、「個人」の力を活かしきれていないようにも感じる。

ちなみにこのチームには香川真司や宇佐美貴史、宮市亮など、今回は召集されていないタレントがまだまだ多く控えている。
ここにオーバーエイジも加えれば全く違うチームになる可能性もあるけれど、関塚監督はどういう考えを持っているのだろうか?

このチームの組織力は素晴らしく、ハマった時にはアジアでは別格の強さを発揮する。

しかし、世界で勝つには、それだけでは不充分なようにも感じる。

必要なのは、「個」と「組織」の “バランス感覚”。

ある意味では贅沢な悩みだけれど、そのさじ加減が、このチームを生かしもすれば殺すことにもなるだろう。

その命運を握る関塚監督の手綱さばきに、今後も注目していきたい。

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