ポルトガルで行われていたアルガルヴェ・カップ。
なでしこジャパンは決勝で敗れ、準優勝という成績を残して大会を後にした。

この結果に対しては「よくやった」と言う人もいれば、「負けは負けなんだから失敗だった」と言う人もいるだろう。
どちらの捉え方も間違いではないと思う。

それでも僕の個人的な感想を言わせてもらうと、「最高の収穫を手にした大会だった」ということになるだろう。

結果的に見ても内容的に見ても、現時点で考えられるベストに近いものを得れた大会。
それが今回の、アルガルヴェ・カップだったのではないだろうか。

日本が抱いた「テーマ」とは

昨今のなでしこブームの追い風を受けて、この決勝戦のテレビ中継は20%超えの高視聴率を記録したそうだ。
大会を通じて日本が活躍を見せたこともあって、日本のファンの中で “なでしこジャパン” の魅力はよりいっそう印象づけられたようにお思う。

オリンピックでも期待通りの戦いぶりを見せれば、なでしこジャパンの試合は男子代表に次ぐ人気コンテンツとして完全に定着するのではないだろうか。
これがまず、ひとつの大きな収穫だった。

その反面、この大会ではテレビ局がこぞって「ワールドカップ、オリンピックに次ぐ権威のある大会」「オリンピックの前哨戦」と煽ったことで、ある種の誤解も生んでしまったように思う。
テレビを観ていた人たちの中では、「なでしこジャパンがこの大会に、必勝を期して臨んでいる」と感じた方も少なくなかったのではないだろうか。

しかし率直に言ってこの決勝戦、日本は必ずしも「勝ちに行ってはいなかった」。

それはスターティングメンバーを見れば明らかである。
まず、チームの大エースである澤穂希の名前が、大一番のアメリカ戦と決勝のドイツ戦には見当たらなかった。

もちろん公には「体調不良」という一応の説明がなされてはいたけれど、トップアスリートが大会を欠場する理由としては、何とも曖昧な印象を受けたのは僕だけではないだろう。
ちなみに故障でもインフルエンザ等でもないとのことである。

あまりにも漠然とした理由なので、ネット上では「澤穂希・妊娠説(!)」まで飛び出すなどの様々な推測を生んだ。

ただ僕の個人的な憶測ではあるけれど、(体調不良を裏付ける「コンディション不足」などの理由が多少なりともあったにしても)基本的にはこれは、オリンピックに向けての「情報戦」の一種なのではないかと感じている。
つまり、オリンピックで対戦する可能性の高いアメリカなどのライバルに対して、澤のプレーを隠したいという意図があったことは考えられないだろうか。

もちろん、昨年の世界最優秀プレイヤーに輝いた澤の存在は世界中で知られているため、今さら隠す必要も無いのかもしれない。
しかし、澤が入った「ベストメンバーの日本」のプレーを隠したい、ということであれば、それなりの意味を持ってくるだろう。

そしてもう一つ。
(おそらくこちらのほうが第一の理由だろうけれど)大黒柱の澤が居ない状態でチームがどこまで機能するのかを見極めたい、という狙いが、日本のスタッフの間にあったのではないか、と僕は考えている。

澤穂希は現在でもトップフォームを維持しているけれども、客観的に見れば既に33歳の大ベテランだ。
故障などで澤が不在になる場面も充分に考えられるわけで、その時を見越して、あえて澤抜きで大一番の試合に臨んだ、という可能性もあり得るのではないだろうか。

しかしいずれにしても、佐々木則夫監督の中でのこの大会のテーマのひとつが「レギュラーとバックアップメンバーの融合」であったことは間違いないだろう。

なでしこジャパンの抱える最も大きな課題のひとつとして、「バックアップの層の薄さ」は、これまでも再三指摘されてきた。
実際、昨年9月のオリンピック・アジア最終予選では、はるかに格下と見られていたタイとバックアップ中心のメンバーで対戦し、苦戦を強いられている。
主力にもしもの事があった時にその穴を埋める選手を発掘することは、オリンピックに向けての絶対に避けられない宿題だったのだ。

佐々木監督はこの大会を通じて、これまで出番の少なかったバックアップメンバーたちを積極的に起用した。
そして結果的に、この狙いは見事に「当たった」。

4試合を通じて21人のメンバー全員を試し、その中から田中明日菜、宇津木瑠美、福元美穂、有吉佐織、菅澤優衣香、高瀬愛実といった選手たちが存在感を発揮する。
これらの選手たちが、いざというときには戦力として計算できる目処が立ったことは、この大会の最大の収穫だったと言ってもいいだろう。

決勝のドイツ戦でも、佐々木監督はA代表ではまだ経験の浅い宇津木瑠美、有吉佐織を先発出場させている。
澤のポジションも合わせて考えると、ベストメンバーから3人を入れ替えて臨んでいることからも、佐々木監督がこの試合で「勝利」を第一のプライオリティーとして考えてはいなかったことが伺えるだろう。

日本が見せた「成長」と「課題」

そして結果的に敗れたとは言っても、決勝も見どころの多いゲームとなった。
特筆するべきは、2度リードを許しながらも、それを追いついたことである。

早い時間帯に、立て続けに2点を失った日本。
以前までであれば、この段階で日本のメンタルは崩壊し、間違いなく勝負は決まっていただろう。
実際のところ僕も、「これはダメか…」と大敗も覚悟していた。

しかし僕はすぐ、そのことを懺悔することになる。

世界を制したなでしこたちは、数年前とは比べもにならないほど、たくましく成長していたのだ。

35分、カウンターから冷静に決めた川澄奈穂美のゴールで追いつくと、後半に入った55分には、ショートコーナーから田中明日菜が押し込んで 2-2の同点に。
終盤にPKを決められて勝ち越しを許すも、直後に永里優季のゴールで再び同点に追いつく。

最後はロングボールの処理を急造DF陣がミスして決勝点を奪われたけれども、リードされても簡単には諦めない粘り強さは、以前の日本にはまだ足りていないものだった。
これが身についてきたことは、日本が精神的に大きく成長したことを物語っていると言えるだろう。

とは言ってももちろん、4失点を喫したこと自体は褒められたことではない。
ただ、日本にとっては貴重なレッスンにもなった失点だったように思う。

前半の2失点を振り返ると、1点目は鮫島彩の守る左サイドからクロスを上げられ、それをニアで合わせられたもの。
2点目はコーナーキックからヘッドで豪快に決められたもの。

そしてこの2点とも、日本は相手選手に対してマークについていた。

1点目のシーンではクロスをケアした鮫島と、フィニッシュをケアした宇津木瑠美。
2点目のシーンではコーナーキックで守備に入った岩清水梓。
この3人のいずれもが、相手のマークに付いた上でゴールを奪われてしまっている。
本人たちとしてはマークに付きながらも決められてしまったということで、「まさか」の失点だったのではないだろうか。

しかしマークに付いていたとしても、その上から決めにくるのが「世界」の怖さである。
ドイツのような世界トップクラスのチームと戦う場合は、ほんのあと一歩、あと数センチというディティールの違いが勝敗を分ける。
だからこそ日本は、局面でより厳しいマークを徹底する必要があった。
この日のドイツは、それを改めて日本に思い出させてくれたのではないだろうか。

「収穫」を手にしたアルガルヴェ・カップ

シーソーゲームの末に敗れた日本。

しかし誤解を恐れずに言えば、僕はこの決勝戦は「負けて良かった」ゲームだったとも感じている。

ワールドカップで優勝して以降、なでしこジャパンは無敗のまま連勝街道を歩んでいた。
さらにこのアルガルヴェ・カップでも、世界ランキング1位のアメリカに勝ったことで大きな自信を手にしたけれど、同時にそれが気の緩みを呼ぶリスクも生んでしまっていた。
このドイツ戦は、良くも悪くもそれが一部露呈したゲームだったように思う。

しかし結果的に敗れたことで、なでしこたちはもう一度、自分たちの立ち位置を思い出すことができたのではないだろうか。

彼女たちにとっての本当の勝負は、あくまでも8月のロンドン・オリンピックである。

試合後、佐々木監督は「ちょっと勝負にこだわりすぎたかな」とドイツ戦を振り返っていたけれど、この大会のテーマは、このひと言に集約されていたと言っていいだろう。

そして、キャプテンの宮間あやが大会の最後に発した言葉。

「優勝できなかったのは、自分たちの、自分の力不足だと思います。」

この気持ちがある限り、敗戦は「喪失」にはならない。

日本がポルトガルで手にしたものは「失敗」の経験ではなく、数々の貴重な「収穫」だったように、僕には感じられたのである。

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