Gold Souk #2

「トップ下」という言葉が定着したのは、いつ頃のことだったろうか。

その昔は「オフェンシブハーフ」や「司令塔」と呼ばれていたこのポジションは、センターフォワードやゴールキーパーと同じように、チームで唯一の特別な存在である。
それだけに、このポジションを主戦場とする選手同士が並び立つことは、以前は非常に難しいこととされていた。

’70年代ドイツ代表でのギュンター・ネッツァーとヴォルフガング・オベラーツ。
’90年代イタリア代表でのロベルト・バッジョとジャンフランコ・ゾラ、あるいはアレッサンドロ・デルピエロ。
’00年代初頭のASローマにおける、フランチェスコ・トッティと中田英寿。

トップ下、あるいはそれに近しいポジションでプレーする一流選手たちが、共存できなかった例は数多い。

チームの攻撃を取り仕切る「王様」としての権限がこのポジションの選手には与えられるけれども、「王様はチームに2人は要らない」。
それだけにトップ下を巡るポジション争いは、熾烈を極めることも珍しくはなかった。

しかし近年、その傾向は薄れつつある。

例えばバルセロナ時代のロナウジーニョとリオネル・メッシ。
ACミランでのカカーとアンドレア・ピルロ。
あるいはオランダ代表でのウェスレイ・スナイデルとラファエル・ファンデルファールト。

これらのコンビは、15年前ならば同じ「トップ下の選手同士」として共存が難しいとされていたかもしれない。
しかし21世紀に入り、以前ならトップ下を任されていそうなタイプの選手たちが、サイドやボランチ(あるいはセントラルMF)、シャドーストライカーといったポジションをこなすだけのユーティリティー性を身に着けたことによって、「2人の司令塔」の共存が可能になってきた。

そして、本田圭佑と香川真司である。

ともにトップ下で最大の輝きを放つ両雄が並び立ったのは、ある意味では「いま」という時代が生み出した偶然だとも言える。

それでもこの2人のエースの存在が、日本を世界レベルのチームへと変貌させようとしているのは、間違いないだろう。

アジアに君臨する「スター軍団」、日本代表

スコアは文句なしの3-0。
しかも、ゲーム内容の差は点差以上。

オマーンの守護神、アリ・アルハブシのスーパーセーブがなければ、倍の得点差になっていてもおかしくはなかった試合。
日本代表の見せたパフォーマンスは、同じスコアで勝利した昨年8月の韓国戦以来、ここ10ヶ月間で最高のものだったと言ってもいい。

この試合で調子が今ひとつだったのは、所属するガンバ大阪が絶不調で、自身も調子を落としてしまっている遠藤保仁くらいのものだっただろう。
それでも他の選手たちは軒並み及第点、いやむしろ、アジア全土に「日本サッカーここにあり」を誇示するかのような「レベルの違うパフォーマンス」を魅せつける。

考えてみれば今の日本代表は、間違いなく歴代最高クラスの選手たちで構成されている。

ボルシア・ドルトムントでブンデスリーガ2連覇の立役者となった10番。
CSKAモスクワで欧州チャンピオンズリーグ・ベスト8入りを果たした司令塔。
一昨年の世界ナンバーワンクラブ、インテル・ミラノでレギュラーを張る左サイドバック。
シャルケ04でチャンピオンズリーグベスト4の一員となった右サイドバック。
シュツットガルトでレギュラークラスとして活躍し、日本代表の歴代得点記録4位につける右ウイング。
ヴォルフスブルクで5シーズンを戦い、ブンデスリーガ優勝も経験したキャプテン。
ベルギーリーグのクラブで主将も務めたゴールキーパー。
オランダリーグでレギュラー獲りに成功した若きセンターバック。
そして2009年のアジア年間最優秀選手に輝いたボランチと、
Jリーグで2年連続得点王を獲得したセンターフォワード。

しかも彼らを率いるのが、かつてACミランをスクデットに導いたイタリアの名将なのだから、アジアの対戦国からすれば “脅威” 以外の何物でもないだろう。

しかしそのスター軍団の中でも、「別格」と呼べるのが香川真司と本田圭佑である。

ザック・ジャパンの中核をなす2人のエース。
日本はこの2人のコンビネーションで、昨年の韓国戦では宿敵を完膚なきまでに叩きのめしている。

その後、本田の怪我によってこのコンビは長期間の休眠を強いられたけれども、ついにこのオマーン戦で、日本の誇る「ゴールデンコンビ」が復活したのだ。

「ゴールデンコンビ」の完成を目指して

「柔」の香川と「剛」の本田。
パッと見の2人のイメージはこんな感じに映る。

実際にこの試合でも、本田はアジアレベルでは抜きん出た “強さ” を披露して前線の起点となり、香川はワールドクラスの “俊敏性” でオマーンディフェンス陣を切り裂いた。

しかしこのコンビの凄みは、時として「柔」が「剛」に、「剛」が「柔」にとその表情を変えられることだろう。

「剛」の本田は体を張ったキープをしつつも、巧みなパスワークでリズムを作り出す、メトロノームの役割も担う。
そして「柔」の香川はスピードとテクニックで敵を翻弄したかと思えば、ナイフのように切れ味鋭いシュートを突き刺す残酷さを持っている。

この2人の活躍で、立ち上がりから日本はオマーンを圧倒し続けた。

まずは12分、香川とパス交換した前田遼一から、オーバーラップした長友佑都へスルーパスが出る。
そして長友の左足からダイレクトで放たれたクロスを、本田圭佑が左足ボレーで叩きこんで1-0。

続いて51分、香川真司が今度は左サイドからドリブルでカットイン。
ここから右足で相手の裏に出された浮き球のパスに、前田が合わせて2-0。

最後はその直後の53分、またも香川が中央でキープをしてから、右サイドに開いた前田へパス。
そして前田の撃ったシュートのこぼれ球を、岡崎慎司が押し込んで3-0とした。

大事な最終予選の初戦は、ポイント争いの上でも理想的なスタートと言える完勝劇。

しかし日本にとってそれ以上に大きかったのは、本田と香川、その「ゴールデンコンビ」が復活を遂げたことではないか。

日本代表の実力は、既にアジアレベルを凌駕している。
最終予選もよっぽどのことが無い限り通過は間違いないはずで、彼らが見据えるのは2年後のブラジルでの本大会になるだろう。

そこで世界の強豪を相手にした時、日本の武器となるものは何か?

その答えの一つが、本田圭佑と香川真司の「ゴールデンコンビ」なのではないだろうか。

しかしこの黄金のコンビは、まだ完成形だとは言いがたい。

この試合でも、前半に本田が攻撃を牽引した時間帯では、香川の存在感は本田に遅れをとっていた。

その後、香川が左サイドだけに留まらず前線を縦横無尽に動き始めてからは「さすが」の輝きを放っていたけれど、逆にその時間帯では本田が香川にスペースを譲っていたような雰囲気がある。

ともにトップ下を持ち場とする選手だけに、得意とするエリアが被るのは仕方がないところだろう。

しかしこの2人が90分間の中で臨機応変にその役割をスイッチしていけるようになれば、その破壊力は倍増するはずだ。
そしてその時、日本の攻撃力は充分に「世界に通用する」ものになるのではないか。

本田圭佑と香川真司、そのコンビネーションが「世界レベル」に達したとき。

その時こそが、日本の誇る「ゴールデンコンビ」が、完成した瞬間となるはずだ。

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