Poland & Russia soccer game-19

今年のユーロは、日本では今ひとつ注目を浴びないままスタートを切ってしまったように思うのだけれど、これにはいくつかの理由が考えられる。

まず大きいのは、日本中が注目する一大イベント、ワールドカップ・アジア最終予選と日程が思いっきり被ってしまったこと。
そして開催国がポーランドとウクライナという、日本人には馴染みの薄い東ヨーロッパの国だったこと。
さらに開幕戦もポーランド対ギリシャという、これまた地味なカードだったことも拍車をかけたように思う。

もちろんフットボール界ではワールドカップに次ぐビッグイベントなだけに、大会が進むにつれて注目が高まるのは間違いないところだろう。
それでもとりあえずこの2012年大会は、いつになく静かな開幕を迎えることになった。

正直、僕も特別な期待はなくこの開幕戦を観たのだけれど、そこはやはり伝統の大会 “ユーロ”。

映像を通じて観られたのは、僕の予想をはるかに上回る “熱戦” だったのである。

理想的なスタートを切った開催国

ポーランドの首都・ワルシャワに新設されたナショナル・スタジアム。
2012年のユーロは、ここを舞台に幕を開けることになった。

最新のFIFAランキングではポーランドの62位に対して、ギリシャは15位。
これだけを見るとギリシャが圧倒的に格上なように思えるけれど、実際にはランキングほどの力の差は無く、むしろ開催国のポーランドが有利であるとの見方が強かった。

事実、立ち上がりからゲームを支配したのはポーランド。

サイドをワイドに使ったアタックからペースを掴むと、迎えた17分。
フランスのボルドーでプレーする10番、ルドビク・オブラニアクからのパスを受けた、ボルシア・ドルトムント所属のヤクブ・ブワシュチコフスキが右サイドからクロスを上げる。
これを、同じくドルトムント所属のエースストライカー、ロベルト・レヴァンドフスキが豪快にヘッドで決めて1-0。

開催国のポーランドが、理想的とも言えるスタートを切ったのだ。

その後も、前半はポーランド優勢の時間帯が続く。

地元の大声援を受けて力強いプレーを見せるポーランド。
そしてそれ以上に、前半はギリシャの不振ぶりが目に付いた。

長年ギリシャ代表を支えてきたギオルゴス・カラグーニス、コンスタンティノス・カツラニスといった中盤の選手たちは健在だけれども、彼らのパスを受ける「受け手」たちの運動量が少なく、アタックが機能しない。
そうこうしているうちに、センターバックのアブラアム・パパドプーロスが前半のうちに負傷交代。
さらに前半終了間際にはもう一人のレギュラーセンターバック、ソクラティス・パパスタソプーロスまでもが2枚目のイエローで退場となり、1点のビハインドを負いながら10人で戦うことになったギリシャ。

もはや勝ち目はないと思えるほどの苦境に、ギリシャは追い込まれてしまったのである。

しかし、ギリシャと言えば8年前のユーロ2004で、誰も予想していなかった「奇跡の優勝」を成し遂げたチーム。

逆境でこそ力を発揮するその伝統は、まだ失われてはいなかったのだ。

流れを変えたベテラン、ディミトリオス・サルピンギディス

後半開始から、ギリシャ代表は勝負に出た。

セットプレーのキッカーを務めるなど中心選手の一人だったソティリス・ニニスを下げ、ベテランのディミトリオス・サルピンギディスを投入する。

そして結果、この交代が “大当たり” となった。

サルピンギディスは小柄ながらスピードとテクニックに長け、ベテランらしい老獪さも併せ持った選手だ。
そしてサルピンギディスがディフェンスラインの裏に抜ける動きを繰り出すことによって、ギリシャの攻撃に、前半には見られなかったダイナミズムが生まれた。
パスの出しどころが増えたことによって前線が活性化し、目に見えて攻撃リズムが高まっていくギリシャ。

そして51分、早くもそれは「ゴール」という形で実を結ぶ。

ギリシャのパス交換から、オーバーラップした右サイドバックのバシリス・トロシディスがクロスを上げる。
このボールに反応したセンターフォワード、テオファニス・ゲカスのシュートは未遂に終わったものの、ゲカスが競り合ったボールがこぼれた先には、ポッカリとした空間が広がっていた。
そして、ここに走りこんだのがサルピンギディス。

飛び出していたゴールキーパーを鼻先で交わした後、サルピンギディスが放ったシュートは無人のゴールに突き刺さる。

これで1-1。

前半からすれば「まさか」と言ってもいいような同点劇が、後半早々に生まれたのである。

そしてここから、流れは大きくギリシャに傾いた。

サルピンギディス、カラグーニス、カツラニス、ゲオルギオス・サマラスらを中心に、次々とチャンスを創っていくギリシャ。
対するポーランドは攻撃がパターン化し、ほとんど好機を生み出せなくなっていく。

ポーランドはかつて、1974年と1982年の2回、ワールドカップで3位に入賞したこともある古豪だけれど、その当時のスピーディーでパワフルなカウンター・フットボールへの信仰が未だに根強いのだという。
この国では驚くことに、あのバルセロナのプレーでさえも「退屈」だと考えられているそうだ。

現在の代表チームは以前に比べればかなり技術レベルも上がっていると思えるけれども、それでもまだ、シンプルでスピード感あふれるフットボールが、ポーランドの伝統のスタイルなのである。

しかしこの試合、ポーランドのスタイルは前半こそ機能したものの、後半には完全なマンネリズムに陥ってしまった。

そうして防戦一方となったポーランドは68分、この試合で最大のピンチに見舞われる。

交代出場したばかりのギリシャ代表の19歳、コンスタンティノス・フォルトゥニスが、そのファーストタッチで鮮やかな浮き球のスルーパスを放つ。
その先に走り込んでいたのは、またもディミトリオス・サルピンギディス。

しかしポーランドのゴールキーパー、ヴォイチェフ・シュチェスニーもこれに反応。

ボールの落下点で交錯する、サルピンギディスとシュチェスニー。

しかし、一歩早くボールに触れたのはサルピンギディスのほうだった。

勢い余って、サルピンギディスの脚をかっさらってしまうシュチェスニー。

アーセナルで正ゴールキーパーを務める守護神には、このワンプレーでレッドカードが突きつけられる。
そしてレフェリーは当然のごとく、ペナルティスポットを指さしたのだった。

「波乱」を予期させた開幕戦

一見、地味に見える対戦でも、そこからたくさんのドラマが生まれる。
それがフットボールの醍醐味だ。

静かに始まった印象の強いユーロ2012だったけれども、この開幕戦の1試合だけで、僕のそのイメージは180度ひっくり返ってしまった。

ワールドカップ予選ももちろんだけれども、その後はぜひ、このユーロ2012にも注目していただければと思う。

ちなみにギリシャに与えられたPKの行方はと言えば。

10番を背負うキャプテンであり、ギリシャ代表の象徴とも言える名手、ギオルゴス・カラグーニスが、このPKをまさかの失敗。

目まぐるしく主導権の入れ替わったゲームは、けっきょく1-1のドローで幕を閉じる。

それでもこの開幕戦が、蓋を開けてみるまで全く先の読めない好ゲームだったことに違いはないだろう。

きっとこの大会は、これまでに負けず劣らず、ドラマチックで波乱に満ちた大会になるのではないか。

ついそんな未来を期待してしまうような、ドラマチックでエキサイティングな開幕戦が、ここにはあったのだ。

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