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晴天の国立霞ヶ丘競技場を埋めた観客の数は、16,663人。

昨年のなでしこブームが一段落したことを考えれば、誇っていい数字だと思う。

なでしこリーグの覇権を争う、上位2チームによる頂上決戦。
そこで観られたのは、「勝者」と「敗者」とが明確なコントラストを描く、残酷な結末だった。

なでしこリーグの「頂上決戦」

勝ち点22で首位を走るINAC神戸レオネッサと、同20で2位につける日テレ・ベレーザ。

リーグ優勝の行方を左右する天王山、その第1ラウンドが、ベレーザのホームゲームとして開催された。

なでしこリーグは「INAC神戸の一強リーグ」という見方をされがちだけれども、僕は現実的に優勝の可能性のあるチームは、INACとベレーザ、そして浦和レッズ・レディースの3チームだと思っている。
先週は神戸でINAC ✕ レッズの上位対決があり僕も足を運んだけれども、この試合は3-0でINACの勝利。
ただし前半はむしろレッズが優勢で、この時間帯に先制点をマークしていれば、結果はレッズの側に転んでいてもおかしくはなかったと思う。

それくらい、INACと上位チームとの実力差は伯仲していると僕は考えている。

そして今回INACを迎え撃つベレーザは、名実ともに “打倒・INAC” の急先鋒と言える存在だ。

間違いなく、リーグ前半戦で最も重要なゲームとなったライバル対決。
それが、この日のゲームだったのだ。

そして迎えたキックオフ。
前半のゲーム内容は、ひとことで言えば「素晴らしい」としか言いようのないものだった。

ともに技術の高さを誇り、攻撃的なパスサッカーを掲げる両チーム。

ベレーザは兄貴分のヴェルディ同様、そのスタイルは読売クラブ時代からの伝統となっている。
対するINACは澤穂希・大野忍・近賀ゆかりなどの主力選手と、監督の星川敬がベレーザ出身という「ベレーザの血を引く」チームである。
両者のスタイルがある程度似てくるのは必然だった。

そして特筆すべきは、この両チームは実力的にも、ほぼ互角のレベルだったことである。

ゲームは立ち上がりから「攻撃と攻撃」「技術と技術」が真っ向からぶつかり合う、 “名勝負” の様相を呈する。

攻守が目まぐるしく入れ替わり、お互いが交互に決定機を創り合うような展開。
しかも見事だったのは、ボールがなかなかラインを割らず、インプレーが非常に長く続いたことだった。
それだけ両チームの技術レベルが高かったのだとも言えるだろう。

ここまで徹底して攻撃重視のスタイルを掲げるチーム同士の対戦は、男子の世界でもそうお目にかかれるものではない。
この試合は1万6千人を超える観衆を集めたけれど、大観衆からお金をとっても恥ずかしくないだけのハイレベルなサッカーを、このゲームは見せてくれたのではないだろうか。

運命を分けた「悲劇」

ちなみにこの日のINACでは、シーズンのはじめを病気で欠場していた澤穂希の復調ぶりが目立っていた。
守備面での読みの鋭さは完全に好調時のレベルまで回復したと見られ、攻撃面でも的確なパスでチームをリードする。

逆にベレーザで個人的に目を引いたのは、中盤でゲームメイクを牽引した原菜摘子と、なんと5月に16歳になったばかりなのにレギュラーセンターバックの座を射止めた天才少女・土光真代だ。
この土光、ポジショニングの読みも対人プレーも、ディフェンスに関しては素晴らしいセンスを持っている。
あとは161cmという身長がどこまで伸びるかにもよるけれど、将来のなでしこジャパンでディフェンスの要になることも夢ではない逸材だろう。

しかしこの日、ベレーザで最も輝きを放っていたのは、やはりこの人。
エース・岩渕真奈である。

ちなみに岩渕は、一週間前のスペランツァFC大阪高槻戦でベンチ入りはしたものの、出番がないまま試合終了を迎えている。
このことから、どこかを痛めていることが想像されていたけれども、このINAC戦では先発復帰を果たしていた。

しかし、キレキレの大活躍を見せた浦和レッズ戦と比べると、この日の岩渕は積極的にドリブル・シュートを仕掛けてはいたものの、どこか動きが重い。
それでもエースとしてチームを引っ張るプレーを見せてはいたけれども、前半40分過ぎ、ドリブルで仕掛けた際に芝生に足を取られ、ピッチを退いてしまう。
その後いったんはゲームに戻ったものの、迎えた後半開始時に、岩渕の姿はなかった。

女子選手の怪我と言うと、昨年のオリンピック予選で丸山桂里奈が膝の靭帯を損傷したのを皮切りに、菅澤優衣香、京川舞と、代表の有望株が立て続けに膝に大怪我を負い、長期の欠場を強いられている。
男子に比べて筋肉量が少ない女子は、膝をカバーする筋力が弱いために故障をしやすいらしいけれども、選手生命を左右する可能性もあるだけに負傷には細心の注意を払う必要があるだろう。

岩渕が今回痛めたのは足首ではないかと見られているけれど、どの箇所であれ女子選手の怪我は慎重にケアしていただきたいので、ここで岩渕に無理をさせなかったのは正しい判断だったと思う。

ただしエースの岩渕を欠いたことで、後半のベレーザはその勢いを一気に失ってしまった。

ベストメンバーが揃った時のベレーザは、INACとほぼ互角の戦いができるだけの戦力を持っている。
しかし両チームの最大の違いは、「選手層の厚さ」ということに尽きるだろう。

例えば澤穂希が欠場していた時期も、INACの戦力はそれほど落ちることはなかった。
京川舞が離脱している現在でも、センターフォワードのポジションは別の選手たちがその穴を埋めている。
おそらく川澄奈穂美や大野忍、チ・ソヨンなどその他の主力が欠けたとしても、大きく力が衰えることはないはずだ。

しかし、ベレーザはそうではなかった。

岩渕真奈が退いてからのベレーザは、単にエースを欠いたというだけではなく、攻撃の「型」までをも失ってしまった。

中盤でボールは回せても、そこに変化をつける選手が居ない。

木龍七瀬や田中美南がドリブルで仕掛けても、INACのディフェンス陣に読み切られてストップされてしまう。

結果的にゴールゲッターとチャンスメーカーを同時に失ったベレーザは、最後まで得点の匂いを漂わすことのないまま、後半の45分間を終えた。

そして試合は川澄奈穂美のPKで得た1点を守り切り、INACが逃げ切りに成功する。

両者の実力差は紙一重。

しかしベレーザの誇る「最大の武器」は、まだもろく繊細だった。

そしてチームにとって彼女は、あまりにも大き過ぎる存在だったのである。

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