なでしこジャパン、ドローが生んだ「ジレンマ」/ロンドン・オリンピック@日本女子代表 0-0 スウェーデン女子代表

Stockholm, Sverige
Stockholm, Sverige / DoctorWho

一見するとスコアレスドローの「凡戦」。

それでもグループ最大のライバルチーム相手に「勝ち点1」は、通常なら悪い結果ではなかったと思う。
逆に失点しなかったという意味では、得るものの大きいゲームでもあった。

なでしこジャパンの今の課題は、「決定力不足をどう解消するか?」
という部分にまずは集約されるだろう。

この日のスウェーデン戦では相手のプレスがユルユルだったこともあって、中盤の組み立てはあまり参考にならない。
ただゴール前に持ち込んでのフィニッシュ、最後の崩しの部分で、日本は精度を欠いてしまった。

ひとつ気になったのは、日本の攻撃があまりにも左サイドに偏っていたことである。
初戦のカナダ戦でも左サイドを起点に2得点が生まれているので、川澄奈穂美を中心とした左からの崩しが日本のキーになっているのは間違いないのだけども、逆にこの日は右サイドからの攻撃回数が極端に少なくなっていた。

なでしこジャパンの右サイドと言えば、近賀ゆかりのオーバーラップからのチャンスメイクが武器の一つになっている。

しかし今回のオリンピックでは、これまで右サイドハーフの位置で近賀と抜群のコンビを見せていた大野忍がトップに移動し、トップだった川澄が左サイドハーフに、そして左サイドハーフだった宮間あやが右サイドハーフに移動するというポジション変更を行なった。
この影響で、右サイドのコンビネーションが低下してしまっているのが現状だ。

ただ、宮間あやは日本のゲームメーカーである上に、左右両足で精度の高いキックを蹴れる選手でもある。
普通に考えれば宮間と近賀のコンビも、タイミングさえ掴めてくれば連携を高めることは充分に可能だろう。
実際にこの日も回数こそ少なかったけれども、69分には宮間との絶妙なワンツーから近賀が抜け出し、そのクロスから大野が決定的なシュートを放ったような場面もあったので、徐々に息は合ってきているように思える。

そもそも、ここまでの2試合はキャプテンの宮間が「絶不調」と言ってもいいくらいにパスの精度が落ちているのだけれども、右サイドのポジションに慣れて、宮間自身のコンディションも上がってくれば、右からの攻撃が一気に活性化される可能性は高い。
逆に言えば、この右サイドからの攻撃力が上がって左右両サイドからチャンスを創れるようになれば日本の得点力も飛躍的に高まるし、そのレベルまで到達することが、ハードな戦いが予想される決勝トーナメントを勝ち抜くための条件にもなってきそうだ。

第3戦、そして決勝トーナメントに向けて

ところでグループリーグも2試合を消化したことで、ここからはその先の決勝トーナメントも見据えて、第3戦の南フリカ戦を戦う必要が出てくるだろう。
現時点で日本の決勝トーナメント進出は確定しているので、問題はメダル獲得への最大のハードルとも言える、「決勝トーナメント1回戦」をどういう状態で迎えるかどうか、という点に絞られる。

この日のスウェーデン戦のあと、澤穂希は佐々木則夫監督が、メディアに向けて “2位通過を容認する” ような発言をしたことに対して不満を漏らしていたそうだ。

今大会はグループ2位で通過した場合、アメリカ、フランスといった強豪チームと1回戦で当たるのを避ける事ができる。
それを踏まえての佐々木監督の発言だったようだけれども、これが「あくまでも1位通過を狙う」選手たちとの間にギャップを生んでしまったようだった。

スポーツの現場では、選手のメンタルコンディションというのは勝敗を大きく左右するものだ。
なでしこジャパンは金メダルを狙っている以上、選手たちはあくまでも全ての試合に「勝つ」つもりで戦っているのは、考えてみれば当然のことだろう。
今回のスウェーデン戦の引き分けは悪い結果ではなかったけれども、選手のテンションということを考えると、勝っておくのがベストではあった。
決勝トーナメントの相手がどこになろうとも、グループリーグを勢いのある状態で勝ち抜くことが、1回戦に向けては重要になってくるからである。

しかし、とにかく今は次の試合に切り替えていくしかない。

次の第3戦は、相手が今回のグループで一番力が落ちる南アフリカであることを考えれば、ガラっとメンバーを替えて主力を休ませることもできるだろう。
しかし、宮間と近賀のコンビネーションが完全でないことや、中途半端な試合をしてしまって更にテンションが下がるリスクを考えると、ある程度主力を先発させざるをえないとも考えられる。

個人的には福元、澤、鮫島、大野あたりは休ませてもらって海堀、矢野、田中、岩渕あたりを先発起用。
あとは試合展開によって、リードした場合は近賀、宮間、川澄、大儀見あたりを休ませつつ安藤、高瀬、丸山を試し、拮抗した展開になってしまった場合は主力を出していくような感じで、結果的に最低でも2-0以上のスコアで勝てれば理想的だと思う。

いずれにしても、今となってはグループを1位通過するか2位通過するかの星勘定は、あまり重要ではないとも思う。

それよりは第3戦でいかに良い形で勝って決勝トーナメントに進出するか、を考えて戦ってもらいたい。

そしてチームの最大の武器である「一体感」を取り戻すこと。

それがいま、なでしこジャパンにとって一番大切なことではないだろうか。

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