Mike Vondran at Praia Juaquina, Florianopolis, Brazil, December 20 2008.Mike Vondran at Praia Juaquina, Florianopolis, Brazil, December 20 2008. / over_kind_man

たぶん、この試合のなでしこジャパンが、2012年版なでしこの「完成形」なのだろう。
ワールドカップ優勝から1年。
いろいろな選手を試し、システムを試し、サッカースタイルを試行錯誤した末に導き出された、佐々木則夫監督の「答え」。
それがこの日、ブラジルを沈めた「カウンターサッカー」だったのだ。

3月のアルガルヴェ・カップや4月のキリンチャレンジカップで見られたポゼッションサッカーの影は、そこにはもう無かった。
それが主力の不調などによるものなのか、勝つ確率を少しでも上げるために採った積極策なのかは分からないけれど、とにかく佐々木監督は腹を括ったのだと思う。

日本はたぶん準決勝、そしてそこで勝てれば決勝でも、このカウンタースタイルで戦うだろう。

鳴りを潜めたパスワーク、右サイドの機能不全、キャプテン・宮間の不調と、色々な課題を抱えたまま大会を戦ってきたなでしこジャパン。
しかし彼女たちはそれらの課題を全て飲み込んだ上で、現実的な勝利を目指す道を選んだのである。

ブラジルの「個人技」 VS 日本の「組織力」

試合は、ひとことで言えば「個人技のブラジル」VS「組織の日本」という展開になった。
そして先制点が生まれた前後の時間帯を除いて、終始ボールを支配していたのはブラジルである。

ブラジルのアタック陣の個人技は、これはもう「見事」としか言いようがなかった。
南米はヨーロッパなどに比べて女性の社会進出が遅れているためか、男子と違って女子サッカーのレベルは高くはないのだけれども、ブラジルだけは別だ。
カナリア色のユニフォームを身にまとった選手たちのプレーからは、ブラジルサッカーの芳香が「これでもか!」と言わんばかりに漂ってくる。

またブラジルは足技だけでなく、球際の強さも強烈だった。
決して組織的だったとは思わないけれども、その「強さ」を活かしてセカンドボールを拾い、日本がボールを持つと激しいチェックでこれを奪いにかかる。
反面、ディフェンスは「ザル」と言ってもいいほど組織力・個人能力ともに低レベルだったけれども、そのディフェンスの弱さを突かれないようにボールを支配して押しこみまくる、「攻撃こそ最大の防御なり」を地で行くのがブラジルのサッカーだった。

そして日本はそのブラジルに「個」の力で圧倒されてしまい、ゲームの主導権も握られることになってしまったのである。

しかし、日本はブラジルにはない「組織力」でこれに対抗した。
ブラジルの猛攻を受けながら、チーム全体で連動した守備組織を築き、攻撃を跳ね返し続ける。

この日、特に光っていたと僕が感じたのは、熊谷紗希と岩清水梓のセンターバックコンビである。
押し込まれた時間が長かったのに日本のディフェンスが破綻しなかったのは、この2人が90分間安定したプレーを続けて、チーム全体に落ち着きを与えていたことが非常に大きい。
後半は前線からのプレスがかからなくなってラインを下げざるを得なかったけれども、それでも失点をゼロに抑えきれたのは、熊谷・岩清水の鋭いディフェンスがあったからだろう。
そのほかでは澤穂希、福元美穂、近賀ゆかりなどもディフェンス面で非常に貢献していたと思うし、その他の選手も含めて、この日はピッチ上の11人の守備意識が本当に素晴らしかったと思う。

あとは日本が、ブラジルのエース・マルタに仕事をさせなかったのも大きかった。
この日のピッチ上では、澤穂希とマルタとの「新旧バロンドール対決」のマッチアップが頻繁に起こっていたけれど、マルタにボールが渡ると、澤、阪口夢穂のボランチコンビを中心に日本が素早いプレッシャーをかけて、マルタを自由にさせないことを徹底していた。
またマルタ自身も連戦の疲れが溜まっていたのか、何となく体が重そうで、北京オリンピックの頃に見られたような爆発的なキレとスピード感が感じられなかったことも日本にとっては追い風になった。

さらにブラジルの攻撃は、確かに上手いけれどもコンビネーションに乏しいため、日本が慣れてくるに連れてその脅威度が薄れていったように思う。
基本的には個人のドリブル突破が主体で、中央突破を狙ってくるか、サイドからクロスを上げてくる、というのがブラジルの攻撃パターンになる。
しかし単発のドリブル突破は、ゴール前を固めた日本にとってはそれほど脅威ではなくて、またクロスが上がっても中央に走りこんでくる選手が少ないのであまり怖さはなかった。
いずれにしても強引で単調になりがちな攻撃に終始したので、撃たれたシュートの数に比べると、決定的なチャンスはかなり少なかったと言えるだろう。

そして日本はそんな押し込まれる展開に耐えながら、FKからの素早いリスタート、続いてカウンターアタックから2点を奪取する。
そのサッカーは技術的な面から見れば、確かに美しいものではなかったかもしれない。
それでもそこには、ワールドカップの時に見られたような「勝利への執念」、「チームの一体感」が、蘇っていたように感じられたのである。

なでしこジャパンの決勝進出を願って

難敵ブラジルを退けて、高いハードルを1つクリアしたなでしこジャパンは、この勝利でベスト4進出を決めた。

ただし個人的には、ここからがようやく今大会のスタートラインだと感じている。
ベスト4は前回の北京オリンピックで既に達成しているし、何と言っても日本はワールドカップチャンピオンだ。
要求が高いかもしれないけれど、ベスト4で満足してほしくはないし、選手たちも満足はしていないと思う。

ちなみに準決勝の相手は、大会直前のテストマッチで完敗した因縁の相手・フランスに決まった。
そしてもう一つの準決勝のカードも、アメリカ対カナダで決定している。
日本が仮にフランスに負けたとしても、3位決定戦では一度グループリーグで対戦して勝っているカナダと当たる可能性が高い。
そう考えると、最低でも銅メダルを獲得できる可能性はかなり高まったとも言えるだろう。

ただしあくまでも個人的な意見だけれども、もし銅メダルで終わってしまったとしたら、ちょっと物足りないものを感じてしまうのだ。

メダル候補だったドイツが出場していない大会だというのもあるし、3位決定戦の相手がやや力の落ちるカナダになりそうだというのもある。
正直、これで銅メダルを獲っても、何となく「タナボタ感」が残ってしまうのは僕だけだろうか。
もっと言えば、銅メダルになった場合は、結局フランスに(テストマッチも含めて)一度も勝てなかったということにもなる。
さらに、物議をかもした南アフリカ戦の引き分けで残ったモヤモヤ感、ネガティブなイメージを完全に払拭するという意味でも、フランスには絶対に勝って欲しいと思っている。

というわけで、独断と偏見で今大会の「成功ライン」を決めさせてもらうとしたら、ズバリ『決勝進出』、『銀メダル以上』を期待したい。
だから個人的には次のフランス戦こそが、この大会で一番重要な一戦だと考えている。
それでも、この日のブラジル戦のようなサッカーを続ければ、フランスを相手にしても充分に勝機はあるだろう。

僕は女子サッカーの情報自体は10年以上前からチェックしていたけれども、本気で女子サッカーを観るようになったのは、4年前の北京オリンピックでのなでしこジャパンの活躍がきっかけだった。
それから4年間、なでしこたちを応援し続けてきた。
そしてもちろん、これからもずっと応援していきたいと思っている。

選手たちにとっても、監督にとっても、ファンにとっても、残りの2試合は、これまでの4年間の全てが詰まった「集大成」になるはずだ。

僕と同じようになでしこを応援しているサッカーファンたち。
そして、普段はサッカーを観ないけど、なでしこたちの活躍に期待している日本中の人々。

彼らのためにも、準決勝では必ず、フランスに勝利してほしい。

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