関塚ジャパン、快進撃を支えた「急成長」/ロンドン・オリンピック@U-23日本代表 3-0 U-23エジプト代表

[Egypt.][Egypt.] / New York Public Library

何だか毎日似たような感想で申し訳ないのだけど、今回ももう「お見事」としか言いようがない。
U-23代表がエジプトに勝利して、オリンピックで44年ぶりの準決勝進出を決めた。
もちろん、個人的にもエジプトに勝ってくれることを信じてはいたけれど、まさかここまで圧倒的な勝ち方をしてくれるとは!!
エジプトは決して弱いチームではないだけに、正直もっと際どい試合になるかな?と予想していたんだけれども、嬉しい誤算である。

しかしこのU-23代表チームはたぶん、僕の予想をはるかに上回るスピードで、成長を続けているようなのだ。

日本が見せた「完勝」。

試合はまさに日本の「完勝」と言ってよかった。
立ち上がりから激しいプレッシングをかけ続け、エジプトにまともに攻撃をさせない日本。

そして前半早々の14分、プレスからボールを奪った清武弘嗣のアーリークロスに反応した永井謙佑が、ワントラップでキーパーをかわし、無人のゴールに流し込んでゴールゲット。
この時の接触で永井が負傷交代してしまったのは残念だったけれど、日本に早々と先制点が生まれた瞬間だった。

その後もゲームを支配し続けた日本は40分、またも清武のボールカットから右サイドの東慶悟へパスが渡る。
これを受けた東が絶妙なワンタッチのスルーパス。
それに抜け出した齋藤学が背後から倒されて、エジプトのディフェンダーを退場に追い込む。

数的優位に立った日本は後半も攻め続け、78分に吉田麻也、83分に大津祐樹が、それぞれセットプレーの流れから加点。
終わってみれば3-0の圧勝劇で、あのブラジルとも接戦を演じた難敵・エジプトを玉砕したのである。

関塚ジャパンの見せた「急成長」

しかし思い返せば関塚ジャパンは、大会前にはメダルなど全く期待されていなかった。

アジア予選の段階から、シリアに敗れるなど苦戦続き。
本大会出場が決まってからも、香川真司やオーバーエイジの候補選手たちの招集に失敗するなど、準備も後手後手に回っている印象が強かった。

正直なところ僕も、ここまで勝ち上がるとは全く予想できていなかった。
メンバー選考にも多少不満はあって、香川真司や宮市亮は仕方がないにしても、トゥーロン国際大会で良いプレーを見せていた高木善朗や指宿洋史などの海外組をなぜ呼ばないのかな、と疑問に感じていたのである。

しかし、そんな僕の浅はかな考えへの答えを、関塚ジャパンはプレーで明確に見せつけてくれたのだ。

関塚ジャパンにおいて最も重視されるのは、「個人」ではなくて「チーム」である。
このチームが、特に守備面で見せている「組織力」は、本当に素晴らしいの一言だ。
今大会の全チームの試合を見たわけではないけれど、U-23代表でこれほど組織的なプレーを見せるチームは、世界でもほとんど存在しないのではないだろうか。

そのキーマンとしてまず挙げられるのが、吉田麻也・徳永悠平のオーバーエイジコンビだろう。
実際、関塚ジャパンが短期間で変身したきっかけとして、この2人の加入は大きかった。
弱点と観られていたディフェンスのポジションの穴を埋めただけでなく、豊富な経験でチームの精神的な支柱にもなっている。
オーバーエイジ2人の加入で、このチームは「若手のチーム」から「大人のチーム」へと変貌したと言っても言い過ぎでは無さそうだ。

次に中盤の成長株として、僕はボランチの山口蛍を挙げたい。
もともとボランチのポジションはこのチームのウィークポイントだと見られていて、実際にオーバーエイジ枠で遠藤保仁を招集するプランも持ち上がっていたらしい。
予選の頃から山村和也、山本康裕などいろいろな選手がボランチで試されてきたけれど、最終的には山口蛍と扇原貴宏のセレッソ大阪コンビに落ち着いた。

中でも山口の成長ぶりは凄かった。
アジア予選でU-23のレギュラーポジションを確保すると、昨年途中からはセレッソでも扇原と一緒にレギュラーに定着。
そして経験を積むごとに、みるみるその安定感を増して行ったのである。
初戦のスペイン戦でも大金星の立役者の一人になり、スペインのメディアから「日本のマケレレだ」と賞賛されたというエピソードもついた。
いまや、中盤のディフェンスに欠かせない存在だと言えるだろう。

そして攻撃陣では、永井謙佑、清武弘嗣、大津祐樹、東慶悟のカルテット、その全員が大活躍を見せている。

永井はもともと、関塚ジャパンが初めて参加した大会、2010年のアジア大会で得点王に輝くなど、チームの発足時からエースとして君臨していた。
しかしその後は大迫勇也にレギュラーポジションを奪われるなど苦しい時期も経験しながら、今大会で再び大ブレイクを果たす。

また大津祐樹も、5月のトゥーロン国際大会の頃はチームにフィットしきれていない感じもあったけれども、今では持ち前の運動量、強さ、スピード、テクニック、そして何よりも気迫のこもったプレーで、間違いなくチームのキーマンの1人になっている。

東慶悟も以前から献身的で頭脳的なプレーヤーだったけれども、本大会に入ってからは判断のスピードと運動量にさらに磨きがかかったように思う。
そして既にA代表でも活躍する清武弘嗣のサッカーセンスに関しては、今さら言うまでもないだろう。

関塚ジャパンが急成長した背景には、まずは大会前からメンバーを固定したことで、チームの組織力が向上したことが理由として考えられる。
しかし何と言っても大きいのは、選手たち一人ひとりが大会を通じて、見違えるほどレベルアップしたことではないだろうか。

思えば4年前の北京オリンピックで、日本は3戦全敗という最悪の成績で大会を去ることになった。
しかしその時のメンバーたち、本田圭佑や長友佑都、香川真司、内田篤人たちがその後に急成長して、今ではA代表の主力になっている。
また昨年のU-17ワールドカップでも、試合をこなすごとに選手たちがみるみる成長していって、日本はベスト8という好成績を残した。
若い世代の選手たちは、短期間でも急激に成長する “伸びしろ” を持っているということだろう。

そして、代表チームは良い選手を寄せ集めれば良いというわけではなく、あくまでも「チームとしてのまとまり」が大切なのだということを、改めて関塚ジャパンに教えてもらったように思う。
実際、試合後のインタビューなどを観ても、チームの雰囲気はすこぶる良さそうだ。
今の日本であれば、どのチームと対戦しても簡単に負けることはないだろう。

「メキシコ超え」を目指す準決勝

ところで次の準決勝、その相手はメキシコに決まった。
メキシコには直前の親善試合で2-1と勝っているけれども、この時はお互いに選手も多く入れ替えながらのゲームだったので、参考程度に留めておいたほうが良さそうだ。
メキシコはアンダー世代ではここ数年で急激にレベルアップしていて、強いチームには違いないだろうけど、それでも今の日本が勝てない相手ではないはずだ。
永井謙佑と東慶悟の怪我の具合だけは心配だけれども、日本がエジプト戦と同じような集中力を見せれば、必ず勝利できると僕は確信している。

そして、メキシコに勝てば銀メダル以上が確定。
44年前、日本サッカーの歴史を変えたメキシコ・オリンピックの歴史を、いよいよ塗り替える最大のチャンスがやってきた。

選手たちには余計な気負いは感じないでいただきたいけれど、僕たちファンにとっても、「歴史の変わる瞬間」を目撃できるビッグチャンスである。

絶対に見逃せない決戦は、火曜日の深夜25時から。

「メキシコに勝って、メキシコオリンピック超え。」

これをキーワードに、準決勝も全力で応援しましょう、皆さん!!!

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