Nikon D80 Apple
Nikon D80 Apple / Abhijit Tembhekar

大勝した次の試合というのは、緊張感を保つのが難しいものらしい。

吉田弘監督や田中陽子がそう口を揃えた通り、4-1で大勝したメキシコ戦の後に行われたニュージーランド戦は、日本にとってはタフなゲームとなった。
結果的には勝ち点1を拾うことができたけれども、今大会で最初の試練となったグループリーグ第2戦。

そしてこの試合は同時に、個々の選手たちにとっても、大きく明暗を分ける一戦となったのである。

活躍を見せた「明」の選手たち

まずは期待通りの活躍を見せてくれた「明」の選手たちについて触れてみたい。
ここにはやはり、チームの中核である田中陽子と猶本光の2人の名前がまず挙がるだろう。

特に田中陽子は1得点1アシストと結果を残しただけでなく、豊富な運動量で攻撃のあらゆる場面に絡む大活躍。
U-17の頃からチームのキーマンの一人ではあったけれども、このU-20代表ではさらにその存在感を増しているようにも思える。今や田中陽子抜きでは攻撃力が半減してしまうほど、チームに不可欠な存在だと言っていいだろう。

また猶本光も、中盤のコンダクターとして相変わらず安定したプレーぶりを披露。
特に「視野の広さ」という部分では、この世代では頭ひとつ抜けたプレーを見せている。

そして田中陽子・猶本の2人にキャプテンの藤田のぞみを加えた中盤が、このチームの生命線だと言えるだろう。

そのほかで個人的に光っていたと感じた選手は、西川明花、田中美南、柴田華絵のアタック陣と、この日は右サイドバックに入った高木ひかりである。

西川は日本の1点目のシーンでは、右サイドのドリブル突破からのクロスで田中陽子のゴールをお膳立て。2失点した後に横山久美と仲田歩夢のポジションを入れ替えたことで攻撃が中央に偏りがちになっていたチームが、そこからサイドを使えるようになったのも、西川が入ったことの効果が大きかったように思う。

西川は技術も高いけれども、何よりもその積極的なプレースタイルが良い。アタッキングサードのエリアでは躊躇なくドリブル、あるいはシュートを狙っていく姿勢は、ゴールの匂いを感じさせるものだった。
西川はこの試合だけでなく6月のアメリカ戦でも強烈なミドルシュートから田中陽子のゴールを呼び込んでいて、「ゴール」という、サッカーで最も重要なプレーに絡める選手ではないだろうか。

田中美南は先発したメキシコ戦でも再三、右サイドを突破して攻撃の起点となっていた。ベンチスタートとなったこのニュージーランド戦でも、わずか13分間のプレーの中で決定的なチャンスに絡んでいる。
田中美南の魅力といえば、何と言っても「ドリブル」に尽きるだろう。現在はやや持ち過ぎのきらいがあって、せっかくドリブルで突破してもそこからの判断が遅く、チャンスに繋がらないシーンがあるのが課題だけれども、状況判断を磨けば大化けする可能性もある。

そして、メキシコ戦では先発で1ゴールを決めた柴田華絵は、この日はスーパーサブとして30分間プレー。
柴田はこのチームでは(田中陽子のバックアップ層が薄い、というチーム事情もあって)トップ下で起用されることが多いけれど、正直なところトップ下としては視野がやや狭いため、あまり適職ではないなと僕は思っている。
しかし細かな技術はチームでもトップクラスで運動量・突進力もあるので、本来のポジションであるサイドハーフで起用すればその才能がフルに発揮できるはずだ。少なくともサイドのポジションでレギュラー争いをする資格のある選手だと僕は思っている。

また高木ひかりのサイドバック起用は、個人的には「嬉しい誤算」だった。
高木は2010年の U-17ワールドカップでもレギュラーのセンターバックとしてプレーしていて、今大会のメキシコ戦でもセンターバックとして安定したプレーを見せている。それだけに「守備の人」というイメージが強かったんだけれども、このニュージーランド戦では右サイドバックとして何度も積極的なオーバーラップを見せていた。高木のこの日のプレーからは、チーム全体としてもワンランクスケールアップできる可能性を感じた。

課題の残った「暗」の選手たち

それでは逆に「暗」だった選手たちについて。

まずはこの日2失点してしまったディフェンス陣だけれども、早い時間帯での2失点でゲームプランが崩れてしまったことが、苦戦を強いられた直接的な原因となってしまった。

そして、この2失点にはいずれも「ミス」が絡んでいる。
特に2失点目の場面では、2つの大きなミスが重なった。

まずひとつ目のミスは、左サイドで浜田遥がニュージーランドのハンナ・ウィルキンソンに突破され、独走を許してしまったこと。
結果的にここからカウンターを食らってクロスを上げられるところまで行ってしまったので、浜田は無理にボールを奪いに行くよりは、まずディレイして速攻を封じるほうがベターだったように思う。

そして2つ目のミスは、そこからウィルキンソンが上げたクロスの処理を土光真代が誤り、ロージー・ホワイトのシュートに繋げられてしまったこと。
土光は目測を誤ったのか、味方との連携の中で判断を迷ったのかは分からないけれど、結果的にヘディングを「空振り」する格好になってしまい、そこから失点が生まれてしまった。

ただし浜田と土光に関しては、ミスはあったけれども将来の日本を背負って立つ逸材だと僕は思っている。

特に土光真代は素晴らしい。
まだ5月に16歳になったばかりという若さだけれども、ディフェンダーとしてのセンスは突出したものを持っている。鋭い読みでピンチの芽を摘むだけでなく、対人プレーにも強い。さらには正確なフィードで攻撃の起点にもなる。そのプレーからは「サッカーIQ」の高さがヒシヒシと感じられるような気がして、僕は土光のプレーを見るたびに、惚れぼれと見入ってしまうくらいだ。

ただ、今年からベレーザのトップチームに昇格したばかりということで、経験不足なのは致し方がないところだろう。今大会でも素晴らしいディフェンスを見せたかと思えば、不用意なミスでピンチを招くような場面も時折見られていて、この試合ではそれが失点に繋がってしまった。
土光はこの U-20代表にも大会直前に抜擢されたばかりなので、コンビネーションやコミュニケーションの面で課題を抱えていることは充分に考えられる。チームでもダントツの最年少ということで、先輩たちに気後れしている部分もあるのかもしれない。しかしその才能は間違いなく本物なので、ぜひともこの大会を通じて課題を克服していってもらいたいなと思う。

そして続いては攻撃陣。
サブの選手たちが輝いたのとは対照的に、先発の選手たちは精彩を欠いた。

まずは、1失点目のオウンゴールを献上してしまった仲田歩夢。

とは言ってもオウンゴール自体はどんな名選手でも犯す可能性のあるミスなので、それ自体はあまりクドクド言うようなものでもないと僕は思っている。
ただ仲田の場合、本来の攻撃面であまり機能できなかったことが残念だった。

仲田の特徴というと左サイドからの突破力と体の強さということになると思う。それ自体は上のレベルでも充分に通用する可能性があると思うのだけれども、課題はその後のプレーの精度ということになるだろう。左足を得意とする選手だけれども、キックの精度にまだ安定感がないため、せっかくの突破もチャンスに直結しない場面が目立った。
ただ逆に言えば、クロス、シュートの精度をこれから高めていくことができれば、高いレベルでも存在感を示すことができるのではないだろうか。

前半29分で交代させられたことは屈辱だっただろうけれど、この経験をバネに一層の成長を期待したい。

また、個人的には以前から書いているのだけれど、横山久美の伸び悩みが気になる。
横山のミドルシュートは確かにワールドクラスだし、決定力もある。しかしその他のプレー、特に運動量に課題があり過ぎるように思う。少なくとも今のプレースタイルのままでは、「チームへの献身性」が求められるなでしこジャパンに選ばれる可能性は、将来的にも低いのではないだろうか。ミドルシュート1本で通用するほどA代表は甘い世界ではないだろう。

ただしこんなことを書くのも、僕が横山の才能に期待しているからなのだ。
男子の世界も含めて考えれば、努力を怠ったために潰れていった「元・天才」の選手は山ほどいる。横山久美には、そうはなってほしくないと思っている。

そして、1ゴールを挙げたので「暗」というわけではないんだけれども、やっぱりちょっと物足りなかったのがワントップの道上彩花である。
道上の場合、守備ではけっこう走っていたので運動量が絶対的に足りないというわけではないんだけれども、やはりあのポジションの選手にはもっとシュートに絡む回数を増やしてほしいというのは欲張りだろうか。

道上は確かにサイズがあるため、ゴール前に張っているだけでも相手にプレッシャーをかけることができる。そして道上が中央にマークを引きつけたことで、サイドのスペースが空いた効果もあっただろう。
ただし将来を考えた場合、A代表のレベルでは、道上のサイズも相手にとって大きな脅威にはならないだろう。

そう考えるとやはり、ただ張っているだけでなく、より積極的に攻撃に絡むための工夫もほしいところだ。
たとえばA代表で同じポジションを務める大儀見優季は、ボールが集まらない場合には、ある程度ポジションを移動しながらパスを引き出すような動きを入れている。ザック・ジャパンの前田遼一などもこういう動きが上手い。道上もそういった動きを覚えていくことで、より自身のポテンシャルを引き出すことができるのではないだろうか。

明暗を分けた「ふぞろいの林檎たち」。

このように、個人としてもチームとしても、色々な課題と光明が交錯したニュージーランド戦。

ただし2点を先行されながらも追いついたことは、大会を勝ち抜く上では大きな意味があった。
そして何より、こういったゲームを経験することで、選手たちが得た経験値は計り知れないものがあったのではないだろうか。

優勝を目指す日本が、決勝まで最大で6試合を戦うと想定した場合、そのうちの3〜4試合はこの日のような厳しいゲームになるだろう。
しかしなでしこジャパンがそうだったように、そういうシビアなゲームを勝ち抜いていかなくては優勝カップを手にすることはできない。
そしてそれこそがワールドカップであり、そういった試合が選手たちを大きく成長させるのだ。

若きなでしこたちは、現時点での完成度では個々にバラつきのある「ふぞろいの林檎たち」である。
ただし同時に、全員が「磨けば光る」ダイヤの原石でもあるのだ。

この大会を通じて、その才能に磨きをかけることができるのか。

ヤングなでしこたちにはぜひ、このワールドカップで、持てる才能を大きく開花させてほしいと思う。

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