日本代表がパラグアイに負けた後、「優勝以外は意味が無い」と語ったのは本田圭佑だった。

他の代表選手たちが同じ考えだったのかは分からない。
ただ、ワールドカップに出てくるほどの選手たちなのだから、多くの選手達が本田に負けないくらいの向上心と競争心の強さを持ち合わせているのだろう。

そして、日本以上に本気で優勝を狙っていたチーム同士が対戦するのが、3位決定戦である。
「優勝以外は意味が無い」と心底思っていた選手たちに与えられた、優勝の望みが絶たれたあとの罰ゲームのような一戦。

98年のワールドカップで3位決定戦を戦ったオランダのGKエドウィン・ファンデルサールは、「お願いだからFIFAは、こんな試合はもう止めにしてくれ!」と訴えていた。
金メダルの圧倒的な価値に比べて、銅メダルにはほとんど価値を見出されないワールドカップ。それが、オリンピックとの大きな違いの一つでもあるだろう。

しかし、価値観は時代によって変化する。
今回3位決定戦を戦ったドイツとウルグアイは本気(マジ)だった。

若手の勢いに乗って本気で優勝を視野に入れながら、スペインのポゼッションサッカーにねじ伏せられたドイツ。
勝利への執着心とチームワークで、難しい試合を制しながら準決勝まで勝ち上がってきたウルグアイ。

それぞれの立場は違えど、「負けて帰るわけにはいかない」気持ちは共通していた。
優勝こそ逃したものの、両チーム共に自国のサッカー史上でも、稀に見るほどの好チーム。
お互いの「手ぶらでは帰れない」という気持ちがぶつかりあったゲームは、それが3位決定戦であることを忘れさせるほどの白熱のゲーム展開となった。

予想を覆した真剣勝負

トーマス・ミュラーの先制点が決まったとき、僕はウルグアイはこのまま力尽きるのかなと想像した。
なんだかんだ言ってもドイツは強国である。
その歴史から見ても、ウルグアイとは格が違うと言わざるをえない。

3位決定戦という難しい試合であることを考えても、ウルグアイの神憑り的な粘りが発揮されるのは、今回は難しいだろうという思い込みがそこにはあった。

しかし僕はこの後、ウルグアイの試合に賭ける想いを完全に見誤っていたことに気がつかされる。

彼らは心から真剣に勝ちに行っていた。
おそらくウルグアイはこれが決勝戦だったとしても、全く同じ戦いぶりを見せただろう。
それくらいに彼らはマジだった。

そしてその執念は、今大会を通じてウルグアイが何度も見せてきたのと同様にサッカーの神様の心を揺さぶり、ゴールという成果をもって実ることになる。

中盤でボールを奪ってからのショートカウンターから、「ウルグアイのオーランド・ブルーム」ことエディンソン・カバーニがゴールゲット。
勝負強さには定評のあるドイツから、ウルグアイが見事に同点ゴールをもぎ取ったのだ。

そして激しさを増した好ゲームはこの後、今大会のベストゴールの一つになるであろう、スーパーゴールを生むことになる。

美しきブロンドのストライカー、ディエゴ・フォルラン

ディエゴ・フォルランのプレーは、もちろん今までも観たことがあった。

群雄割拠のリーガ・エスパニョーラで、2度の得点王に輝いた名ストライカー。

ただしその「凄み」を、僕がこれまでも正確に理解できていたかというと、恥ずかしながら「NO」としか言いようがないだろう。
マンチェスター・ユナイテッドでは並み居るスタープレーヤーの影に隠れた「地味な選手」、スペインリーグでもなぜサミュエル・エトーを差し置いて彼が得点王をとるのかが分からなかった。
それが僕の、以前までのフォルランに対するイメージである。

しかしこの大会で、フォルランは自らの価値を全世界に証明することになる。

ウルグアイの逆転弾が生まれたのは後半 51分だった。

右サイドからのセンタリングに、ゴール前に走りこんだフォルランが合わせる。
その右足ボレーから放たれた弾道は、1度のバウンドを挟んでゴール右隅に。
ドイツのGKヨルク・ブットは一歩も動けず、ただその軌道がゴールに吸い込まれていく様を見送るしか無かった。

ウルグアイの英雄が放った、観る人間全てを魅了したであろうスーパーゴール。
エースが挙げたこの一発で、何とあのドイツを相手に、ウルグアイが逆転に成功してしまったのである。

ウルグアイの街は大騒ぎだったことだろう。
僕がウルグアイ人の女性だったら失神していたかもしれない。
それはそのゴールの重要性もさることながら、その弾道と、それを放ったフォルランの姿があまりにも美しかったからである。

「ここぞ」という場面で重要すぎるゴールを挙げる、神々しいまでの輝きに身を包んだブロンドのストライカー。
ディエゴ・フォルランがまさに、ウルグアイの伝説になった瞬間だった。

幻に終わった「伝説のゴール」

しかしここで終わらないのがドイツである。
その反骨のゲルマン魂が発揮されるまでに、かかる時間はものの5分で充分だった。
マルセル・ヤンセンのヘディングシュートが決まり、試合はあっという間に振り出しに戻る。

そして試合も残り 10分を切った 82分、CKからのサミ・ケディラのヘディングシュートで、ドイツがシナリオ通りの勝ち越し点を挙げた。

普通の物語ならここでジ・エンドである。
この先、再度の逆転劇が生まれるなどというシナリオを書こうものなら、三流脚本家のレッテルを貼られることを覚悟しなければならないだろう。

しかしサッカーの神様は、そんなC級サッカー漫画も真っ青のチャンスを用意した。
後半ロスタイムも2分を過ぎた時、ウルグアイにゴール前の絶妙な位置でのフリーキックが与えられる。

キッカーはもちろんブロンドの貴公子だ。

今大会でも、直接フリーキックからの得点をマークしている絶対エース。
いやが上にも期待は高まる。

そして一瞬の静寂の刹那。
その右足から放たれた弾道はドイツGKブットの指先をかすめ、クロスバーに乾いた音を奏でた。

あとボール1個ぶん落ちていたら、ワールドカップ史上に残る名ゴールとなっていたであろう幻のシュート。

それが外れた直後にホイッスルが吹かれ、ここで両国のプライドをかけた激闘に、幕が下ろされたのである。

両チームの創造した「フットボールの勝利」

ディエゴ・フォルランは華麗なプレーを見せる選手ではない。

アルゼンチンのリオネル・メッシのような超絶テクニックや、ブラジルのロナウドのような爆発的なスピードとは無縁の選手である。

しかしそれでも、彼の正確なトラップ、シュート、そして溢れるインテリジェンスには、完成されたフットボーラとしての美しさを感じた。
世界広しと言えども、これほど絵になる選手はそうはいないだろう。

そしてこの試合で決めたスーパーボレーと、ラストワンプレーで見せた幻のフリーキック。

僕はその儚き美しさに、94年のワールドカップ決勝を思い出した。
そう、オーバーラップしたのはロベルト・バッジョの姿である。

超人的な勝負強さでチームを牽引し、最後はPKを外して散ったポニーテールのファンタジスタ。
そのイタリアの英雄に負けないだけのオーラを、僕は今大会のフォルランから感じたのだ。
その背中に輝く「10番」のナンバーはまさにバッジョと同じく、選ばれし者だけがまとうことを許された、神々しいまでの輝きを放っていた。

この試合の勝者はドイツである。
しかし、ウルグアイを敗者だと考える人はいないだろう。

大会を通じて最後の最後まで諦めずに戦い続けた彼らの姿は、フットボールの美意識に満ちていた。
これこそが、僕たちの求めているフットボールなのである。

だから、この試合に敗者は存在しない。

あったのは最高のプレーを見せてくれた両チームによる、最高のゲーム。
それはまさに「フットボールの勝利」だったのだと、僕は思った。

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