ある悲劇を悼んで

暑い日々が続いている。

僕の住む大阪も、ここ数ヶ月は猛烈に暑い。
夜も冷房がなければ寝付けないほど、本当に暑い毎日である。

そんな大阪で、最近一つの事件が起こった。
ここ数日間ニュースを騒がせている、大阪・西区の2幼児死体遺棄事件。

風俗店で働く母親が育児を放棄し、3歳と1歳の2人の実子をマンションの自室に放置。
その死亡が確認されたという痛ましい事件だ。

この悲劇の舞台となった現場は、僕の職場からほんの一駅くらいの距離にある。
もっと言ってしまうと、数年前まで住んでいた自宅は、ここから歩いて10分ほどの場所だった。

自分の生活圏内で起こった凄惨な事件。
そして僕にも、犠牲者となった子供たちと、ちょうど同じ年頃の子供がいる。
亡くなった2人のことを思うと、心が痛んだ。

事件が発覚したのは先週だけども、子供たちが亡くなったのは6月の下旬頃だったそうだ。
僕たちがワールドカップに熱狂していたあの当時に、誰にも知られず、食べ物も飲み物も与えられない中、猛暑の室内でひっそりと失われていった2つの命。

そのころ母親は、青いユニフォームを着ながら日本対パラグアイ戦のパブリックビューイングを観に行って、その姿を SNSにアップしていたらしい。
我が子の亡骸を、暗い室内に置き去りにしながら。

腹が立つ以上に、悲しい気分になった。

ワールドカップのお祭り騒ぎの陰で、失われていった命がある。
何ともいたたまれない現実。

サッカーはいったい、何のために存在しているのだろうか?

サッカーはその力で、人々を救うことができるのだろうか?

ふとそんなことを考えた。

もちろんサッカー選手は、医者や警官ではない。直接誰かを救う事はできないだろう。
ただそれでも、サッカーによって救われた人々も、少なからず存在するはずである。

南米のスラム街では、プロの選手になる事で貧困から抜け出せた若者も多い。
アフリカでは、サッカークラブに入る事で全うな教育を受ける機会を得て、ストリートから足を洗う事ができた子供たちもいる。
またリオネル・メッシは、その類い稀な才能とFCバルセロナのバックアップのお陰で、成長ホルモン分泌不全性を克服し、世界最高のプレイヤーになる事ができた。

そして何より、サッカーのお陰で僕たち世界中のサッカーファンが、少しずつ人生に潤いを与えてもらっているのではないだろうか。

サッカーを通じて、あるいはスポーツや娯楽を通じて、人々の日常が少しずつ豊かなものになっていく。
そんな世の中が実現していっているのだと僕は信じたい。

そしてそれらを通じて、未来が少しずつでも、子供たちにとって住み良いものになっていってほしい。
世界中から少しでも多くの、不幸な境遇の人々が救われるようになってほしい。
麻薬や犯罪で身を滅ぼしたり、戦争や暴力で命を落とす少年少女たちが、一人でも少なくなってほしい。

この悲しいニュースを見ながら、そんな事を思った。

亡くなられたお2人のご冥福を、心よりお祈りいたします。

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