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サッカーブログ|No Football , No Life

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Written by ハマジ

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Hampden Park - 2012 Olympic Football (2)Hampden Park – 2012 Olympic Football (2) / daniel.richardson0685

“オリンピック初戦での、まさかの大金星!”

と聞くと、僕みたいなオッサン世代は真っ先にアトランタ・オリンピックを思い出してしまう。

前園真聖、中田英寿、川口能活たちが率いたU-23日本代表が、ベベット、リバウド、ロベルト・カルロス、”怪物”ロナウドらを擁するブラジル代表に 1-0で勝利した試合。

「99%勝てない」と思われていたゲームで大金星を挙げて『マイアミの奇跡』と呼ばれたこの試合は、日本サッカーの歴史に残る一戦だった。

しかし、同じようにワールドカップ優勝国を1-0で破ったこのスペイン戦を「グラスゴーの奇跡」と呼ぶことには、僕はちょっと抵抗を感じてしまう。

なぜならこのスペイン戦、「奇跡」と呼ぶにはあまりにも、日本が『勝利に値した』ゲームだったからだ。

フル代表とは違ったスペインU-23代表

優勝候補のスペインは、確かに上手かった。
欧州チャンピオンのチェルシーで10番を背負うフアン・マタ、マラガでプレーするイスコらを中心としたメンバーはテクニシャン揃いで、フル代表を彷彿とさせる華麗なパスワークに、立ち上がりの日本は連続してチャンスを創られてしまう。

ただしよくよく見てみると、スペインのフル代表とこのU-23代表とは、似てはいるけれど「全くの別物」でもあったのだ。

ワールドカップで優勝してユーロでも2連覇を達成、「史上最強チーム」とも言われるスペインのA代表。
その特長は「華麗なパスワークを主体にしたポゼッション・サッカー」である。
そしてこのオリンピックに臨むU-23スペイン代表も、やろうとしていることはA代表のそれに近い。

それでもスペインのA代表とU-23代表の間には、決定的な違いがあった。
それは、「母体としているチームがあるかどうか」という点である。

一般的に、一緒に練習できる時間が少ない代表チームでは、パスなどのコンビネーションを熟成させるのは難しいと言われている。
それでもスペインA代表が驚異的なパスサッカーを披露することができていたのは、「FCバルセロナ」という母体があるからだった。
シャビ、イニエスタ、セスク、ブスケッツなど、カンテラ(下部組織)時代からバルサのポゼッション・サッカーを体に染み込ませた選手たちを中心に据えることで、バルサの超人的なパスワークをそのまま代表チームに移植したのが、スペインのA代表である。

しかし、このU-23代表はフル代表と同じサッカーを目指してはいても、バルサの選手を主体にはしていない。
この日のスタメンでバルサのカンテラ出身の選手は、両サイドバックのジョルディ・アルバとマルティン・モントーヤの2人だけ。
本来ならもう一人、中盤の要になるはずだったチアゴ・アルカンタラがいたけれど、故障で今大会にはエントリーしなかった。

結果、今回のU-23はスペインらしいテクニックのある選手たちが集まったけれども、「母体を持たない」いたってノーマルな代表チームになったのである。

スペインのフル代表やバルセロナが際立っている点は、何と言ってもそのパスワーク。
特に、相手のプレッシャーが強まるアタッキングサードのエリアでも高速パスを回すことのできる、圧倒的なコンビネーションだ。

しかし今回のU-23代表は、中盤以降のディフェンディングサード、ミドルサードでこそ華麗なパスワークを見せていたけれど、アタッキングサードで同じリズムのパス回しができるほどの組織力はなかったのである。

それに対して日本は、スペインをよく研究していた。

後方ではある程度ボール回しをさせながら、中盤に侵入してきた相手には速いプレッシャーをかけていく。
しかしラインは上げすぎず、ゴール前にはしっりとブロックを築いて、ドリブル、パスでの侵入を阻止する。
フィジカルでは日本とそう変わりのないスペインだけに、ゴールに近づけさえしなければ、ミドルシュートやハイボールはそれほど怖くはなかった。

そしていったんボールを奪ったら、前線の永井謙佑、清武弘嗣、大津祐樹たちのスピードを活かして鋭いカウンターを仕掛ける。

日本がこの日、狙い通りのサッカーを展開できたことのキーマンとしては、オーバーエイジの2人、吉田麻也と徳永悠平の存在は不可欠だっただろう。
スペインの攻撃に慌てることなく対処した上で、さらに正確な繋ぎのパスでカウンターの起点にもなる。
チームに合流して間もないことを忘れてしまうほどフィットしていたこの2人を抜擢したことは、関塚監督のファインプレーだと言っていいと思う。

そして攻撃陣では前半、特に目立った動きを見せていた選手の1人が大津祐樹だった。

5月のトゥーロン国際大会からその後のテストマッチにかけて、大津は左サイドハーフと、本来のポジションとは違うワントップという2つのポジションで起用されていた。
ワントップに入った時も、体の強さを活かしてそれなりのプレーを見せていた大津だったけれど、やはりどこか「迷い」が感じられるような部分もあったというのが実際のところだろう。

しかしこのスペイン戦での大津は、自身が最も得意とする左サイドのポジションに入って、気合十分のプレーを披露する。
攻撃面だけでなくディフェンス面でも、豊富な運動量でプレスの起点となっていた。

そしてその大津祐樹が34分、コーナーキックから挙げた1点が、日本の決勝点になった。

さらに42分、相手DFイニゴ・マルティネスのトラップミスを見逃さず、そこにプレッシャーをかけた永井謙佑がボールをかっさらう。
たまらず永井を倒したマルティネスにレッドカードが出てスペインは10人に。
これで、スペインの集中力は完全に「切れた」。

ラテン系の国民性を持つスペイン人は、調子のいい時にはノリノリで攻めにかかるけれども、いったん調子が悪くなると一気にテンションが下るという気質を持っている。
後半、集中力を失ったスペインは、もはや「サッカーの上手いサンドバック」状態。
何度も日本のスピーディーなカウンターの餌食になって、特に永井謙佑の爆発的なスピードから、次々と決定機を創られていった。

スペインの守護神、ダビド・デ・ヘアの好セーブ(と、日本のシュートミス)もあってスコアは1-0で終わったけれども、それこそ5点、6点入っていてもおかしくないほどの、日本の完全な「勝ちゲーム」だったと言えるだろう。

そしてそういう展開に持ち込んだのは、日本の選手たちの素晴らしいプレーと、監督・スタッフ陣の見事な作戦だったのである。

関塚ジャパンのメダルへの道のりは

ともかく優勝候補のスペインを下したことで、戦前はほとんど期待されていなかった「日本のメダル獲得」も現実味を帯びてきた。
ここで日本がメダルを狙う場合、絶対条件になりそうなのが「グループリーグの1位通過」である。

グループDの日本が仮に2位でグループを通過した場合、決勝トーナメント1回戦の相手はグループCの1位。
つまり、順当ならブラジルということになる。

僕はブラジルとエジプト戦の中継も見たのだけれど、正直言ってブラジルの強さはちょっと次元が違う。
ネイマール、フッキ、チアゴ・シウヴァ、ラフェエウ、マルセロといったビッグネームに加えて、チェルシー入りが決まった10番のオスカーや、187センチの大型センターフォワード、レアンドロ・ダミアンなど若手も実力派ぞろい。
さらにアレシャンドレ・パトやガンソなどのスター選手が控えに回るほど、選手層も抜群の厚さを誇る。

エジプト戦では結果的に3-2の辛勝だったけれども、ガチンコ勝負した前半では、ブラジルがエジプトを3-0と圧倒していた。

日本としても、1回戦でこのブラジルと当たることは何としても避けたいところだろう。

それに対して、日本が1位通過に成功した場合は、グループCのブラジル以外の国と対戦することになる可能性が高い。

グループCのその他のチームはベラルーシとニュージーランドがいるけれども、この両チームは直前のテストマッチで日本が対戦している相手だ。
その時のプレーを見る限りでは、この2チームが2位でグループを突破してくる可能性は低そうである。

となると、ブラジルに初戦で敗れたけれども好チームだったエジプトが、2位で通過してくると見るのが妥当だろう。

ちなみに日本はエジプトとも5月のトゥーロン国際大会で対戦していて、この時は2-3で敗れている。
ただし、この時は日本もベストメンバーではなかったのであまり参考にはならないだろう。
エジプトは地力のある好チームだけれども、ブラジルと比べれば対処できる余地はかなりあると見て良さそうだ。

そして1回戦でエジプトに勝てればもうベスト4。
ここまで来れば、単純計算でメダルの確率は75%に跳ね上がる。
スペインに勝ったというメリットを最大限活かして、ここは是が非でもグループ1位通過を目指さなくてはいけない。

そこで1位通過の条件となってくるのは、当然ながらグループリーグの残り2戦で、キッチリと勝ち点を稼ぐことだ。
モロッコ、ホンジュラスと続く2連戦で1勝1分け、「勝ち点4」を獲得できれば日本の1位通過が確定することになる。

ちなみにモロッコ対ホンジュラス戦もテレビ観戦したのだけれど、どちらも実力的には日本よりも「格下」と見て良さそうだった。
ただしスペインに勝ったことで、もちろん両チームとも日本を相当警戒してくることが考えられる。

どちらのチームも技術的にもフィジカル的にも悪くはないけれども、逆に突出した武器もない。
ただし、2-2で終わった初戦で両チームが挙げた得点は、そのどれもがカウンターとミドルシュートが絡んだものだった。
つまり、日本が押していたとしても、展開を無視して得点を奪う「1発」を両チームとも持っている。

さらに、両チームともディフェンスを固めてからカウンターを繰り出すプレーが得意なので、ゴール前を固める「引きこもり戦術」に出てくる可能性が高い。
その場合、日本はスペイン戦と違って永井のスピードを活かすことが難しくなってくる。
そうなってくるとサイドをこじ開けるドリブラーや、空中戦からゴールを狙えるエアバトラーの存在がクローズアップされてくるだろう。
次の2戦では、宇佐美貴史、齋藤学、杉本健勇あたりにも出番があるかもしれない。

関塚ジャパンがいま、最も警戒すべきもの

このスペイン戦で、仮に日本が下馬評通りに負けていたとしたら、グループリーグは良くて2位通過ということになっていた。
そうすると1回戦でブラジルと当たることになって、ここで日本のオリンピックは終わっていた可能性が高い。

それが、一気にメダルを現実的な視野に入れられる状況になったのだから、このスペイン戦の勝利は単なる1勝以上の価値があった。

ただし、もちろん大会はまだ始まったばかりだ。
日本にとって、いま一番気をつけなければいけないのは「油断」だろう。

アトランタ・オリンピックで『マイアミの奇跡』を起こした時の日本も、続くナイジェリア戦で敗れたことが響いて、結局グループリーグを突破することができなかった。

また今回の日本と同じように、2010年のワールドカップで初戦のスペインに大金星を挙げたスイス代表も、その後の2試合で1分け1敗と勝ち点を落としたことで、グループリーグ突破に失敗している。

上の2つの例に共通しているのは、「初戦の大金星のあと、2戦目で黒星を喫してしまっている」ことだ。
大勝利の後はどうしても気が緩んでしまう部分もあると思うけれども、関塚ジャパンには何とか集中をし直して、モロッコ戦では最低でも勝ち点1を奪ってもらう必要がある。
そうでなければ今回のスペイン戦の勝利も、全く無意味になってしまうと言っても言い過ぎではないだろう。

また、心理的には次のモロッコ戦が一番難しいだろうけれども、対戦相手としては第3戦のホンジュラスがモロッコ以上の曲者ではないかと僕は見ている。

技術的に上なのはモロッコのほうだけれども、ホンジュラスはより徹底的なカウンター戦術をとってくるチームだ。
日本はアジア予選でも中東勢のカウンター戦術に苦しめられたけれども、ホンジュラス戦で同じような展開になることは充分に考えられる。

日本はとにかくこの2試合で、油断せずにキッチリと勝ち点を獲ることに集中してほしい。

逆にそれを1つ1つ積み重ねていくことができたら、日本のメダル獲得も決して夢ではないだろう。

『マイアミの奇跡』を起こしたアトランタ世代、「ドリームチーム」と呼ばれたシドニー世代を経て、グループリーグで敗退したアテネ世代、北京世代は『谷間の世代』と揶揄された。

そして今回のロンドン世代は、谷間の世代以上に期待されない『空気みたいな世代(=エアー世代)』と命名したくなるくらい、大会前の存在感は薄かった。

しかしこの快勝劇で、彼らは実力でその評価をひっくり返したのである。

メダルまで、最短ならあと4試合。

こうなったらもう、そこまで突っ走っちゃってくれ!関塚ジャパン!!

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なでしこJAPAN [2012年 カレンダー]

「ここに立てるのは選ばれた18人だけ。みんなに大切な思いがあって、大切な人がいると思う。ここからの6試合を、お互いのために戦おう」。

“言葉” とはときに、人の心を動かすものだ。

ちなみに中学時代に『スクールウォーズ』の再放送を見て、主人公・滝沢賢治の発した「ラグビーとは『ワン・フォア・オール、オール・フォア・ワン(一人はみんなのために、みんなは一人のために)なんだ!!』の言葉に感動し、その影響で高校はラグビー部に入ってしまった僕がその一例である。

しかしこう振り返ると、なんとも単純な人生を歩んできてますなぁ〜……。

それはさておき、オリンピック初戦に臨むロッカールームで、なでしこジャパンはキャプテン・宮間あやの冒頭の言葉でひとつになった。

ワールドカップの優勝から一年の時を経て、いよいよ迎えた『佐々木ジャパン』の集大成の舞台。
そのロンドン・オリンピックが、ついに開幕したのである。

日本を圧倒したフランスの脅威

今回のカナダ戦を考察するにあたっては、この1週間前に行われた親善試合・フランス戦に触れる必要があるだろう。

私事ながら本業のほうが忙しかったのでフランス戦の記事は書けなかったんだれども、このフランス戦で0-2と完敗したことで、ワイドショーなどでは「大丈夫か?なでしこジャパン!!」とメダルを不安視する報道が急増したのはご存知のとおりである。

ちなみに僕はこの試合、リアルタイムの放送は仕事をこなしながら「流し見」していたのだけど、その時には「これはちょっとマズイなあ」という印象が強かった。
1-4で敗れた6月のアメリカ戦の記憶と、この敗戦がシンクロしたからである。

しかもアメリカ戦の時は本番のオリンピックまでまだ1ヶ月以上あったけれども、フランス戦の時点では開幕まで1週間を切っていた。
この時点でアメリカ戦と同じような負け方をしているのなら、本番では大変なことになるのでは…という不安が頭をよぎったのだ。

ただ、その後にVTRで改めて確認をしてみると、僕のフランス戦の印象は少し変わった。

0-2の完敗には違いないけれど、フランス戦でのなでしこの戦いぶりは、決して悪い面ばかりだったわけではない。

この試合では立ち上がりから24分に失点するまでの時間帯に、フランスのハイプレスと、そこから繰り出されるショートカウンターの威力に日本は圧倒されてしまった。
そのため「フランス強し」の印象が強烈に残ってしまったけれども、実際には失点のあとから72分に2点目を奪われるまでは、基本的に日本のペースでゲームが展開していたと言っていい。

1点目の直後には大儀見優季がGKと1対1になる決定機を迎えているし、その後も宮間あやのFKから澤穂希がポストを叩くシュートを撃っている。
その他にも決定機は複数回あったので、そのうちの1本でも決まっていれば、試合展開は大きく変わっていた可能性が高い。

もちろん、立ち上がりの時間帯に圧倒されてその勢いで失点してしまったので、フランスに主導権を握られた末の「完敗」だったことは間違いないだろうけれども、場所がフランスのホームであったこと、なでしこジャパンはハードな国内合宿をこなしたばかりで疲労のピークにあったこと、フランスに到着してから中2日しか経っていなくて時差が解消されていなかったことなどを考えれば、フランスと言ってもイーブンな状態で戦えば、決して勝てない相手ではないとも思えた。

ただ、そうは言ってもフランスが強敵であることには違いはない。
中でもインパクトが強かったのは、黒人選手たちの圧倒的な身体能力だろう。

FWのマリー・ローラ・デリ、右ウイングのエロディ・トミのスピードや、DFウェンディ・ルナールの高さは驚異的だったし、それをルイサ・ネシブを始めとするテクニシャンたちが操るアタックは、日本にはない迫力に満ちていた。

しかし、身体能力の差と同じくらい、僕がこのフランス戦で日本との「違い」を感じたのは、「ワンタッチパスの数」である。

アメリカ戦でもフランス戦でも、日本がまず苦しめられたのは立ち上がりの時間帯で受けた猛烈なプレスだった。
この2試合で、「日本を攻略するためにはとりあえずハイプレスを仕掛けるのが良い」、と諸外国にインプットされた可能性は高い。

日本としてはそのハイプレスをかいくぐるためには、ある程度耐えしのぐ時間帯をつくらざるを得ないのは仕方がないところだろう。
しかし、そのプレスが多少緩まってきた時には、日本が逆にそのプレスをかいくぐってチャンスを創っていく必要がある。

その際にキーポイントになるのは、「パスワークを速くすること」に尽きるだろう。
具体的にはワンタッチ、ツータッチのパスを多く出していくことが、なでしこジャパンの攻撃の鍵になってくるはずだ。

惨敗したアメリカ戦では相手のプレスがきつすぎたこともあって、このワンタッチ・ツータッチパスが出る場面はかなり限られていた。

そしてその後のスウェーデン戦、オーストラリア戦ではプレスこそ緩くなったけれども、なでしこのワンタッチパスの数はそれほど増えてはこなかった。

そうして迎えたこのフランス戦。
相手のフランスは随所で華麗なワンタッチパスを披露していて、そこから生まれるリズムは黒人選手たちの身体能力と同じくらい、フランスの大きな武器になっていたように思う。

対するなでしこジャパンは、身体能力以前にこのワンタッチパスの数で、フランスに水を開けられてしまっていた。

ただし、なでしこからワンタッチパスが失われてしまったのには理由があるはずだった。
実際、以前のなでしこジャパンはワンタッチパスをもっと頻繁に繰り出していたし、3月のアルガルヴェ・カップから4月のキリンチャレンジカップまでの好調時の得点シーンを振り返っても、ワンタッチパスを絡めた得点が多いことが分かる。

なでしこジャパンからワンタッチパスが減った一番の理由は、やはりコンディション不良ではないかと僕は考えている。
ワンタッチパスが繋がらない、というのはパスの出し手だけの問題ではなくて、「受け手」が良い場所に動けていないことが大きい。
つまりオフザボールの動きが少ないということになるのだけれども、それを支えるのはまず「運動量」だ。
時差や合宿疲れなどのコンディション不良が原因となって運動量が低下していたことが、なでしこからパスワークが失われた大きな要因だったのではないだろうか。

しかしこのフランス戦でも、日本も良い時間帯にはワンタッチ、ツータッチのパスが出てきてはいた。

一番象徴的だったのはTV解説でも触れられていたけれども、前半42分、大野忍がフリーキックをもらったシーンである。

最終ラインの熊谷紗希から出たボールを、阪口夢穂、澤穂希、川澄奈穂美と3本のワンタッチ、ツータッチパスで繋いで、最後は大儀見優季がスルーしたボールを受けた大野忍が、バイタルエリア正面でファウルをもらう。

そして、これで得たFKを宮間あやが蹴り、ボールは右のポストを叩いた。
さらにそのリフレクションに反応した澤が逆サイドを狙ったものの、再びポストに当たり、けっきょくノーゴールとなったシーン。

得点には至らなかったけれども、この試合で一番ゴールに近づいた瞬間。
そのプロセスに日本のワンタッチ・ツータッチでのパスワークが絡んでいたのは象徴的だった。

そしてそのパスワークの片鱗が垣間見れたことに、僕は「なでしこ復調」を感じたのである。

カナダ戦で見せた快勝劇

そんなフランス戦を終えて、ついに迎えたオリンピック本大会。

初戦の相手・カナダとの過去の対戦成績は3勝3分3敗と全くの五分。
カナダはFIFAランキングでも7位につける強豪だ。

逆に言えばビッグトーナメントの初戦で、日本の状態を計るには格好の相手でもあった。

カナダはアメリカと同じように、立ち上がりから早いプレッシャーを仕掛けてくる。

しかしこの試合は、アメリカ戦と同じような展開にはならなかった。
なでしこジャパンはそのプレスをかいくぐり、カナダを相手に確実にチャンスを創り出していったのである。
そしてそこには、蘇った “スピーディーなパス回し” があったのだ。

アメリカ戦、フランス戦では激しいマークにあい、パスの供給源として機能しきれなかった澤穂希と阪口夢穂のドイス・ボランチが、このカナダ戦では大活躍。
この2人を軸に速いパスサッカーが復活したことで、日本は本来の輝きを取り戻していく。

そして33分、その素晴らしいパスワークから先制点は生まれた。

左サイドの澤のスローインから大野、澤、再び大野と繋いで、ボールキープした大野がヒールで出したパスから、裏に抜け出したのは川澄奈穂美。
川澄が角度のないところからのシュートを見事に決めて、日本が 1-0と先制に成功する。

さらに44分には、左サイドバック鮫島彩からのクロスから、宮間あやが珍しくヘッドで決めて 2-0。

そして後半のカナダの反撃を1点に抑えたなでしこジャパンが逃げ切って、まずは「勝ち点3」という上々のスタートを切ったのである。

日本は1位通過を目指すべきか?

この日の前半の日本は、ほぼ文句なしの仕上がりだった。

後半は少し運動量が落ちたけれども、まだ初戦だということを考えると、ここからコンディションは上がっていくだろう。
日本はコンディションのピークを決勝トーナメントに合わせているはずなので、狙い通りに行けば最高の状態に仕上がるのはグループリーグが終わったあとになるはずだ。

ところで今大会は、組み合わせの面でひとつ話題になっていることがある。
日本が所属するのはグループFだけれども、ここを1位で通過した場合、決勝トーナメント1回戦で当たるのがグループGの2位ということになる。
そしてグループGに所属するのがほかでもない、日本がテストマッチで完敗したアメリカとフランスなのだ。

これを受けてメディアやネット上では、「日本はあえて(アメリカ・フランスとの対戦を避けられる)グループ2位を狙うべきだ」という意見も上がっている。
2位通過した場合でも、トーナメント1回戦で当たるのはグループEの2位のチームなので、グループ首位との対戦は避けられる。
なるほど、そう考えると確かに一理あるアイディアだ。

ただ個人的には、2位抜けを狙った場合でも、それはそれでデメリットも発生してしまうような気がするのである。
一番気になるのは、「2位通過を狙う=勝ち点をわざと落とす」ことで、日本の士気が下がってしまうことだ。

冒頭の宮間の言葉からも分かるように、スポーツというのはメンタルな部分というのが結果を大きく左右するものだ。
特になでしこジャパンは昨年のワールドカップでも、ドイツやアメリカといった強豪にガムシャラにぶつかっていったことで、不可能と思われた勝利を挙げ「優勝」という結果を残すことができた。

日本人はただでさえ駆け引きが上手くない国民性なのに、下手に勝ち点計算などしようとすると、逆に自滅に繋がってしまう気がするのである。

さらに言えば2位通過をしたとしても、決勝トーナメント1回戦ではブラジルかイギリスと当たる可能性が高い。

なでしこジャパンはブラジルには4月の親善試合で4-1と快勝している。
しかしこれはホームでの試合だった上に、ブラジルは現在の実質的な “世界最優秀選手” であるエース、マルタを欠いていた。

なでしこジャパンはマルタのいるブラジルとは5年前の2007年に対戦しているけれども、その時からは両軍のメンバーも変わっているし、マルタのプレーも進化しているだろう。
もしオリンピックでブラジルと対戦することになれば、なでしこジャパンにとっては「未知のチーム」との対戦に近い可能性がある。
となると、これはこれでリスキーな対戦カードじゃないかという気がしてしまうのだ。

またイギリスが来た場合には、今度は開催国が相手ということで「完全アウェー」の戦いを強いられることになる。
しかもイギリスの母体をなすイングランドには昨年のワールドカップでも0-2で完敗していて、日本は相性が良くない。

そう考えると、たとえ2位通過したとしても、それほど大きなメリットは無いのではないかと僕は思うのだ。

ただそれ以前に、そもそも佐々木則夫監督が、そういった駆け引きを打つタイプの監督ではないようにも思える。

佐々木監督は昨年のワールドカップでも、グループリーグで2連勝して決勝トーナメント進出を決めた後の第3戦・イングランド戦で、(控えメンバーを試すことなく)前2戦と同じメンバーを使って「勝ち」に行った前例がある(そして結果は負けたんだけども)。
それくらい、チームとしての「一体感」や「勢い」を大切にする監督なのだとも言えるだろう。

そう考えると、このオリンピックでもストレートに1位通過を狙いに行く可能性が高いと僕は見ている。

しかし考えてみれば昨年のワールドカップでも、ドイツ、アメリカといった「絶対に勝てない」と思われた相手とのゲームで勝利したことで、日本は優勝までたどり着くことができた。
今回のオリンピックでも金メダルを狙うのであれば、こういった「修羅場」を最低でも2回程度はくぐり抜ける必要があるはずだ。

僕の予想通りに日本が1位通過をしたとしたら、最初の “修羅場” は決勝トーナメント1回戦でやってくる。

その場合、今のところ対戦する可能性が一番高そうなのはフランスになるだろう。
なでしこジャパンにとっては、先日の雪辱を晴らす「リベンジマッチ」も兼ねた一戦になる。

フランスは間違いなく強敵なので、もし対戦することになれば相当にタフな試合が予想される。
しかし逆にこの山を超えれば、メダルはもうすぐに手の届くところまでやってくる。

試合は日本時間で金曜日の20時からだということも考えると、これは日本中が注目する大一番になるかもしれない。
いろんな計算を抜きにして考えれば、いちサッカーファンとしてはぜひ、こんな試合を見てみたいという気持ちもあったりするのだ。

なでしこジャパンの迎えた「集大成」

いずれにしても、もうオリンピックの戦いの火蓋は切られた。

しかも今回は、ただのオリンピックとは違う。
佐々木監督や一部のベテラン選手たち、そしてもしかしたら澤穂希にとっても、最後の大会になるかもしれない “集大成” のオリンピックである。

まずは監督、スタッフ、選手たち、その全員にとって悔いの残らない戦いをしてほしい。
その先に「メダル」という結果が待っていれば、こんなに素晴らしいことはないだろう。

僕は1年前、日本サッカーを初めて “世界チャンピオン” に導いてくれた彼女たちの戦いに、心の底から感動を味わった。
20年間サッカーファンをやってきて、本当に良かったと思えた瞬間だった。

そしていま、そのチームの最後の勇姿を、しかと見届けたいと思っている。

例えどんな結果に終わったとしても、それで彼女たちの偉業が色褪せることは、決してないはずだ。
だからなでしこジャパンには外野の雑音を気にせず、とにかく全力で戦ってきてほしい。

そしてそんななでしこジャパンを全力で応援することが、僕たちファンにできる、彼女たちへの最大の「恩返し」になるだろう。

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