「2部から昇格したばかりのチームが優勝するなんて、まずあり得ない。」
常識的に考えれば、それが普通の考え方だろう。
それでも、ヨーロッパでは何度かそんなアンビリーバボーな出来事がおきている。
だから日本で同じことが起こったとしても、それは決してあり得ないことではない。
現在J1で首位を走る柏レイソルは、まさにそんな “アンビリーバボー” なチームだ。
今年J2から昇格したばかりでありながら、並み居る強豪チームを抑えて、6節終了時点で堂々の首位を走る。
もちろんシーズンはまだ始まったばかり。
それでも柏のスタートダッシュには、何かしらの理由があるはずだった。
J1を凌駕した柏レイソル
前節首位の柏レイソルと、5位につけていたアルビレックス新潟。
勝ち点はそれぞれ 12と9。
数字上は大きな差はなく、J1での経験値が高く、ホームで戦えるアルビレックスがやや有利と見てもおかしくはないシチュエーション。
しかしゲーム開始早々から、ペースをつかんだのは柏レイソルである。
柏はJ2時代から培った巧みなパスワークでボールを支配する。
それに対して、新潟は中盤も含めたバランスの良い守備でこれに対抗。
さすがの安定感で、柏に簡単には決定的チャンスをつくらせない。
しかしそれでもポゼッションに優る柏は、真綿で首を絞めるようにジワジワと、新潟の守備陣を追い詰めていった。
そしてゲームが動いたのは 23分。
左サイドのスローインからの混戦の中、柏のジョルジ・ワグネルが巧みな浮き球のコントロールで2人をかわすと、ボールのバウンド際をハーフボレー気味のシュート。
これが見事に決まって、柏が先制点をゲットする。
前節まで無敗と好調ながら、この得点で今シーズン初めて追う立場となったアルビレックス新潟は、これをきっかけに攻撃面での課題を露呈することになった。
守備のバランスの良さとは対照的に、攻撃のバリエーションの少ないアルビレックス。
センターバックの鈴木大輔が巧みなロングフィードを見せ、両サイドバックの藤田征也、酒井高徳が時おりオーバーラップからチャンスをつくるものの、裏を返せばそれ以外にはこれと言った攻撃のオプションが見当たらない。
あとは速攻と強引な中央突破でしか攻め手が見えず、柏の GK菅野孝憲を慌てさせるような場面はほとんど見られなかった。
対する柏レイソルは、レアンドロ・ドミンゲスを中心とした中盤の連携と、北嶋秀朗の体を張ったポストプレーという攻撃の軸がハッキリしていて、空いたスペースには FW田中順也だけでなくサイドバック、ボランチまでもがどんどん顔を出していく。
その連動性のある攻撃は極めて効果的で、どちらがJ2上がりのチームだか分からないほど、その完成度はアルビレックス新潟を凌駕していた。
レイソルの勢いは後半に入っても衰えず、 61分と 81分にさらに加点。
終わってみれば 3-0の大差をつけて、J1の常連チーム・アルビレックス新潟を一蹴したのである。
成るか?柏のアンビリバボー
この日の戦いぶりを見る限り、柏レイソルの強さはフロックではない。
日本を良く知る名将・ネルシーニョがおよそ2年をかけて創りあげてきたチームは特に攻撃面での完成度が高く、それはJ1でも充分に機能していると言えるだろう。
ネルシーニョは 2009年にチームをJ2に降格させた監督でもあるけれども(ただしこの年はシーズン途中からの指揮)、続くJ2で過ごした1年の間に、驚くほどにチームを成熟させてきた。
これは、監督を信じて続投させたフロント陣の英断とも言えると思う。
と言ってももちろん、シーズンはまだまだ長い。
レイソルがこのままシーズンの終わりまで突っ走って「アンビリーバボー」を実現させるかどうかを考えるのは、まだ早計だろう。
ただそれでも、柏レイソルのサッカーの完成度には疑いの余地はない。
レイソルが今シーズン前半の “台風の目” になることは間違いなさそうだ。
[ 関連エントリー ]