名付けて『香川祭り』。
一瞬、デパートの物産展でオバちゃんが「食べてってや〜。」と手打ちうどんを振る舞うような絵を想像してしまいそうなフレーズである。
しかしこの言葉が踊ったのは百貨店のチラシではなく、ボルシア・ドルトムントの公式ホームページの上だった。
『カガワ・フェスティバル』と銘打たれたのはブンデスリーガ第19節、ボルシア・ドルトムント VS ホッフェンハイム戦。
この試合で2ゴールを決めて主役になった香川真司に、クラブから最大級の賛辞が贈られたのである。
復活の『カガワ・フェスティバル』
昨シーズンの今ごろ、香川真司はブンデスリーガで最も重要なプレイヤーとなっていた。
当時、首位に立っていたドルトムントを “アメージング” なプレーの数々で牽引し、リーグ前半戦のMVPに輝いた香川。
しかし日本代表として参加したアジアカップで負った骨折により、その命運は暗転してしまう。
リーグ後半戦をほぼ棒に振ると、復帰後も本来のプレーを取り戻すのには長い時間が必要だった。
今シーズンも変わらずドルトムントの主力ではあったものの、今季前半戦の香川は昨シーズンに比べれば、やや印象が薄かった感は否めない。
しかしシーズンも折り返しを迎えたこの時期、いよいよ香川真司は、その持てる輝きを取り戻したのである。
前節ハンブルガーSV戦で芸術的なスルーパスからのアシストを決めて復調を印象づけた香川。
そして今節ホッフェンハイム戦で、ついにその勢いが爆発する。
試合は序盤からドルトムントの一方的とも言っていいペース。
ターゲットマンのロベルト・レヴァンドフスキにボールを当てて、セカンドボールを拾った2列目がチャンスを広げていく戦術の中で、香川も攻撃のキーマンとして積極的にボールに絡んでいった。
そしてまずは前半16分。
ここから『カガワ祭り』の口火は切って落とされた。
ホッフェンハイムGKのルーズなパスを、ドルトムントがインターセプト。
そのこぼれ球を拾った香川真司が勢いに乗ったドリブルで斬り込んで1人をかわすと、次の瞬間にはGKと1対1のような状況に。
このチャンスで香川は、ニアサイドのゴール隅に冷静にシュートを蹴り込んでゴールゲット。
まるでリオネル・メッシを彷彿とさせるような見事なドリブルシュートで、ホームのドルトムントが1-0と先制に成功した。
しかし、この日はキレキレだった香川の勢いはまだまだ止まらない。
続く31分。
香川のインターセプトを起点にドルトムントがカウンターアタックを仕掛けると、右サイドで香川とのパス交換から抜けだしたヤクブ・ブラスチコフスキからのクロスを、ファーサイドで合わせたケヴィン・グロスクロイツが押し込んで2-0。
さらに後半に入った55分。
香川真司が自らドリブルで持ち上がってつくったチャンスから、グロスクロイツとの完璧なワンツーパスが決まる。
そしてそのリターンから再び香川が決めて3-0。
これでゲームは決まった。
その後に1点を返されたものの、最終的には3-1のスコアでボルシア・ドルトムントが快勝。
首位を走るバイエルン・ミュンヘンと同勝ち点で並ぶ2位の座をがっちりキープして、2連覇に向けて好位置を死守したのである。
「リベンジ」をかけた後半戦
シーズン当初は黒星が先行する時期もあって、好スタートを切ったとは言えなかったボルシア・ドルトムント。
しかしその後は調子を上げてきて、優勝した昨シーズンの強さを取り戻しつつある。
そしてそんなチームの復調と歩調を合わせるように、香川真司のプレーにも本来の鋭さが蘇ってきた。
現在の香川真司は体のキレが半端ではない。
もともとドリブルの得意な選手ではあったけれども、いまの香川はさらに動きのシャープさに磨きがかかっているように思う。
それは時にリオネル・メッシを想起させるほどだと言ったら言い過ぎだろうか。
以前よりも体幹が強くなってボディバランスが増していることがその理由かと個人的には感じているのだけれども、いずれにしても最近の香川真司が、キャリアの中でもトップクラスのパフォーマンスを見せていることは間違い無いだろう。
この試合の2ゴールで今季通算6点目をマークした香川。
このペースが続けば今シーズンは2ケタ得点の大台に乗り、ブンデスリーガでの自己ベストを更新することになりそうだ。
昨シーズンは前半戦に最高のパフォーマンスを見せながらも後半戦を棒に振ったことで、最終的な印象があやふやになってしまった感があったけれども、今季にシーズンを通して活躍することができれば、その評価も確固たるものになるだろう。
そしてそこに「2連覇」という肩書きが付いてくれば、なお良しである。
香川真司は迎えた後半戦で、昨シーズンにつくった「借り」を返す事ができるのか。
いまの香川のプレーを見る限り、その可能性は充分にありそうだ。
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