本来ならば、およそ10日後に迫ったワールドカップ最終予選へ向けての「景気づけ」となるはずだった一戦。
しかしザック・ジャパンは、ここで大きな花火を打ち上げることはできなかった。
Jリーグとの兼ね合いでガンバ大阪、セレッソ大阪、名古屋グランパスなどから選手を招集できなかったこと。
そしてFIFAランキング109位のアゼルバイジャンが、予想以上に手強い相手だったことを差し引いても、不完全燃焼感は否めない。
昨年秋のワールドカップ・アジア3次予選の頃から、微妙に狂い始めたザック・ジャパンの歯車。
しかし未だ、その復活の糸口は見えないままだ。
見つからない「糸口」
この試合のテーマは、おそらく前半と後半とで大きく様相が異なっている。
つまり前半は「レギュラー組のコンビネーションの調整」、後半は「バックアップメンバー(特に新戦力)のテスト」である。
そしてこれらはそれぞれ、上手くいった部分もあれば、上手くいかなかった部分もあった。
レギュラー組に関して言えば、約9ヶ月ぶりに代表に復帰した本田圭佑がさすがの存在感を見せつけた。
まだ本調子とは言えないだろうけれど、それでもロシアの隣国・アゼルバイジャンのスタイルは本田としてはやりやすい相手だったのだろう。
重心の低いキープからのシュートやパス、フリーキックで、この日は何度も見せ場を演出している。
そして本田と双璧を成すもう一方のエース・香川真司は、本田と比べればやや影が薄かったけれども、見事なワンゴールを決めてその役割を果たした。
新戦力に目を向けても、デビューが待望されていた宮市亮を筆頭に、酒井宏樹、高橋秀人の3人がAマッチデビューを飾った。
3人ともそれぞれに持ち味の片鱗を見せ、初戦としては悪くない出来だったのではないだろうか。
しかしそれでも、この試合がどうにも “しょっぱい” 印象になってしまったのは、スコアが-2-0と微妙なものだった、というだけが理由ではないだろう。
僕が気になったのは、レギュラーの代わりに出場した選手たちから、いまいちポジション奪取へのモチベーションが感じられなかったことである。
現在の代表チームは、センターフォワードを除けばレギュラーメンバーはほぼ不動のメンツだと言ってもいい。
そしてベストメンバーが揃った時の日本は、アジアでは突出した破壊力を持っている。
しかしその反面、本田圭佑や遠藤保仁などのキープレイヤーが欠けた時、その力が著しく減退してしまうことが大きな課題でもあった。
昨年のアジアカップで優勝して以降1年以上の時間をかけて、ザック・ジャパンはその課題に取り組んではきている。
しかし悲しいかな、成果はあまり上がっていないのが実情だ。
この試合は本来のレギュラーメンバーと比較すると、センターバックの2人、そして遠藤の入るボランチ、の3つのポジションが空いている状態だった。
さらに前半途中からは、負傷退場した森本貴幸が居たセンターフォワードのポジションにも空白が生まれる。
裏を返せばこれらのポジションでサブに甘んじる選手たちにとっては、レギュラー奪取への「チャンス」でもあったはずだった。
しかし、代役となった選手たちは及第点のプレーを見せてはいたものの、「ここで一発、レギュラーを奪ってやろう」というほどの気迫までは感じられなかった、と思ったのは僕だけだろうか?
白熱したポジション争いというテーマがあれば、この試合もそれなりに緊迫したムードを帯びた一戦になっていただろう。
しかし実際には大きな盛り上がりもなく試合は終了し、単なるテストマッチで終わってしまった印象は否めない。
そしてその責任は結局のところ、監督にもあるのだろう。
ザッケローニはイタリア時代、ビッグクラブよりは、どちらかと言うと地方の中小クラブを率いて好成績を残してきたタイプの指揮官だ。
メンバーをある程度固定して、そこに戦術を植え付けることは得意でも、ターンオーバーを駆使して分厚い選手層のグループを形成するようなことはもともと得意ではないのかもしれない。
日本代表でも既にある程度レギュラーを固定してしまった感のあるザックの采配が、チームに閉塞感をもたらしているのではないか、という気が僕はしてしまうのである。
とは言ってもアジア最終予選でザック・ジャパンがコケるようなことは、よっぽどの不運が重ない限りは無いだろう。
しかし、このチームの目標はあくまでも2014年のブラジルである。
ワールドカップの本大会でベスト16の壁を打ち破ること。
その命題を達成するために、ザック・ジャパンが乗り越えなければならない壁。
それは徐々に、険しさを増してきてしまっているように、僕には感じられるのである。
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