フットサル日本代表 | |
GK | 川原永光 |
FP | 北原亘 |
逸見勝利ラファエル | |
木暮賢一郎 | |
星翔太 | |
SUB | 富金原徹 |
藤原潤 | |
小宮山友祐 | |
村上哲哉 | |
稲葉洸太郎 | |
小曽戸允哉 | |
三浦知良 | |
高橋健介 | |
森岡薫 |
フットサル ポルトガル代表 | |
GK | ジョアン・ベネディト |
FP | リカルジーニョ |
アルナルド | |
ジョアン・マトス | |
カルディナル | |
SUB | ベベ |
アンドレ・ソウザ | |
パウリーニョ | |
レイトン | |
ペドロ・カリー | |
ナンジーニョ | |
デジョ | |
ゴンサロ | |
マリーニョ |
5 | 5 | ||
1分 | ジョアン・マトス | ||
2分 | リカルジーニョ | ||
9分 | カルディナル | ||
11分 | 森岡薫 | ||
12分 | カルディナル | ||
18分 | リカルジーニョ | ||
19分 | 星翔太 | ||
32分 | 北原亘 | ||
33分 | 森岡薫 | ||
36分 | 逸見勝利ラファエル |
ポルトガルの人口はおよそ1,000万人。これは日本の約12分の1、隣国スペインと比べても4分の1に満たない。
人口規模だけで見れば、同じヨーロッパのギリシャやベルギーよりも小さな国だ。
そんな小国・ポルトガルから、サッカーの世界ではクリスティアーノ・ロナウドやジョゼ・モウリーニョのような世界トップクラスの選手、監督たちが生まれてきたのは驚くべきことである。
しかしポルトガルにはさらにもう一人、世界トップクラスの選手が存在しているのだ。
それがフットサル界で現在、世界ナンバーワンと言われるプレイヤー、リカルジーニョである。
リカルジーニョはポルトガル北部の港湾都市、ポルト出身の27歳。
少年時代はサッカー選手として将来を嘱望されていたものの、低すぎる身長(公称で164cm)がネックとなってプロサッカー選手への道を絶たれ、フットサルに転向することになった。
そして現在は日本の名古屋オーシャンズでプレーする、フットサル界のスーパースターである。
そのリカルジーニョが率いるポルトガル代表は、2000年のフットサル世界選手権(現ワールドカップ)では3位に入賞したこともある強豪国だ。
日本はこれまでポルトガルとテストマッチで3度対戦したことがあるけれど、2006年には1-11、2011年には1-6、2-3と3戦全敗を喫している。つまり日本にとってのポルトガルは、完全に「格上」の相手と言ってよかった。
しかし初戦のブラジル戦を落としてしまった日本にとっては、決勝トーナメント進出を考えればこのポルトガル戦は、「絶対に負けられない一戦」でもあったのである。
24チームが参加する今大会では、全6グループの上位各2チームに加えて、3位になったチームからも成績上位の4チームが決勝トーナメントに進むことができる。
ただし日本がブラジル、ポルトガルに連敗してしまった場合、3戦目のリビア戦に勝ったとしても勝ち点は「3」止まり。
この場合、決勝トーナメント進出はかなり厳しいものとなってしまうことが予想されていた。
世界のトップスター、リカルジーニョを擁する強豪から勝ち点を奪えるかどうか。
日本にとってはこのポルトガル戦こそが、その後の運命を分ける「天王山」の一戦となったのである。
リカルジーニョ率いるポルトガルの「脅威」
それでもやはり、ポルトガルの実力は半端ではなかった。
キックオフ直後からリカルジーニョを中心としたコンビネーションで猛攻を仕掛けるポルトガルに、日本は早々に試合の主導権を握られてしまう。
そしてわずか49秒で先制点を奪われ、0-1。
その後も攻撃の手を緩めないポルトガルは2分、9分と立て続けに加点して0-3。
日本も森岡薫のスーパーミドルで1点を返して1-3と詰め寄るも、直後に4点目、続いて5点目を決められ、一時は1-5と4点の大差をつけられてしまった。
ポルトガルはリカルジーニョ以外にもジョアン・マトス、カルディナルといったテクニシャンを揃える好チームで、前半の日本はそのハイレベルなテクニック、コンビネーションに圧倒されてしまう。
そして後方からチームを操りながら、機を見ては前線に進出して決定機に絡んでくるリカルジーニョの存在が、それに拍車をかけた。
リカルジーニョの凄さ、テクニックの高さは、それこそクリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシに通じるくらい「分かりやすい」。
そのプレーを1試合見れば、普段それほどフットサルやサッカーを見慣れていない人が見たとしても、すぐに並外れた選手だと分かるだろう。
そんなリカルジーニョを中心としたポルトガルの攻撃力に、序盤の日本は完全に沈黙させられてしまう。
しかし前半終了間際、インターセプトからの星翔太のゴールで2-5と詰め寄った日本。
そして後半、日本は「歴史に残る同点劇」を演出してみせるのである。
「ギャンブル」に勝利した日本
日本に奇跡の同点劇をもたらしたのは、「パワープレイ」と呼ばれる戦術だった。
これはフットサルでは日常的に行われているプレーだけれども、サッカーで言うところのパワープレイとは意味合いがちょっと違う。
フットサルでのパワープレイはゴレイロ(GK)もフィールドプレイヤーとして攻撃に参加し、守備のリスクを抱えながらも捨て身の攻撃で1点を奪いに行くプレーのことを指す。
ちなみにサッカーでもたまに、GKがセットプレーなどで相手ゴール前に攻撃参加するシーンは見られるけれど、交代が自由で(パワープレイの際にはフィールドプレイヤーがGKのユニフォームを着て攻撃参加する)人数の少ない(パワープレイの際にはフィールドプレイヤーが5人対4人となり、圧倒的に攻撃側が有利)フットサルでは、パワープレイはより有効な戦術として頻繁に行われているのだ。
そしてポルトガル戦。
3点差を追う日本は、後半も残り9分頃から起死回生のパワープレイに打って出た。
そしてこの「ギャンブル」に、日本は完全に勝利することになる。
まずはパワープレイ開始から約1分後の32分、パスを繋いでポルトガルの守備陣をゆさぶると、最後は北原亘のミドルシュートが決まって3-5。
さらに1分後の33分、パスワークで右サイドを崩し、そこからファーサイドに詰めていた森岡薫が決めて 4-5。
そして締めくくりは36分、リカルジーニョの深い位置からのパスを森岡薫がカットして、そこからカウンターアタックを開始。
森岡がドリブルで持ち上がってからのラストパスを、逸見勝利ラファエルが決めてついに5-5と追いついた。
ここに、日本の同点劇が完成したのである。
ちなみにこの試合の後半、ポルトガルは明らかにペースダウンしていた。
それは4点差からくる気の緩みもあっただろうし、スタミナの問題もあったように思う。
特にリカルジーニョは試合を通じてほぼ出ずっぱりの状態だったのだけれど、交代が自由のフットサルで、フィールドプレイヤーがフルに近く出場するのは珍しい。
それだけリカルジーニョが絶対的な存在だということだろうけれども、リカルジーニョが疲れからかパスミスを犯してしまったあたり、リカルジーニョに頼りすぎたことのツケを、ポルトガルは最後に支払う格好になってしまった。
しかしそれらを差し引いても、最後まで集中を切らさなかった日本の粘りは称賛に値する。
ちなみに「カズ効果」で注目を集めることになったフットサル代表だけれども、この試合に限って言えば、カズ自身に見せ場はほとんど無かった。むしろ、失点に絡むシーンのほうが目立ってしまった印象である。
逆に言えば、この同点劇の立役者はカズではなくて、純粋にこれまでフットサル選手としてプレーしてきた他のメンバーたちの頑張りによるものだ。
このチームにはカズ以外にも、昨シーズンのFリーグでMVPと得点王の2冠に輝いた森岡薫、これまで中心選手として代表を牽引してきた “ミスター・フットサル” 木暮賢一郎、ブラジル戦・ポルトガル戦を通じてスーパーセーブを連発した守護神・川原永光、日本の未来を担う二十歳の天才、逸見勝利ラファエルなど、個性豊かな選手たちが揃っている。
このワールドカップを通じて、彼らの顔と名前も広く知られるようになっていってくれることを、僕は期待しているのだ。
このポルトガル戦で勝ち点1を得て、日本は現時点でグループCの3位につけている。
ただし、他のグループの3位チームは全て勝ち点3で並んでいるので、現状のままだと日本はグループリーグ敗退となってしまう。決勝トーナメント進出はまだまだ楽観できる状況だとは言えない。
それでもポルトガル戦で負けていた場合を考えれば、可能性が大きく開けてきたこともまた事実である。
今大会からフットサル日本代表には『サムライファイブ』というニックネームがつけられたらしい。
ニックネームと言えば女子サッカーの「なでしこジャパン」が有名だけれども、なでしこはワールドカップ優勝、オリンピック銀メダルと、世界大会で好結果を残したことで、その後の大ブレイクを実現させた。
そしてなでしこと同じように、フットサル代表が今大会でブレイクすることも、決して不可能ではないだろう。
Fリーグで技を磨き、カズ効果でモチベーションも絶頂にある現在のフットサル代表は、おそらく国内では史上最強の代表チームだと言っていい。
ぜひこのワールドカップで活躍を見せて、「サムライ5」の名前を轟かせてくれることを期待したい。
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