ストップ・ザ・「消化試合」/ワールドカップ・アジア最終予選@イラク代表 0-1 日本代表

#doha street#doha street / Lawrence Wang 王治钧

“ドーハで戦う、イラクとのワールドカップ予選・最終戦”。

ということで、「ドーハの悲劇の再戦」とも謳われたこの試合。
しかし同時に、既にワールドカップ出場を決めている日本にとっては「消化試合」と見る向きもありました。
そしてやはりと言うべきか、試合は大きな盛り上がりを欠いたまま、終了のホイッスルを迎えます。

これが20年前のような緊張感に満ちた試合であれば、解説の山本昌邦さんが試合終了後、ジョホールバルでの清水秀彦氏ばりに「ヤッターーーーーーーーーーー!!!!」と絶叫しながら放送室を飛び出して行くくらいのカタルシスが欲しいところでしたが、実際の試合は実に消化試合らしく始まり、消化試合らしく終わったゲームだったと言えるでしょう。

個人的にもこのイラク戦は、やや不満の残る一戦となってしまいました。
確かに予選として見れば「消化試合」ではあるのですが、「強化」という面から考えると、ワールドカップ本大会まであと1年となった今、本来は無駄にできる試合など1試合も無いはずなのです。

僕が特に気になった点は次の2つです。

1つはエース・本田圭佑が不在の時の戦い方に、またしても「コレ」という回答を示せなかったザッケローニ監督の采配。
そしてもう1つは、久しぶりにチャンスを貰ったリザーブメンバーたちに、(暑さなどの理由があったとは言え)「本気でポジションを奪ってやろう」というほどの必死さが感じられなかったことでした。

ザッケローニが監督になってから、気がつけばもう2年半。
残り1年もあっという間に過ぎるでしょう。

オーストラリア戦でワールドカップ出場を決めた直後から、本大会へのスタートは切られています。
日本代表がブラジルで好成績を収めるためには、これから1年間、私たちサッカーファンも代表に対して警鐘を鳴らし続けていく必要があるのかも、ということを考えさせられた一戦になりました。

ストップ・ザ・「消化試合」

戦前、この試合の見どころの一つは、欠場が確実視されていた本田圭佑の穴を埋めるために、ザック監督がどんな手を打ってくるのか、という部分にもあると考えられていました。
そしてザックが出した答えは、これまでも何度か試されてきた “香川真司のトップ下起用” だったのです。

ちなみに僕は前回の記事で、香川をトップ下に起用する「プランB」を考えてみてほしいという希望を書いています。
しかし矛盾するようですが、この日の香川のトップ下起用には、個人的にはやや疑問を感じていました。
それは先の記事でも書いた通り、香川がトップ下で機能するのは、相手が前に出てきて日本がカウンター気味のスタイルになる時だと考えていたからです。

対して、この日の相手であるイラクは、基本的には中東伝統のカウンターサッカーをベースにしているチームです。
日本が速攻を仕掛けたとしても、イラクのように後方でブロックを作ってくるチームには効果が半減してしまいます。

そして実際に、この日も日本の作った決定機の数は、多いとは言えませんでした。
結果的に香川真司は、この日の「追試」でも大きなインパクトは残せず、67分には清武弘嗣と交代出場した中村憲剛にトップ下のポジションを譲っています。
日本の唯一のゴールが生まれたのは、その22分後の89分でした。

もしかしたらザッケローニ監督の中では、予選最下位で「勝利」が絶対条件のイラクが、もっとラインを上げて積極的に攻めに出てくるのでは、という予測があったのかもしれません。
しかし実際には、イラクは強豪の日本を相手に、無理に前がかりになっては来ませんでした。
結果的にこの試合で分かったことは、ゴール前を固めて守ってくる相手には香川のトップ下は機能しない、ということを改めて確認したことでした。

またザック監督の采配と同様に物足りなさを感じたのは、この試合でチャンスを貰ったサブのメンバーたちのプレーです。
これまでレギュラーを固定することの多かったザッケローニ監督。
その選手起用にやや保守的な傾向があるのは確かですが、それにしてもサブの選手たちがこういった機会に目の色を変えてプレーしてくれないようでは、ザックとしても選択のしようが無いとも言えるでしょう。
この日は伊野波雅彦がやや目立っていた以外は、他のサブの選手達は「そつなくこなしていた」か「物足りなかった」かのどちらかだったかなと思いましたが、あと1年の間に、レギュラーの座を本気で脅かすような選手たちがもっと出てきてくれなくては、戦力の上積みは望めません。

特にボランチのポジションには、細貝萌以外にも有力な選手が数名出てきてほしいところです。
遠藤保仁はこの試合でもアシストを決めるなど結果を残しましたが、来年には34歳になる遠藤が「替えの効かない選手」になり過ぎてしまっているというのも健全な状態だとは思えません。
遠藤自身のプレーにも、ここ最近はやや精彩を欠いていると感じられる場面もあり、遠藤の負担を軽くするという意味でも新戦力の台頭が望まれます。
似たようなことはセンターバック、センターフォワード、トップ下、ゴールキーパー等にも言えるのではないでしょうか。

ワールドカップで仮にベスト4まで行こうと思ったら5試合を戦う必要がありますが、この5試合全てを同じメンバーで戦うことは至難の業でしょう。
各ポジションに怪我人や出場停止者が出た場合でも戦力が落ちないよう、層を厚くしていく必要がありますが、そのために残された時間は決して多くはありません。

泣いても笑っても、残された準備期間はあと1年。
日本代表にはもう「消化試合」など存在していないはずです。

15日からのコンフェデ杯では、生まれ変わったザック・ジャパンの姿を見ることができるのでしょうか。

[ 関連エントリー ]

トップページへ戻る