当ブログが開設されてから、早いものでちょうど1年が経つ。
初めての記事は 2010年のJリーグ開幕戦についてのものだったから、1年後の今週はつまり、2011年のJリーグがスタートするわけである。
ちなみに近年のJリーグでは、リーグの開幕を広く告知する意味もあってか、開幕戦に話題性の高いビッグマッチを組んでくることが多い。
そして今年Jリーグが開幕戦のカードにぶつけてきたのが大阪ダービー。
昨年2位と3位のチーム同士の “浪速のダービーマッチ” が、Jリーグのひとつの「顔」として認められたのだと言っていいだろう。
と言うわけで当ブログも、今年は初戦から現地リポートが実現!となった次第です。
期待値の大きかった大阪ダービー
ちなみに当ブログの昨シーズンを振り返ると、国内・国外を問わず、ダービーマッチを扱った記事が多かったと思う。
これは偶然ではなくて、僕がダービーマッチというものを重視しているからだ。
僕はブログを書くときに、基本的には自分がその時々で「観たい」と思った試合を軸に書くようにしている。
そしてその基準になる要素は、「話題性のある試合」または「単純に面白そうな試合」という感じになる。
ちなみに「面白そうな試合」と言うと「レベルが高い試合」とイコールだと考えがちだけれども、個人的には必ずしもそうではないと感じている。
レベルだけを基準に考えるのであれば、世界一面白い試合は間違いなく UEFAチャンピオンズリーグのそれだろう。
もしくはカードによっては、プレミアリーグやリーガ・エスパニョーラの試合になるかもしれない。
いずれにしてもその基準で言うと、Jリーグの試合の入ってくる余地はまず無くなる。
でも実際には、日本国内でより支持されているのは、海外よりもJリーグの試合だと思う。
このブログでも、日本人選手の出場しない純粋な海外の試合よりも、Jリーグの試合の記事のほうが反響が大きい。
つまりサッカーファンの興味には単にレベルの高低だけでなく、その試合に対する思い入れだとかの色々な要因が絡んでくるわけだ。
もちろんレベルは高いに越したことはないけれども、それだけで「面白い試合」が決定するわけではない。
ちなみに僕が「面白い試合だ」と感じる基準の第一は「試合のテンション」である。
試合自体がどれだけ熱気を帯びているか。
選手たちが、どれだけ「勝ちたい」という気持ちをむき出しにしているか。
それが最優先の基準になって、あとはその上で、より自分の思い入れが強い試合、よりレベルの高い試合が「面白い試合」ということになるのが、僕なりの試合の基準だ。
だから「勝ちたい」という選手の気持ちが前面に出ていた、ワールドカップやアジアカップなどの日本代表の戦いぶりには感動を覚えたし、高校サッカーの決勝のような、レベル的に言えばヨーロッパサッカーとは比較にならないような試合でも、見る側としてはむしろ、トッププロの試合よりも面白いということが起こるのだ。
そして僕がダービーマッチに対する思い入れが強いのは、ダービーがその他の一般の試合よりも「テンションの高い試合」だと感じているからだ。
海外でもダービーマッチは、両チームの実力差を抜きにして白熱するのが常だ。
だからダービーは面白いし、僕がダービーマッチを好きな理由もそこにある。
そんな僕だから当然、今回の大阪ダービーは絶対に見逃せないと思っていた。
チケットは発売日の朝イチにすぐさま購入。
去年の万博でのダービーでは1時間前に来場したにも関わらず残念な席にしか座れなかったので、その反省を踏まえて今回は2時間前に会場入り。
万全を期して、僕はこの開幕ダービーに照準を合わせてきたのである。
そしていよいよ迎えた3月5日、ダービー当日。
スタジアム周辺は2時間前でも黒山の人だかりで、もはやこのカードが大阪の一つの「文化」として定着していることを肌で感じる。
試合前にはガンバのジュニアチーム所属の小学生たちによる前座試合が行なわれたり、試合前には花火が打ち上げられたりして、会場の開幕ムードはどんどん高まっていった。
そしていよいよキックオフ。
待ちに待った、2011シーズンのJリーグが開幕した瞬間だ。
さあ、これから 90分間、どんな熱いダービーマッチを見せてくれるのだろうか。
いやが上にも期待は高まる。
ところが試合が始まって 30分が経ったころ、僕が一番注力していたのはピッチの上に対してではなく、自分の中の睡魔との戦いだったのである。
見応えのなかった前半戦
今回ははっきり書きたい。
前半の大阪ダービーは、酷く退屈で見応えのまったくない試合だった。
少なくとも僕が思い描いていた「ダービーマッチ」の熱気とはかけ離れた、大凡戦だったとしか僕には感じられなかった。
もちろん選手たちからすればそれなりの言い分はあるだろう。
ダービーとは言っても開幕戦だけに、立ち上がりは慎重になったのかもしれない。
確かに好意的に捉えれば、前半の両チームは「じっくり様子を見ている」と言えなくもなかった。
そして両チームとも、3〜4日前には AFCチャンピオンズリーグの試合を戦っていたことも大きかったかもしれない。
そういう意味では、コンディション的に難しいゲームだったという言い訳も立たないではない。
また両チームともに軸となるポジションに新加入選手が入ったため、現時点では彼らがまだチームにフィットしきれていなかったということも充分に考えられる。
しかしそれでも、開幕のダービーマッチには、そんなエクスキューズを全て吹っ飛ばすくらいのハイテンションな試合を期待していたというのも、いちファンの心理としてはまた事実だった。
前半立ち上がりはややセレッソがペースを握っていたような印象を受けたけれども、それもセレッソが良かったというよりは、ガンバのプレスが緩くて簡単にボールを運ばせてしまっていたと言ったほうが近い。
セレッソの攻撃陣は、むしろいまいちピリっとしなかったと表現したほうが良いような出来だった。
前半で唯一、会場が盛り上がったのが、ガンバに PKが与えられたシーンだった。
セレッソDF上本大海の不用意なハンドをとられ PKの判定が下る。
蹴るのは PKの名手、遠藤保仁。
が!!!!
しかし何とこの PKを遠藤が外し、ガンバは先制の絶好のチャンスを逃してしまった。
前半はけっきょく、これ以外に大きな動きのないまま終了する。
まずい…このままのペースで後半も行くようであれば、ゲームの質的に非常にまずいことになりそうだ。
僕はそんな不安を覚えていた。
大阪ダービーに足りていないもの
前回の対戦の時も感じたことだけれども、大阪ダービーでの観客のユニフォーム着用率はかなり高い。
僕は基本、この両チームに関してはどちらも等しく応援する中立の立場なのでニュートラルな色の服を着て行ったんだけれども、僕のような人間は会場では少数派で、青かピンクかどちらかの色の服を着ている人が、少なくとも見た目にはほとんどだった。
キャパの大きい長居ならもう少しライトユーザー率が高まるだろうけれども、万博でのダービーでは青とピンクにハッキリと分かれる。
つまりそれだけ、観客の盛り上がり感は高い。
にも関わらず、睡魔を感じてしまう前半になったのはなぜだろうか?
僕は大きく言えば、選手たち同士の間に「ダービー熱」が醸成されていないことが一番の原因ではないかと思っている。
つまり、まだ両チームの選手同士のライバル心が希薄なのではないだろうか。
もっとも前回の記事で書いたように、大阪の北部と南部との間では、昔ながらの地域間のライバル意識というのは存在している。
しかし今回のメンバーをよく見てみると、「生粋の地元民」と言えるような選手は、両チームとも実はそれほど多くない。
ユース育ちが多いガンバでも、ホームタウンである大阪北部出身の選手は二川孝広と下平匠くらい。
セレッソに至っては、大阪市や大阪南部出身なのは丸橋祐介の1人だけで、あとは監督も含めて外様ばかりのメンバー構成だ。
強いて言えば、元ガンバの倉田秋と播戸竜二、ガンバでは元セレッソのアドリアーノに、古巣に対するライバル心があるくらいだろうか。
いずれにしても大半の選手たちにとっては、この試合は「単なるリーグ戦の1試合」に過ぎなかったのかもしれない。
そのあたりも、スタンドとピッチの上での温度差が生まれる原因だったように思えた。
しかし、このままではあまりにも寂しい。
個人的には両チームのライバル心を高めるためには、特にセレッソの側の奮起を期待したいと思っている。
ガンバとセレッソの両チームを比べた場合、どちらも昨年はリーグのトップ3に入る好成績を残したとは言っても、やっぱり実績で言えばまだガンバが格上だろう。
ガンバがリーグタイトル・天皇杯・ナビスコカップの国内3大タイトルに加えて AFCチャンピオンズリーグでも優勝経験があるのに対して、セレッソはいまだに、ヤンマー時代を除けばメジャータイトルとは縁がない。
昨年も3位と大健闘したとは言っても、2位のガンバの後塵を拝し、2シーズン前まではJ2がセレッソの主戦場だった。
ただ世界のいろいろな地域でのダービーマッチは、その時のチームの実力差を超えて盛り上がるものだ。
それはやっぱり、実力下位のチームが死に物狂いで上位のチームに喰らいつくからこそではないだろうか。
その意味では僕は、やはりセレッソが奮起してこそ大阪ダービーはより熱くなるのだと思っている。
しかしこの試合では、そのセレッソがいまいちパッとしなかった。
ディフェンス陣は頑張っていたけれども、攻撃陣で期待に応えたのは、1ゴールを挙げた倉田秋くらいだろうか。
新加入のホドリゴ・ピンパォンはヒールパスなどで何度かセンスを感じさせるプレーを見せたけれども、周囲とのコンビネーションがまだまだで消えている時間帯も多かった。
同じく新加入のキム・ボギョンも一生懸命な姿勢は伝わってきたけれども、同じく周囲との連携がイマイチで、かと言って独力で突破できるほどの圧倒的な個人技があるわけでもない。
後半途中からは完全にガス欠状態で、プレーの精度が見るからに落ちていった。
そして香川真司と家長昭博が抜け、今季は攻撃の核として期待がかかった乾貴士に関しては、ほとんどチャンスに絡めないまま、1点を追う場面で交代させられるという体たらく。
ルーズボールを追わずに諦めるような場面も見られて、僕の席の周りのセレッソファンからも「乾アカンわ、あいつ」と三行半を突きつけられていた。
サッカーマガジンの選手名鑑には「今季は海外移籍も狙う」というようなことが書かれていたけれども、この調子だと海外はおろか、セレッソでのスタメンの確保も危うくなるのではないか。
才能の大きさは間違いないだけに、もう一度危機感を持って、足元を見つめ直してもらいたいと思ってしまった。
とにかくセレッソがいま以上に必死にガンバに立ち向かっていくことが、大阪ダービーが真の熱狂をを生むための条件になってくるように、僕は感じた。
大阪ダービーが抱えた宿題
ちなみに試合自体は後半に入るとようやく動き出して、やや盛り上がりを増した。
65分、ガンバは二川孝広のスルーパスから下平匠、という「地元コンビ」でチャンスをつくると、その下平のクロスを、昨年はセレッソで活躍したアドリアーノが頭で決めて 1-0。
まずはホームのガンバが先制する。
しかしその8分後の 73分、ガンバ育ちで今季からセレッソに移籍した倉田秋が意地のミドルシュートを決めて 1-1の同点に。
ところがそのわずか3分後、前半に PKを外した千両役者に、汚名返上のチャンスが巡ってくる。
76分、カウンターからパスを繋いで、ガンバはゴール前右寄りに走りこんだ遠藤保仁にボールを渡した。
遠藤いわく「トラップミスした」ボールだったけれども、遠藤はすぐさま持ち直すと、一瞬「クッ」とキックフェイントを入れる。
その瞬間、時間が止まったように思えた。
バイタルエリア付近の狭いスペース。
しかし天才はその密集地帯で、「ボールを持つ位置」と「タイミング」を操ることで、わずかな刹那、自分だけの「間合い」をつくった。
そしてその右足から描かれた放物線が、セレッソの韓国代表GKキム・ジンヒョンを破って、ゴール右隅へと吸い込まれていく。
この芸術的な一撃で、勝負は決まった。
両軍きってのスタープレイヤーの活躍で、最後には何とか帳尻を合わせた感じの大阪ダービー。
ただし前後半を通じて見れば、この試合がその期待値に見合ったものだったとは到底言い難い。
Jリーグの両チームがが大阪の地で、阪神タイガースのように一般市民をも巻き込んだ一大ブランドに成長していくためにも、ガンバとセレッソにはより一層の奮起を期待したいと思うのだった。
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