日本人選手たちを揉んだ「荒波」/ブンデスリーガ@VfBシュツットガルト 1-0 シャルケ04

I am a wave...I am a wave… / Hamed Saber

誰しも時には「やっちまった!」と思わず天を仰ぐような失敗を犯すことがあると思う。

かく言う筆者も、先月は本業のほうで大型案件をあやうく飛ばしそうになるようなミスを犯しかけて冷や汗をかいたけれども、今週そんな貧乏くじを引いてしまったのが内田篤人である。

「ウッシー」の味わった苦い経験

ちなみに外人は「ウッチー」という言葉を上手く発音できないらしく、内田はチームメイトからもっぱら「ウッシー」と呼ばれているそうだ。

我が国きっての美少年フットボーラーをホルスタイン牛あつかいとは、ゲルマン人もなかなかやるじゃねえか、と言った感じだけれども、ちなみにそう考えると、かのイチローさんは現地では「イシローさん」と呼ばれていたりするのだろうか。
石立鉄男もビックリといったところだが、話の本筋とは全く関係ないので今回は検証は控えたい。

ともかくそんな我らが牛田…もとい、内田選手にとって、この週末のブンデスリーガは散々な試合となってしまったのである。

ここ最近のウッシーはすっかりシャルケのスタメンに定着し、特に持ち味の攻撃面においてはチームのキーマンの1人となりつつあった。

そしてウッシーはこのシュツットガルト戦でも、立ち上がりから積極的な攻撃参加を試みる。

ところがこの試合に関して言えば、その積極性が完全に裏目に出てしまった格好だったのだ。

前半開始から間もない 14分、内田篤人は右サイドをドリブルで駆け上がり、大胆なオーバーラップを仕掛けた。

ハーフウェーラインを超えてバイタルエリアに侵入した内田は、そのままインサイドに切りこむと、一気にゴール前中央への侵入を試みる。
これまでは主に、サイドライン際からクロスを上げるプレーが多かった内田にしては、予想外なほどに思い切ったプレー。

しかし内田は中央へと持ち込んだところで、このボールを奪われてしまう。
そこから待っていたのは、鋭いシュツットガルトのカウンターだった。

そしてシャルケはこのカウンターアタックから、一気に自軍ゴール前まで侵入を許す決定的なピンチを作られてしまったのである。

そうしてシュツットガルトの選手にフリーで放たれたシュート。

これをたまらずシャルケのディフェンダー、ベネディクト・ヘーヴェデスが手で弾いてしまって、判定は一発レッド。

さらにそこで与えた PKを決められて、シャルケは内田のミスから、いきなり「1人退場 + 1失点」という大きなビハインドを背負うことになってしまったのである。

そして 10人となったシャルケは、前半はほぼ守備に追われることになった。

内田は自らのミスが招いた失点を挽回しようと何度か攻撃参加を試みたけれども、再びドリブルをカットされてピンチを作られるなど、この日はその攻撃的なプレーが完全に裏目に出てしまった格好。

結果的に内田篤人は前半 45分間をプレーしただけで交代を命じられ、ピッチを去った。
最近はスタメンフル出場が続いていた内田にとって、久しぶりの苦々しいゲームになってしまったことは間違いないところだろう。

不完全燃焼に終わった岡崎慎司

なおこのゲームは内田篤人だけでなく、対戦相手のシュツットガルトにも岡崎慎司が出場していた「日本人対決」の一戦だった。

ただし岡崎の出来も、内田ほど悪くはなかったけれども、良かったとも言い難い。

この日の内田と岡崎は、右サイドバックと左ミッドフィルダー(ウイング)というポジションで、いわゆる「トイメン」でマッチアップする関係だった。

そう考えると2人の対決が数多く実現しそうだけれども、実際はむしろ逆。
日本代表のチームメイト同士でやりにくい部分があったのか、この日はお互いに攻撃でも守備でもあまりガツガツとぶつかりに行かない、どこか遠慮したような空気が漂っていた。

けっきょく前半は、この2人がガチで対決するようなシーンはほとんどないまま終了。

内田が退いた後半には岡崎もようやくのびのびとプレーできるようになったけれども(まあ、それもどうかと思うけど)、すると逆に後半は、チーム自体がシャルケに主導権を握られるような展開に陥ってしまう。

後半立ち上がり、シャルケのフェリックス・マガト監督は内田篤人を含める3人の交代枠を、なんと全て同時に使い切るという大胆極まりない策に出た。

結果的にこの積極策が実ってシャルケはバランスを回復し、後半はひとり足りないシャルケがむしろやや押し気味のゲーム展開となる。

そんな中で岡崎慎司も、守備に追われるシーンが多くなってしまった。
単発的には攻撃面でも光るプレーを見せて、79分にはコーナーキックから2回の決定的シュートを放つなどチャンスにも絡んだけれども、惜しくもゴールはならず。

結局はその後も両チームに得点は生まれないまま、試合はタイムアップ。

ホームのシュツットガルトが、上位のシャルケを相手に薄氷を踏む様な勝利を収めたゲームとなった。

日本人選手たちを揉んだ荒波

内田篤人と岡崎慎司の日本人対決は、お互いに不完全燃焼なもので終わった。

ただもちろん、長いシーズンの中では色々なことがある。
むしろ、全ての試合で好プレーを見せることのほうが不可能に近いだろう。

その中でも僕は、この2人がドイツという異国の地で、波はありながらもしっかりとレギュラーの座を確保していることを頼もしく思う。

内田にとってはこの試合は最悪なものとなってしまったけれども、それでもこの1試合だけで揺らいでしまうほど、マガト監督の内田に対する信頼は薄くはないだろう。

岡崎も初ゴールこそおあずけになったけれども、チャンスメイクやディフェンスの部分では相変わらずの好プレーを披露していた。

海外で思うように試合に出れない日本人選手たちもいる中、この2人に関しては今後も一定の活躍を期待しても良さそうだ。

波にもまれながらも前進を続ける日本人選手たち。

彼らのドイツへの挑戦は、まだ始まったばかりなのである。

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