15,688人。
この日に国立競技場を訪れた観客の数である。
震災の影響で一時的にホームスタジアムを使えなくなった鹿島アントラーズの、本拠地外での代替開催試合。
そこに悪天候が追い打ちをかけて、屋根の無い国立のスタンドには強い雨が降り注ぐ。
色々な悪条件が重なって、動員不振にも弁解が立つ状況だったのは確かだった。
ただしそれでも、「待ちに待ったホーム開幕戦」を迎えた強豪チームのはじき出した数字としてはあまりに寂しいものだったのも、また事実だった。
鹿島を圧倒したマリノスの気迫
最終スコアは 0-3。
と言っても、鹿島からしてみればアンラッキーな部分もあった。
先制点は前半3分。
まだエンジンのかからない立ち上がり、マリノス小椋祥平に高い位置でボールを奪われると、そのままミドルシュートを決められて 0-1。
76分には CKから栗原勇蔵に押し込まれて 0-2。
最後は後半ロスタイム、カウンターからオウンゴールで3点目を失った。
ポゼッションでは上回ったアントラーズだったけれども、開幕戦に続いて素早いプレスをかけたマリノスの気迫に気圧されたような一戦。
ミッドウィークの ACLの疲れもあってか、この日のアントラーズは体のキレでもマリノスに及ばなかったように思う。
しかし僕にとってゲーム以上に衝撃的だったのは、そのスクリーンから眺めるスタンドの光景だったのだ。
国立に降った「冷たい雨」
開幕戦の1試合を終えた後、悪夢の3.11を体験した今年のJリーグは長い中断期間を経て、この4月23日に48日ぶりの再開に漕ぎ着ける。
しかしこの日の国立のスタンドを埋めた観客数は、5万人のキャパシティーのわずか3割程度。
それでもこの日に行なわれたJ1の5試合のうち、このゲームが最多の観客動員数だったのである。
基本的に僕は楽観主義者なので、このブログでもなるべく記事を前向きな結論で結ぶことを意識している。
ただし今回ばかりは、今シーズンのJを待ち受ける試練を悲観せざるをえない。
もっともそれはサッカー界だけの問題に限らないし、スポーツ界だけの話でもないだろう。
原発事故を含む震災の復興に一定の目処が立たない限り、それは続くのではないか。
テレビでは、あたかも震災からの復興が順調に進みつつあるかのような報道を繰り返している番組も少なくないようだけれども、僕はそれらをあまり信用していない。
この日の国立に降り注いだ雨は、これから待ち受けるかもしれない「日本サッカー界の受難の時代」を予言するような “冷たい雨” かのように、僕には感じられたのである。
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