フォワードはゴールの数で評価される、というのがフットボール界の定説だ。
スペインではクリスティアーノ・ロナウドとリオネル・メッシが驚異的なペースでの得点王争いを繰り広げているけれど、世界最高峰の選手と見られる2人がこれほど分かりやすい結果を残していることからも、ゴールの重要性は伺えると言えるだろう。
シュツットガルトの岡崎慎司はドイツに渡って以来、3ヶ月間ノーゴールが続いていた。
左ミッドフィルダー、あるいは左ウイングのポジションを与えられている岡崎にとって、この成績は自身の評価を不利にするもののはずだった。
しかしそれでも岡崎はレギュラーとして試合に出場し続け、名門シュツットガルトでの定位置を確保したのである。
岡崎慎司、挑戦の末のメモリアル弾
僕は少し前まで、岡崎慎司を上手い選手だと思ったことがなかった。
日本有数の足技自慢たちが集う代表チームにあっては岡崎の技術は突出したものではなく、むしろ泥臭いイメージが先行するタイプの選手。
代名詞であるダイビングヘッドなどの技術に光るものはあっても、岡崎慎司が器用な選手だという印象を持ったことはほとんど皆無だったと言っていい。
しかしドイツでプレーする岡崎を見て、僕のその印象には変化が生まれる。
無骨なドイツ人選手たちの中にあって、岡崎の技術は充分に高いレベルにあった。
そして最大の特長である運動量も、世界に通用する武器だと言って間違いない。
そういった部分が評価されて、岡崎はノーゴールであっても、シュツットガルトでレギュラーポジションを与えられたのだろう。
だからこそ、この試合で決めたドイツ初ゴールには、より一層の価値があった。
1-0で迎えた 61分、カウンターからカカウのパスを受けて、ゴール対角隅に狙いすまして決めた一撃。
来シーズン、ゴールという目に見える結果をさらに残すことができれば、岡崎慎司への評価もより確固たるものになるはずだ。
そしてこの一撃は、シュツットガルトのブンデスリーガ1部残留を決める決勝ゴールというプレミアもついた。
加入時に2部降格圏内だったことを考えれば、岡崎は助っ人としての役目を充分に果たしたと言える。
「努力は人を裏切らない」。
サポーターの記憶に刻まれるだろうこの貴重な一点は、異国の地でもひたむきにフットボールに向き合ってきた岡崎慎司にとって、最高のメモリアル弾になったのではないだろうか。
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