Ushibuka Hire Bridge+Kaisaikan
Ushibuka Hire Bridge+Kaisaikan / mab-ken

猶本光がドイツ戦の敗戦の後に流した涙と、ナイジェリア戦の勝利の後に流した涙。
その2つには、どんな違いがあったのだろうか。

U-20女子ワールドカップを3位という成績で終えたヤングなでしこ。
それは最高の結果とは言えなかったけれども、同時に大きな価値のある結果でもあった。

そして嬉しさとホロ苦さが入り混じったこの結果は、彼女たちのいまの実力を、良くも悪くも正しく反映していたように思った。

ヤングなでしこの飾った “有終の美”

3位決定戦の相手となったナイジェリアは、2年前の前回大会でも準優勝している強豪国である。ちなみに日本はこの時もナイジェリアとグループリーグで対戦していて、1-2で敗れていた。
そして今大会のナイジェリアも、優勝したアメリカに準決勝で負けはしたけれども、試合内容ではむしろアメリカを押し込んでいたほどの力を持っている。

日本が、優勝候補の筆頭だったドイツに敗れたことはある程度は仕方がないにしても、ナイジェリアクラスのチームに勝てるかどうかは、今大会の成否を判断する上で重要な意味を持っていると個人的には考えていた。

そして、結果的には 2-1。

辛勝ではあったけれども、地力のあるチームに対して実力で勝ち切ったゲーム。
この勝利で日本は、見事に「有終の美」を飾ることができたのである。

ナイジェリアはアフリカのチームらしく爆発的な身体能力を持ったチームだ。
技術面では粗さも見られるけれども、何人かの選手たちのテクニックレベルは高く、ツボにはまった時の攻撃力は破壊的なものがある。しかしその反面、戦術レベルは高くはない。

ただし日本は男女を問わず、このナイジェリアのようなブラック・アフリカ系のチームを苦手としていた。

ところがそのナイジェリアを相手に、ヤングなでしこは得意の個人技で前半からペースを握る。
そして24分、田中陽子が左足から放った無回転シュートが決まって 1-0。

その後は動きに精彩を欠いた横山久美と道上彩花を、機動力のある柴田華絵と西川明花に替えてさらに攻撃が活性化。
50分には柴田がドリブルで2人をかわしてスルーパス。これを西川が冷静に決めて、2-0とリードを広げることに成功した。

73分にFKを直接決められて 2-1と追い上げられた後は、パワープレーを仕掛けてくるナイジェリアに押し込まれる時間帯が続いたけれども、体力の限界と闘いながらも何とかこれを凌ぎ切ってタイムアップ。
最後はまるでなでしこジャパンのような執念の守りを見せて、ヤングなでしこが苦しいゲームを勝ち切ったのである。

この大会は田中陽子が語った通り、選手たちにとっては「人生を変える大会」になったことだろう。

柴田華絵のように既になでしこリーグでレギュラー格でプレーする選手もいるけれど、大半の選手はなでしこリーグでもレギュラーを獲得していないか、2部にあたるチャレンジリーグでプレーする選手、あるいは今年トップリーグに上がったばかりの選手たちだ。これほどの大観衆の前で戦う経験は初めてだっただろうし、今後のなでしこジャパン入りに向けても大きな刺激になったのではないだろうか。

そしてプレーの面でも、ドイツやナイジェリアのような強豪相手に「通用する部分」と「通用しない部分」がハッキリしたことは、今後に大きな意味を持ってくるだろう。

ちなみに今大会のヤングなでしこのMVPを独断と偏見で選ぶとしたら、個人的にはやはり田中陽子選手の名前を挙げたい。
チームナンバーワンの大会通算6得点という結果もさることながら、豊富な運動量とテクニックで中盤を牽引した働きが印象深かった。

大会の公式MVPの第2位にあたる “シルバーボール賞” に輝いた柴田華絵も素晴らしかったけれども、個人的な印象としては田中陽子のインパクトが少し上だった。
一番のポイントは、(異論はあるかもしれないけれど)田中陽子がこのチームで最も「替えの効かない選手」だったと感じたからである。

大会中で田中陽子がベンチに座った、あるいはサイドバックに下がった時間帯では攻撃の構成力が明らかに低下し、日本はチャンスを作れなくなることが多かった。
セットプレーのキッカーだったということも含めて、このチームにとって田中陽子は不可欠な存在だったと言えるのではないだろうか。

とは言っても、そんな田中陽子にももちろん課題はある。

個人的に気になったのは、まずプレッシャーがキツい場面でのパス、トラップの精度にややブレがある点と、フィジカルコンタクトがまだまだ弱い点。
例えば柴田華絵は田中陽子よりも小柄だけれども、ドイツのような大柄な選手たちに対してもうまく体を入れてボールをキープすることができていた。
田中陽子も下のレベルの相手に対してはできていたけれども、柴田に比べればなでしこリーグでの経験が1年少ないせいか、ドイツクラスの相手に激しく当たられると、まだ潰されてしまう場面も見受けられた。

そんな田中陽子の一番の課題は、「チームの中で機能する」術を身につけることではないかと僕は思っている。

田中陽子は「何でもできる選手になりたい」と自身がコメントしているように、ドリブル・シュート・パス・ディフェンスと、あらゆる場面で水準以上のプレーができるオールラウンダーである。そしてそのマルチな才能を活かして、トップ下やボランチなどの中央のポジションでプレーするぶんには素晴らしい輝きを発揮し、チームを牽引する存在になれる。

しかしその反面、サイドなどの限定的なポジションで「パーツのひとつ」としてプレーすることを求められると、その良さが半減してしまうような印象を受けた。

言い方を替えると、田中陽子は「チームの中心としてプレーすると輝ける」けれども、現状では「チームの歯車のひとつとしては使いづらい」選手だとも言えるのではないだろうか。
田中陽子が INAC神戸であまり出番を与えられないのも、このあたりに原因があるように個人的には感じた。
しかしなでしこジャパン入りという大きな目標を実現するためにも、この課題は今後、避けては通れないところだろう。

ただし田中陽子の積極果敢に攻撃参加するプレーは彼女の持ち味でもあるので、その良さを無くしてほしくはない。
それを残した上で、例えばサイドでプレーした場合でも、普段は黒子に徹しながらも機を見て大胆にカットインしていく、などのプレーの使い分けができるようになれば、チームの中でもより機能できる選手になるのではないだろうか。

何より田中陽子には、「運動量」と「向上心」という強力な武器がある。
10代の頃に「天才」ともてはやされた選手たちが大人になると普通の選手になってしまう、という例は枚挙にいとまがないけれど、その大半は(怪我などを除けば)「運動量」「向上心」そして「フィジカル」のいずれかが欠けているパターンだと僕は考えている。

しかし田中陽子に現状足りないのは「フィジカル」だけだ。
そしてそのフィジカルの部分も、INACの先輩で同じ身長の川澄奈穂美あたりを見倣って鍛えていけば、充分に世界で戦える体を作ることは可能だろう。

彼女は今後の女子サッカー界の将来を担う、キーパーソンの一人だと僕は考えている。
ぜひ、今後のさらなる飛躍に期待したい。

ヤングなでしこの築いた「明日への架け橋」

今大会の日本は優勝こそ逃したけれども、史上最高の3位に入って6試合を経験。
また成績だけでなく、テレビ視聴率はどの試合も10%を超え、3位決定戦では 29,427人とJリーグの人気チーム並みの大観衆を集めた。オリンピックが終わって一段落しつつあった女子サッカー界に、フレッシュな話題を振りまいた功績は大きい。

「ヤングなでしこ」のブランド名もすっかり浸透して、2年後のU-20女子ワールドカップでもきっと注目を集めることだろう。「スター性のある選手たちがいて、メディアが取り上げれば、若年層のサッカーでも人気コンテンツになれる」という実績ができたことで、もしかしたら男子のU-20やU-17も、今後はより注目されるようになっていくかもしれない。

優勝できなかったことで選手たちには悔しさもあったろうけども、客観的に見れば今大会のヤングなでしこのチャレンジは “大成功” に終わったと言っていいと思う。

そしてこの興奮も冷めやらない中、2週間後の9月22日からは U-17女子ワールドカップがアゼルバイジャンで開催される。
この大会にも日本は参加を決めているのだけれども、U-17日本女子代表 “リトルなでしこ” は、U-20代表をも上回る「黄金世代」との呼び声が高い。
MFのキャプテン成宮唯を筆頭に籾木結花、隅田凜、FWの増矢理花、DFの乗松瑠華と逸材揃いで、先輩たちと同様、「優勝」を視野に入れて戦う期待の星たちだ。

なでしこジャパンやヤングなでしこの活躍で女子サッカーのファンになった方々にはぜひ、この『リトルなでしこ』たちにも注目していただきたいと思う。

何はともあれ、初の自国開催という重責を担いながら戦った U-20女子代表の挑戦は終わった。

勝利の味と敗北の苦さの両方を味わいながら、最後は “勝利の笑顔” で締めくくったヤングなでしこたちの冒険。

その結果は希望に満ちたものに僕には思えたのですが、皆さんはいかがだったでしょうか。

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