「百獣の王」と言えばライオンのことである。

食物連鎖の頂点に立つ動物界の王者ということなんだけども、普段のライオンはゴロゴロと寝転がったりして、のんびり過ごしている事も多い。

しかし、いったん狩りとなれば百獣の王はその隠し持った牙をむく。

動物園で間近で観た時のライオンは大人しかったけど、こいつと檻の外で出会ったら、人間なんぞひとたまりもないなと確信できるだけの威圧感と風格に満ちていた。

Jリーグに君臨する「絶対王者」

ところで僕は生まれつき判官びいきな性格なためか、いわゆる「王者」というものがあまり好きではない。
プロ野球ではずっとアンチ巨人だったし、Jリーグができた頃もヴェルディ川崎は天敵だった。
余談ながら今のヴェルディはか弱くなってしまった感があるので、逆に応援していたりもする。

そんな僕にとって、目下Jリーグ3連覇中の鹿島アントラーズは強大な「ライバル」である。

決して鹿島が嫌いということはないのだけれども、勝負事はライバルがいた方が盛り上がるものだ。
Jリーグ草創期からずっと強豪で居続けている鹿島アントラーズは、そういうわけで僕にとってはずっとライバルであり続けているチームなのである。

Jリーグ第8節は、その鹿島アントラーズと、僕の地元の横浜マリノスの対戦カードが組まれた。

ここまでの順位はアントラーズが5位に対してマリノスは6位。
両チームとも上位を狙える位置につけ、順位表だけを見れば実力は拮抗しているように思えた。

しかしこれを昨年度の順位と照らし合わせると、昨年の10位からランクアップしたマリノスに対して、昨年優勝のアントラーズからすると、5位という順位はかんばしいものではない。
3連覇という偉業を達成したことによって、今シーズンはモチベーション管理が難しくなっている旨を鹿島のオリベイラ監督も口にしていた。

不振に苦しむアントラーズと、好調マリノス。

日産スタジアムでのホームゲームであれば、マリノスにも充分に勝ち目はあると僕は考えていた。

王者に挑む横浜マリノス

試合は立ち上がりからアクティブな攻防となる。

マリノスは「キング」中村俊輔を軸に、両サイドからの山瀬功治、坂田大輔の仕掛けからチャンスをつくる。
アントラーズも前線のマルキーニョスと興梠慎三が躍動し、そこに小笠原満男、野沢拓也らから好パスが供給された。
両チームが積極的に攻撃を仕掛け、得点の匂いの漂うシーンが続いた。

そして先制したのはアントラーズ。
左サイドのFKから小笠原がピンポイントのクロスを上げ、これがイ・ジョンスの頭にドンピシャで合う。
ヘディング自慢の中澤佑二に競り勝ってゲットした、見事なゴールであった。

しかしその9分後には、マリノスも同点に追いつく。
中村俊輔のパスから右サイドに抜け出した波戸康広がクロス。
これを渡辺千真がヘッドで押し込み、試合を振り出しに戻した。そして前半は同点のまま終了。

予想にたがわぬ好ゲーム。

両チームがアグレッシブな攻撃を見せながらも、DF陣が力強い守備でそれを跳ね返す。

飯倉大樹と曽ヶ端準の両ゴールキーパーのファインセーブも光っていた。
後半もどちらに転ぶか分からない実力伯仲の攻防が期待された。

しかし、王者には王者たる理由がある。
ホームの大観衆の前でハイテンションに攻め続けた前半のマリノスに対して、アントラーズはその奥に何本もの鋭い「牙」を隠し持っていた。

そして牙をむいた王者が、後半のマリノスに襲いかかることになる。
その急先鋒となったのは、ライオンのような美しい立て髪を持つブラジル人ストライカー、マルキーニョスであった。

牙をむいた王者、鹿島アントラーズ

後半早々の51分、右サイドの内田篤人、野沢の見事なパスワークからマルキーニョスが抜け出し、絶妙なグラウンダーのクロス。
これに小笠原が合わせて、あっさりとアントラーズが突き放す。

ここから王者は、その強さを遺憾なく発揮し始めた。

的確なパスワークでマリノスの中盤に的を絞らせずボールを支配。
DFラインも常にバランスのとれた組織的なブロックを形成し、無理に飛び込むようなことなく沈着冷静にマリノス攻撃陣を押さえ込んだ。
派手さはないが、確実に相手の急所を握りつぶすような、まさに横綱相撲。
その圧力にマリノスはじわじわと特長を奪われ、次第に単発でしかチャンスを作れなくなっていく。

そして60分、アントラーズはGK曽ヶ端からのパスを野沢が一気に前線へ放り込む。
このボールをマリノスDF陣の要、中澤が処理にもたつく隙にマルキーニョスがかっさらい、そのまま弾丸シュート。
これが突き刺さって、アントラーズが3点目をゲットした。

これで勝負あり。

マリノスも反撃を試みるものの、王者アントラーズはことごとくその攻撃を跳ね返し、2点差を残したまま鹿島アントラーズが快勝でゲームを締めくくった。

僕にとっては悔しい結果に終わったものの、木村和司監督も語ったとおりの、認めざるを得ない完敗である。

最強の助っ人外国人、マルキーニョス

鹿島アントラーズの主役と言える選手を一人挙げるとしたら、誰になるのだろうか?

昨年度から感じていたことだけども、僕がそれを選ぶとしたら小笠原満男でも本山雅志でもなく、マルキーニョスになる。

そしてこの日も、マルキーニョスは出色のパフォーマンスを見せていた。
要所要所でチャンスに絡み、鹿島の攻撃陣をリード。
そればかりか、試合を通じて圧倒的な運動量で守備にも貢献。中村俊輔にプレッシャーをかけてボールを奪うなど、前線からのディフェンスにも多大な貢献を果たした。
そして極めつけは、自身Jリーグでの100ゴール目となるダメ押し点。

この日のマルキーニョスには文句のつけようが無い。僕が採点するなら10点満点をあげてもいいと思えるほどの、完璧なパフォーマンスであった。

マルキーニョスが初めて日本に来たのは2001年。
以来、東京ヴェルディ、横浜マリノス、ジェフ市原、清水エスパルス、そして鹿島アントラーズとJリーグのチームを渡り歩いた。
その間にはアキレス腱断裂の大怪我も負い、一時はサッカーから離れていた時期もある苦労人である。

来日当初から運動量とアグレッシブな姿勢は買われていたものの、はじめのうちは大きな脚光を浴びる選手ではなかった。
守備も頑張る使い勝手の良さから複数のチームでプレーする機会があったけれど、Jに数多くいるブラジル人助っ人の一人に過ぎなかった。

そんな彼も徐々に技に磨きをかけ、08年に32歳にして初のJリーグ得点王に輝く。
そしてこのマリノス戦で達成した通算100ゴール。
34歳となった今でも、王者鹿島アントラーズのバリバリのエースストライカーである。

マルキーニョスは決して華麗なテクニックを持った選手ではない。
身長も174センチと、恵まれた体格とは言えない。
しかし豊富な運動量に加えて、近年では球際の強さとボディバランスに磨きをかけてきた。
結果的に、攻撃においてはボールを失うことが非常に少なく、逆に守備に回れば相手から直接ボールを奪取できるほどの強さを身につけた。
攻守において、どんな場面でもガツガツと体を当ててきて決して倒れない、相手にとって極めて嫌なプレーをする選手へと変貌を遂げたのである。

34歳になっても、マルキーニョスのプレーは全く衰えることを知らない。
むしろ年々成長し続けているようにすら思える。

日本人ストライカーにとっての最高のお手本

マルキーニョスのようなプレーを、日本人選手がする事はできないのだろうか?

マルキーニョスの体格や運動能力は日本人と何ら変わらない。
つまり、日本人がマルキーニョスのようになる事は充分可能である。

その運動量と体の強さ、ハートの強さ。
もしマルキーニョスが日本人だったら、日本代表にとってこの上なく頼りになる存在となっていただろう。
そんなマルキーニョスは、日本人ストライカーたちにとっての最高のお手本となりうる。

そのプレーを間近で見ている興梠慎三や大迫勇也には、ぜひ彼が元気なうちにマルキーニョスのプレーを吸収していってもらいたい。
ライバルチームを応援する人間からすれば、マルキーニョスほど嫌な選手はいない。
そしてもし日本人ストライカーたちがマルキーニョスのようになれたとしたら、他国の代表チームにとって、最高に嫌な存在になることは間違いないはずである。

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