王者を倒した「三銃士」と家長昭博/Jリーグ@セレッソ大阪 2-1 鹿島アントラーズ

かつて2トップの戦術が全盛だった頃は、「最強の2トップ」というのがけっこう話題にされていたように思う。

Jリーグならやっぱりカズと武田だろう、世界ではロマーリオとベベットだ、等々。
しかしワントップや3トップが流行してきた近年では、あまりこの手の議論がなされなくなった。

ポジションの概念が流動的になった影響もあるんだろうけど、ベタなサッカーファンである僕としてはちょっぴり寂しい気持ちもある。
「最強の3トップは誰か」というような特集をどっかで見てみたいなーと、今でも少し期待していたりする。

ちなみに僕が考える、近年最高の3トップはロナウジーニョ、サミュエル・エトー、リオネル・メッシのいた頃のバルセロナだ。
3人が3人とも世界ナンバーワンクラスの名手、それでいてこのトリオが恐ろしく機能していたわけだから凄い。

メッシはまだ若く、ロナウジーニョもその後に不調に陥ったので、実際このトリオが輝いた時期は短かったけれども、それでもよくこんなトリオが実現したなぁと思う。

セレッソ大阪、魅惑の攻撃トリオ

ところがどっこい(死語)である。レベルは違えど我らがJリーグでも、魅惑的なトリオが揃ったチームがついに登場したのだ。

そのチームはセレッソ大阪。

去年までは香川真司、乾貴士の2シャドーが売りだったセレッソに、今年からその2人に匹敵する才能が加わった。

ガンバ大阪から入団した家長昭博。

家長の加入で、セレッソには香川、乾、家長という代表クラスの才能を持ったテクニシャンが揃い、ここに「魅惑のトリオ」が結成された。

そして、中でもひときわ眩い輝きを見せているのが、新加入の家長昭博である。

真の天才プレーヤー、家長昭博

家長昭博は掛け値なしの「天才プレーヤー」だ。

多くの代表選手を輩出した名門ガンバ大阪ユースの中でも、とびきりの才能を持った選手として将来を嘱望され、高校2年時に飛び級でトップ昇格を果たした天才ドリブラー。
その技巧を武器に05年のワールドユースでも大活躍し、ユース代表の大熊清監督から「家長は世界に通用していた」と評された。

その後はガンバでも飛躍が期待されたものの、天才特有のムラッ気からパフォーマンスが安定しない時期が続く。

08年に期限付きで大分トリニータへ移籍すると、シーズン開幕前の練習中に右膝前十字靭帯を損傷する大怪我を負い、ほぼ1シーズンをリハビリに費やすこととなった。
復帰後の09年途中からはレギュラーに定着するものの、かつてガンバの期待の星として日本代表にも選ばれた頃を思えば、家長は既に “終わった選手” と見られていた節もあったのである。

そんな家長昭博が、いま素晴らしいパフォーマンスを披露している。

トップ下の位置に入りセレッソの攻撃陣を牽引。

得意のドリブルは健在で、さらに以前に比べて、激しい当たりでも倒れないだけの強さを身につけている。

その高いキープ力をベースに、視野の広いパスでゲームメイクもこなし、そしてチャンスと見るやすかさず強烈なシュートを放つ。

今シーズンの家長のパフォーマンスに、昔の彼しか知らなかった僕は驚いた。
数々の苦難を経験した家長昭博は、以前よりも遥かにスケールの大きい選手へと成長を遂げていたのである。

セレッソの「三銃士」は3人ともが素晴らしい才能を持っている。
しかし現在のプレーだけで見れば、エースは完全に家長だ。
若い2人を操るその姿は、セレッソの「王様」とも言うべき風格に満ちていた。

王者を下した「三銃士」

3人の活躍もあり、この試合でディフェンディングチャンピオンの鹿島アントラーズに土をつけたセレッソ。
ただし実際のところ、そのコンビネーションはまだ完全とは言えない。

家長の加入で個人能力のレベルは間違いなくアップしたけれども、トリオとしては昨年の香川・乾のコンビの完成度にはまだ達していないと言えるだろう。

しかし彼らのサッカーセンスを考えれば、トリオの成熟は時間の問題である。

昨年の2枚看板に家長が加わったセレッソ。魅惑の「三銃士」を擁するその攻撃力は、間違いなく今後も他チームの脅威となっていくだろう。

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