Photo by kanegen

9月に発生した尖閣諸島の中国漁船衝突事件をきっかけに、日中間の緊張が高まっている。

先日には YouTubeに中国漁船が衝突する瞬間の映像が流出。
その緊張に拍車を掛けることとなった。

これに対して日本のサッカー協会関係者が「何でこんな時期に…」とボヤいていた、という記事を目にした。

そう、日本はいま中国に U-21代表チームを派遣している。
現在開催中のアジア競技大会に参加するためだ。

そして間の悪いことに、そのアジア大会で日本の初戦の相手となったのが、中国代表だったのである。

緊迫した開幕を迎えたアジア大会

アジア競技大会、通称アジア大会は、アジア各国が色々な競技で頂点を競う、いわばアジア版のオリンピックである。

アジア大会におけるサッカー競技は、もともとはA代表が参加できるレギュレーションだった。

しかしアジアカップなど他の類似の大会との差別化を図るために、2002年大会よりオリンピック同様の U-23のチームが参加する方式へと、大会のルールが変更される。

さらに日本や中国などの強豪国は2年後のロンドンオリンピックを視野に入れて、そのオリンピックを目指す世代である U-21チームでこのアジア大会2010に臨んでいた。

ところが前述の尖閣諸島問題の影響から、中国入りしてからの日本チームには様々な試練が待ち構えていた。

チームを狙った暴動やテロを警戒して、日本代表には厳重な中国政府の警備がつく。

そして移動の節目節目には入念な安全チェックが行われ、選手たちはそのたびに時間を拘束されることになった。

さらにやっと練習を始められるかと思えば、突然の練習場での練習制限を通告されるなど、もやは「お約束」ともなった “アウェーの洗礼” を受けることになる。

そんなこんなで日本は試合が始まる前から、有形無形のハンデを抱えてしまっていたのである。

ところで、それにしても最近は中国での主要国際大会の開催が目立つ。

僕が認識しているだけでも、今年に入ってから5月の AFC女子アジアカップ、10月の AFC U-19選手権、そしてこのアジア大会と、中国で3回もの大きな大会が開かれているのだ。
このあたり、高度経済成長に湧く中国の勢いを感じさせる。

そして中国での大会と言えば、もうすっかりお馴染みになったのが、日本に対する地鳴りのような大ブーイングである。

先の U-19の初戦ではブーイングで君が代が掻き消されたほどで、あまりにも相手チームに対する敬意を欠いた中国サポーターの振る舞いに、見ている僕も怒りを覚えたほどだった。

中国が絡んでいない試合ですらこれなのだから、日本と中国の試合ならばそれ以上の蛮行も考えられる。

そんなわけでこのアジア大会は、初戦から極度の緊迫ムードの中で幕を開けることになったのである。

中国を圧倒した日本代表

試合前の国歌斉唱ではしかし、予想されていたほどの大ブーイングは起こらなかった。

どうやら中国政府から、ブーイングを取り締まる通達が出ていたらしい。

とりあえず試合は落ち着いた雰囲気でのスタートを迎えることができたけれども、それでも試合展開次第ではどうなるか分からない。

そんな緊迫感の中で、キックオフのホイッスルは吹かれたのである。

ちなみにこの大会、日本が U-21のチームで臨んでいるのは前述のとおりだけれども、さらに日本は、U-21の中でもベストではないメンバーで大会を迎えていた。

ドイツで活躍する香川真司や、権田修一などJ1でレギュラークラスの選手たちは今大会には不参加。
結果的に、大学生も多いようなメンバー構成となった。

そんな戦力面と場外での雑音、そして “完全アウェーの中国戦” という状況から苦戦もあり得ると予想された日本だったけれども、周囲の心配とは裏腹に、日本は立ち上がりから素晴らしいプレーを披露する。

序盤から猛攻を仕掛けた日本は早々の 11分、中国のクリアが小さくなったところをキャプテン山村和也がヘッドで跳ね返し、そのボールを永井謙佑がダイレクトでフワリと浮かして DFラインの裏へ。

このパスに抜け出した山崎亮平が GKと1対1となって、これを左足ボレーで決めた日本がまず1点をリードした。

理想的な時間帯に先制点をゲットした日本は、ゲーム内容でも中国を圧倒。

日本の前線からのアグレッシブな守備の前に、中国はロングボールを放り込むだけの単調な攻撃に終始する。

ディフェンス面では特に、この日はセンターバックの2人が素晴らしかった。
鈴木大輔と薗田淳のコンビはカバーリングの受け渡しなどのコンビネーションも見事で、この中央の安定した守りが日本の快勝の大きな要因のひとつになっていたと言えるだろう。

しかし、この試合で最も輝きを放った男は、先制点を挙げた山崎でもなければ、センターバックの2人ともまた違ったように僕には思えた。

この試合の「顔」となった選手は、1点目をアシストした攻撃の急先鋒、エースストライカーの永井謙佑だったのである。

永井謙佑の見せつけたポテンシャル

永井謙佑という名前をあまり聞いたことがない、という方もいらっしゃるかもしれない。

実際、永井謙佑はサッカー界のエリートではない。
どちらかと言えば裏街道を歩んできたような選手である。

永井謙佑が初めて表舞台に登場したのは、4年前の高校選手権。
初出場した九州国際大学付属高校は、過去にベスト4経験もある強豪・富山第一を相手にした初戦で 5-0と圧勝して、高校サッカー界に衝撃を与えた。

そしてそのチームのエースとして君臨していたのが、永井謙佑だった。

しかし全国的には無名選手に過ぎなかった永井は、高校卒業後はプロではなく大学に進学する。

その後、再び永井謙佑の姿を見たのは、2008年の AFC U-19選手権だった。

当初レギュラーではなかった永井だったけれども、この世代のエース格のひとりと見られていた柿谷曜一朗から大会途中にポジションを奪うと、イラン戦でハットトリックを記録するなど大活躍。

チームはベスト8で敗退したものの、一躍、国際舞台でもその名を知らしめることになった。

永井は福岡大学でも、2009年の総理大臣杯でチームの初優勝に貢献するなど活躍。
また同年のユニバーシアードでも代表に選ばれ、7得点を挙げて大会得点王に輝いた。

さらに並行してアビスパ福岡やヴィッセル神戸でも強化指定選手としてプレーして、プロとして公式戦にも出場することになる。

そして次期オリンピック世代の有望株として、今年の南アフリカワールドカップでは香川真司らと共に日本代表のサポートメンバーにも選ばれた。

その活躍から 10以上のJリーグクラブが獲得に動いているとも言われ、長谷部誠の所属するヴォルフスブルクなど海外のチームからも練習参加の誘いを受けている。

その永井謙佑が、このアジア大会の中国戦で爆発した。

もともと 50メートルを 5秒8で疾走するスピードは評価されていたけれども、この試合ではスピード以外の総合力の高さもまざまざと見せつけたのだ。

スピードと高いボールテクニックを活かしたドリブル突破はもちろんのこと、先制点をアシストしたようなトリッキーなパス、パンチのきいたシュート、そして空中戦でのポストプレーにもことごとく競り勝った。
さらに驚いたことに、精力的なフォアチェックを仕掛けてディフェンス面でも大きく貢献していたのである。

そして、後半になっても運動量の衰えない、そのスタミナも驚異的なものだった。

既に山崎の1点目をアシストしていた永井だったけれども、圧巻だったのは2点目だ。

58分、スローインから右サイドを抜けだした東慶悟のクロスが低く入ったところに、頭から飛び込んだ永井謙佑は、何とこれを頭で地面に叩きつけるようにしてトラップ。
そのまますぐに体勢を立て直すと、左足で中国ゴールにシュートを叩き込んだのである。

解説の金田喜稔さんいわく「あのヘディングはミス」だそうだけど、それでもその後にすぐ食らいついたスピードは半端ではない。

永井がまさに、その規格外のスケールを見せつけた1点だった。

日本はその後、フリーキックからの鈴木大輔のゴールで突き放して、けっきょく 3-0と快勝。

しかし東アジアのライバルを一蹴したチームの中でも、永井謙佑の才能は頭一つ抜けていたと言ってもいいだろう。

この大会の残り試合で、永井のポテンシャルはどこまで披露されるのだろうか。

そのプレーに俄然、期待をせずにはいられない。

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