なでしこジャパン、死闘を制した誇り高き勝利/AFC女子アジアカップ@中国 0-2 日本

年間に数えるほどの回数だけども、鳥肌が立つほど感動するゲームがある。

僕はサッカーファンなのでいろいろな試合を観るし、どの試合もそれぞれの面白さというのがあるけれども、それでもたまに「鳥肌の立つゲーム」を体感すると、つくづくサッカー観戦はやめられないなと思う。

そしてこの日、そんな年に数回だけのゲームが訪れた。

なでしこジャパンが戦った、AFC女子アジアカップの3位決定戦である。

中国で迎えた「絶対に負けられない試合」

以前にも書いたけれども、この試合は勝てば来年のワールドカップ出場が決まり、負ければ出場できないことが決まるという、掛け値なしに「絶対に負けられない試合」であった。
しかも試合会場は中国で、そこで中国を相手に戦うという「完全アウェー」のゲームである。

想像されたように地元サポーターからは強烈なブーイングが浴びせかけられ、日本にとっては今大会で最も過酷なゲームとなった。

しかしこの大事な大事なゲームで、なでしこジャパンは見事な戦いぶりを披露する。

試合は立ち上がりから日本のペースで展開する。

中盤の底に宇津木瑠美を起用したこともあって守備が安定し、日本はゲームの主導権を握ることに成功した。

攻撃に関してはピッチ状態の悪さもあって、得意のパスワークを思ったように発揮できない場面が目立っていたものの、時間を追うごとにシンプルにボールを繋ぐことができるようになっていった。

過大なプレッシャーがかかるこの試合、僕は戦前、日本はかなりナーバスになって試合に入ってくるのではないかなと思っていた。

しかしそれは全くの杞憂に終わったのである。

なでしこたちはこちらが考えている以上にたくましかった。

これほどの重要なゲームに臨んでも過緊張におちいらず、いつも通りの自分たちのプレーを実行できていたのだ。

このメンタルの強さは本当に素晴らしい。

結果的に、このことが試合を分ける最大のポイントになったと言っても言い過ぎではないだろう。

そして最後に試合を決定づけたのは、なでしこジャパンが誇る「2大エース」の活躍だったのである。

日本の切り札となった2大エース、澤穂希と宮間あや

この日のなでしこジャパンは、結果的に2得点を奪って中国に快勝を果たす。

そしてその2点とも、日本のエースとも言うべき2人、澤穂希と宮間あやから生まれたものだった。

1点目が生まれたのは前半 18分。ゴール前、直接狙える距離の FKから、宮間が意表をついてフワリとしたボールを上げる。そこに頭で合わせたのが澤だった。

そのヘディングの軌道はクロスバーに阻まれるものの、こぼれ球になでしこの選手たちが2人3人と殺到し、混戦の中、最後は安藤梢が押し込んだ形となって、日本が喉から手が出るほどほしい先制点をゲットした。

決して美しいゴールではなかったけれども、どんな形であっても結果が求められるこの試合においては最高の形で奪ったゴール。
泥くさすぎるこの先制点は、まさにこの試合にかける日本の執念が乗り移ったかのような気迫のゴールであった。

この得点で完全に主導権を握った日本は、その後も幾度かのチャンスを作りながらゲームをリードしていく。

そして後半 62分、再び FKの場面から宮間のキック。
これがゴール前でマークを外した澤にドンピシャで合い、そのバックヘッドは完璧な放物線を描いて中国ゴールへと吸い込まれていった。

これで2対0。リードを広げた日本は、その後も中国の追い上げをしのぎきり、極めて重要なこの試合を制したのである。

この得点の場面以外でも、2人のプレーは際立っていた。

澤は高い展開力で中盤の底からゲームをメイクし、守備においても急所をケアする守備で大きく貢献していた。
宮間も持ち前の高いテクニックを随所に披露し、セットプレー以外の場面でも日本の攻撃の起点となっていた。

そして何と言っても、ともに海外でプレーし、ワールドカップもオリンピックも戦っている2人の持つ豊富な経験が、チームを落ち着かせたことのメリットは非常に大きい。

特に澤は31歳となったものの、国際Aマッチ150試合以上の出場数を誇る大ベテランである。
この日のような大きなプレッシャーのかかる大一番で、彼女のような修羅場を経験した選手がいるのといないのとでは、チームのパフォーマンスも全く違ってくるだろう。

澤のような「切り札」を擁していたことが、日本の大きな勝因の一つであった。

なでしこジャパン、誇り高き勝利

澤と宮間、2人のエースの活躍もあってこの過酷な決戦を制したなでしこジャパン。
肉体的にも精神的にも大きな負荷のかかったこのゲームを勝利したのは、非常に意味のあることだった。

もちろんこの勝利でワールドカップ出場の切符を手にしたこともあるけれども、こういった修羅場を乗り越えたことが、選手たちの更なる成長において重要な意味をもってくることだろう。

特に鮫島彩や宇津木瑠美、熊谷紗希らの若手にとっては、この経験はかけがえのない財産になるのではないだろうか。
そういう意味でも、この勝利は今後のなでしこジャパンにとって忘れることのできない歴史的な勝利となった。

試合終了のホイッスルが吹かれた後、澤穂希の眼には涙が光っていた。その姿が、何よりも雄弁にこの勝利の重要性を物語っていたように思う。

そこには、必勝を義務付けられた死闘を制したことからくる安堵感と、達成感が入り混じっていたように僕には感じられた。

人生で嬉し涙を流すことは、よくよく考えてみるとそう多くはないだろう。
僕は30年以上生きているけれども、嬉し泣きをしたことは1回あるか無いかくらいである。
本当に感極まる瞬間というのは、それくらいに稀なことだと思う。

もちろん数々の勝負を日常的に体験しているスポーツ選手と、僕のような一般人とを比較するのは無理があるけれども、それでも澤の涙は、この勝利がどれほどの意味を持つのかを改めて僕たちに教えてくれた。

2点を奪って迎えた終盤、一気呵成に攻めてきた中国の猛攻をしのぐ日本の姿は、鳥肌が立つほど感動的だった。

そしてその先に見られた澤の涙には、思わずもらい泣きしてしまうほどの重みがあった。

僕のようにサッカーの試合をむさぼり観ているサッカー中毒者であっても、これほどの感動を味わえる試合にめぐり逢う機会は、年間でもそう多くはない。

そんな試合を見せてくれたなでしこジャパンには、僕はねぎらいと同時に感謝の気持ちを贈りたいと思う。
魂のこもった試合を見せ、この死闘を勝利したなでしこジャパンは、文句なしに僕たち日本人の代表である。

そして僕は、自分たちがこれほど強く美しい代表チームをを持っていることに、誇りを感じるのである。

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