当ブログでは国内外を問わず、ダービーマッチをネタにした記事が多い。
それは僕自身が「面白そうだと思う試合」をピックアップして観戦しているのが理由なんだけれども、ダービーマッチは普通のリーグ戦の試合と比べて、やはり「いっそう盛り上がる試合」というイメージがある。
海外では両チームの力の差があっても、ダービーだけは白熱の勝負になる、というのがデフォルトだし、実際に下位のチームが上位のチームを食ってしまうことも珍しくはない。
そして現在のJリーグで、同じ都道府県内にホームタウンを構えるチーム同士のダービーマッチと言えば「茨城ダービー」「埼玉ダービー」「千葉ダービー」「東京ダービー」「神奈川ダービー」「静岡ダービー」「大阪ダービー」「福岡ダービー」あたりが挙げられる。
ちなみに神奈川は4つのJクラブが存在するので、ここは代表して「横浜ダービー」としたい。
このうち、現在J1で対戦が見られるのは「埼玉ダービー」「静岡ダービー」「大阪ダービー」の3つということになる。
埼玉と静岡は、言わずと知れた日本有数のサッカーどころである。
それに対して大阪は、以前は「サッカー不毛の地」と呼ばれたほどの野球王国だった。
しかしJリーグの発足以降、特にガンバ大阪が牽引する形で、大阪のサッカー人気はじわじわと高まっていく。
そして昨シーズンのJ1ではガンバ大阪が2位、セレッソ大阪が3位と好成績を残し、揃って AFCチャンピオンズリーグに出場。
大阪は今や、「新しいサッカーどころ」と言ってもいいほどの、サッカー先進地域となった。
となれば自然と、ガンバとセレッソが対戦する大阪ダービーは、大きな注目を集めるようになる。
実際、昨年の大阪ダービーは2試合ともなかなかの好ゲームだったし、今年の AFCチャンピオンズリーグで両者の対戦が実現した時も、白熱の好勝負が展開されていた。
そして迎えた、今季3度目となる大阪ダービー。
ともにそれぞれ、先日のA代表の日観戦でも活躍した遠藤保仁、清武弘嗣というエースを擁する両チーム。
大阪長居スタジアムには、両軍合わせて今期最高の動員数となる、37,172人の観客が押し寄せた。
ちなみに僕もその中の一人として、この日は会場に足を運んでいたりする。
さあ舞台は整った、このダービーマッチが、面白くならないわけがない!!
…という僕の期待はしかし、ものの見事に裏切られることになる。
今回はハッキリ言おう。
この日の大阪ダービーは、とても4万人近い大観衆を集めるほどの価値はないような、たいそうお粗末なゲーム内容だったのである。
凡戦のダービーに見る「もうひとつのサッカーセンス」
スコアは 1-1。
これだけを見れば両軍譲らずの好ゲームも連想できるけれども、実際の試合はそうではなかった。
両チームともに、とにかくミスのオンパレード。
ゴールキーパーやディフェンス陣はそれなりに頑張っていたけれども、パスがとにかく繋がらない。
中盤でパスミスを連発したかと思えば、たまのチャンスにもシュートが枠を捉えない。
ジメジメした気候もそこに輪をかけて、観ているこちらもイライラが募っていくような展開が続いた。
ここまでミスが多かったのには、それなりに理由は考えられる。
ガンバは怪我で二川孝広、佐々木勇人らのキーマンを欠いていたし、橋本英郎も長期離脱中。
さらに宇佐美貴史も海外移籍したことで、中盤の駒が圧倒的に足りていなかった。
しかも、代役として先発に抜擢されたキム・スンヨンも前半32分で負傷退場してしまうなど踏んだり蹴ったりで、中盤の構成力はピーク時と比べて大きく低下していた。
セレッソの場合はさらに深刻である。
この1年間で香川真司、家長昭博、乾貴士と、チームの「顔」だった選手たちが相次いで海外移籍。
さらにアドリアーノ、ホドリゴ・ピンパォンら助っ人ストライカーたちも抜けてしまって、攻撃は壊滅状態。
昨シーズンの好調は見る影もなく、今シーズンはJ2降格も視野に入る13位まで低迷していた。
そこに3日前の代表戦でプレーした両チームのエース、遠藤保仁・清武弘嗣の疲労が加わり、さらに夜でも30度を超す猛暑が追い打ちをかける。
メンバーが揃わないことによる個人能力の低下と、コンビネーションの低下。
そして夏場の連戦から来る疲労。
このあたりが原因となって、チグハグな攻撃に終始してしまったのだろう。
ただ、それでも僕はあえて言いたい。
「あなたたち、プロですよね?」と。
この試合と同じ日に行なわれたなでしこリーグの試合、伊賀FC x AS狭山戦は、32.8度の猛暑の中、真昼の12:00にキックオフされ、選手3人が熱中症で病院に運ばれたそうだ。
それはそれで決して良いことではないのだけれども、アマチュアの、まして女性の選手がそこまで頑張っているのに、
年俸数百万〜数千万円を稼ぐJリーガーが、「疲れたから良いプレーができませんでした」なんて言い訳にならないのではないだろうか。
先日の女子ワールドカップでは、なでしこジャパンが素晴らしい精神力を見せて初優勝を飾り(これも真夏の連戦)、それがきっかけで女子サッカー選手たちが苦しい環境の中でもサッカーに励んでいることが広く紹介され、澤穂希などは後輩たちの環境を少しでも良くするために、大会後もメディア出演をこなすなど、休みを惜しんで活動している。
そして男子の世界でも、海外組が中心のザック・ジャパンの選手たちは移動の疲れも見せず、韓国を相手に素晴らしい試合を披露してくれていた。
彼ら・彼女らの頑張りのお陰でいま、日本のサッカーは世間から大きな注目を集めている。
そしてその追い風を受けたこともあって、この日の長居には4万人弱の大観衆が詰めかけたのだ。
その結果の試合が、この体たらくである。
確かにこの日の大阪は暑かった。
歩いているだけでも顔をしかめるほどの暑さだったから、選手たちはそれ以上にしんどかったことだろう。
しかしそれでも、懸命に走るくらいのことはできたはずだ。
この日、一番走っていたのはガンバ大阪のイ・グノだったのではないかと個人的には感じたのだけども、グノは3日前の日韓戦に先発出場していた選手である。
他の選手たちがグノよりも走れなかったとしたら、それはただの怠慢だとしか言えないだろう。
そもそも、これだけの大観衆を前にしてモチベーションが上がらないのであれば、それはもはやセンスの問題と言ってもいいのではないかという気がしてくる。
三浦知良や澤穂希など、真の一流と言われる選手たちは、ことごとく大舞台で結果を出すものだ。
それは彼らが、「ここ一番」の勝負どころを見極め、そこで集中力をMAXまで発揮させられるセンスを持っているからである。
ところが、この日の両チームの選手たちはどうだっただろうか。
その「大舞台」の存在にすら気がつかず、気の抜けたような試合をした挙げ句、試合終了のホイッスルが鳴った瞬間に「あー疲れたー」とばかりにピッチに寝転がることがその選手の限界なのだとしたら、その人はもう日本代表に入ることも、一流のプロになることも諦めたほうがいいんではないかとすら僕は思ってしまう。
そう考えると、現在この両チームの中で日本代表に選ばている選手が遠藤と清武の2人だけなことも、何となく納得できるというものだろう。
試合後、両チームの選手たちがサポーターに挨拶をしに回る。
このとき両軍のゴール裏のサポーターたちからは、それぞれが応援するチームに対して大ブーイングが浴びせられていた。
僕はこんな光景は初めてお目にかかったけれど、このエピソードは、この試合の内容を如実に物語っている。
そう、ファンは決して、価値のない試合にお金を払って足を運ぶようなバカではないのだ。
両チームの選手たちはなぜ、自分たちがサッカーをするだけでお金を稼いでいれるのか。
その理由をもう一度、見つめ直してみるべきなのではないだろうか。
[ 関連エントリー ]