柴田華絵、「覚醒」の日韓戦/U-20女子ワールドカップ@U-20日本女子代表 3-1 U-20韓国女子代表

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因縁の日韓戦は「辛勝」でも「圧勝」でもなく、『楽勝』で日本に軍配が上がった。
そしてこういう勝ち方ができたのは、それだけ日本が実力で韓国を圧倒していたから、と言っていいのではないだろうか。

試合開始からわずか8分、柴田華絵のゴールで日本が先制。
15分には警戒していたチョン・ウナのゴールで追いつかれるも、直後の19分に再び柴田のゴールで突き放す。
そして37分、田中陽子のゴールでダメを押した。

前半に比べるとペースダウンした後半には得点が生まれなかったけれども、これは左サイドハーフで先発した田中陽子がサイドバックに下がった影響が大きかったように感じた。前線でゲームを作れる選手がいなくなったことで攻撃の構成力が低下し、韓国に反撃の余地を与えてしまったのではないだろうか。

吉田監督のこの采配には僕も疑問を感じたけれども、好意的にとらえれば、勝利をある程度確信した上で選手の組み合わせをテストしたとも考えられる。結果的には前線に田中陽子がいないとチームの攻撃力が低下してしまうことを改めて証明する形になってしまったけれども、勝利とともに「育成」も求められるアンダー世代の監督には、難しい部分が多々あることは理解できる。

なでしこジャパンの佐々木則夫監督も2010年のU-20女子ワールドカップでアンダー世代の指揮をとっているけれども、この時の佐々木監督も本来アタッカーの選手をサイドバックで起用するなど、観た人が「??」となるような采配が目立っていた。しかしなるべく多くの選手にチャンスを与えながら、「チームとしてのベスト布陣」と「選手個人のベストポジション」を探り、その上で勝利を目指すことは、A代表で勝つこととはまた違った難しさがあるはずだ。

何はともあれ、難敵の韓国に完勝してベスト4に進出したことは、充分に評価されて良いのではないだろうか。

柴田華絵の「覚醒」。

ところでこの試合のウーマン・オブ・ザ・マッチを挙げるとすれば、文句なしで2ゴールを挙げた柴田華絵になるだろう。

柴田は中学・高校時代は鹿児島の名門・神村学園で技を磨き、現在は浦和レッズ・レディースでプレーするアタッカーである。
レッズでは主にサイドハーフとして起用されていて、153cmと小柄ながらも切れ味鋭いドリブルが持ち味。

大きな大会では時々、大会を通じて急成長を見せる選手が現れるけれども、今大会の日本で一番の成長株は、柴田華絵で間違いないところだろう。

僕はレッズでの柴田のプレーはこれまで何試合も観ているけれども、「ドリブルが上手くて、スピードがあって、よく走る選手」という以上の印象を持ったことはなかった。7月まで10代だった柴田がそのポテンシャルを発揮し切れていなかったこともあるだろうけれども、今大会はよりゴールに近い位置で起用されていることで、これまで表に出てこなかった才能が一気に開花したようにも思える。

ニュージーランド戦の時点で、僕は柴田をサイドハーフで起用してほしいと書いたけれども、その後の2試合を観てからは少し意見が変わった。柴田華絵はやはり、ゴール前のエリアで最も活きるタイプの選手だと訂正をさせていただきたい。

ただし、柴田がいわゆる「トップ下」の選手ではないのでは、という印象は変わっていない。
4-2-3-1のフォーメーションを組むこのチームではトップ下に入っているけれども、実質的な役割は縦並びのツートップの2人目、セカンドトップのようなポジションに近いのではないだろうか。

柴田華絵の良さは、この日に挙げた2ゴールに集約されているように思う。
西川明花のポストプレーからのスルーパスに抜け出して、飛び出してきたGKの鼻先をかわすシュートを流し込んだ1点目。
そして、右から来たパスをワントラップで左に落としてマークを外し、そこから強烈なミドルを叩き込んだ2点目。

柴田がディフェンスラインの裏に抜ける意識が高いことはスイス戦を観ても明らかだったけれども、スイス戦ではそこからのシュートを外しまくってしまったためにそれが実を結ぶことはなかった。しかしこの韓国戦では、その意識が完璧な形となって先制ゴールに繋がっている。

そして圧巻だった2点目のシーンは、柴田の持つテクニックとアジリティー、そして(意外にも隠し持っていた)シュート力が発揮されたスーパーゴール。
なでしこジャパンでも、こんなゴールを決められるのは好調時の大野忍くらいではないだろうか。このU-20では、柴田華絵は間違いなく突出した技術の持ち主だと言えるだろう。

しかしその反面、柴田の課題は「視野の広さ」にあると僕は考えている。
ポジショニングやドリブル、細かいスペースでのテクニックなどの個人プレーは一級品だけれども、逆に「周りを使う」プレーはあまり得意ではなさそうだ。

例えばU-20でも視野の広い猶本光や田中陽子などは、ボールを受ける前に小刻みに首を振って、周囲の状況を事前にインプットしていることが分かる。しかし柴田はボールを受けてドリブルを開始してから次のプレーを考えているように思える部分があって、そのためかワンタッチパスは少なく、パスコースも基本的にドリブルコースとほぼ同じ方向が多いように感じる。

田中陽子がサイドバックに下がってから前線が機能不全に陥ったことからも、柴田はやはりトップ下でゲームを作る、というタイプではないように感じた。
つまり柴田を起用する場合、前目のポジションにゲームを作れる選手を入れる必要が出てくるだろう。

そしてこのU-20代表では、それが田中陽子だということになる。
ただし、この日は左サイドハーフで先発した田中陽子は、トップ下やボランチでプレーしていたこれまでに比べると、やや窮屈そうにプレーしているようにも感じられた。

田中陽子は田中陽子で、ベストのポジションはやはり中盤のセンターということになるのだろうけれど、田中陽子がトップ下に入ると柴田を起用することができない。しかし、田中陽子をボランチで起用すると、キャプテンの藤田のぞみを起用することができなくなって中盤のディフェンス力が低下する、というジレンマをこのチームは抱えている。
ここは吉田監督としても、頭を悩ませている部分なのではないだろうか。

“巨人” ドイツとの準決勝

とにかくこの日の勝利で、日本はベスト4に進出が決定。
U-20女子ワールドカップでのベスト4は史上初ということで、日本のサッカー史に新しい歴史が刻まれることになった。

ただし、A代表がワールドカップチャンピオンであること、そして日本が今大会のホスト国であることを考えれば、ベスト4進出はあくまでも最低限のノルマだと言えるのではないだろうか。
選手たちもここで満足はしていないと思うけれども、ここまで来たらぜひ “優勝” を狙ってもらいたい。

しかし、準決勝の相手となるディフェンディングチャンピオン、ドイツの強さは強烈だ。
優勝候補の一角と見られていたアメリカに 3-0、北欧の伝統国ノルウェーに 4-0というその勝ちっぷりもさることながら、プレーの質も頭ひとつ抜けている印象を受ける。

ドイツが際立っている部分は、まずはその組織的な守備だろう。
アメリカでさえも遅攻の際にはなかなか前にボールを運べなかったほど、ドイツの守備組織は完成されたものだった。そして実際に、ドイツがここまでの4試合で許した失点は「ゼロ」である。
ドイツと同じような特徴を持つチームは今大会では見当たらなくて、U-20世代では最も完成された「大人のチーム」だと言えると思う。

そして攻撃面では、既にA代表でも活躍していてアルガルヴェ・カップの日本戦でもゴールを決めたジェニファー・マロジャンと、ラモーナ・ペツェルベルガーの中盤のコンビ、そして大会通算5ゴールを挙げているエースストライカーのレナ・ロッツェンたちがキーマンになるだろう。

特にマロジャンはテクニックとパワー、運動量、戦術眼を併せ持ち、フィールドのあらゆる場所に顔を出すオールラウンダー。ドイツにとっては替えの効かない選手で、日本はまずこのマロジャンを止められるかどうかがポイントになってくる。

そしてロッツェンは、優勝した前回大会のアレクサンドラ・ポップを彷彿とさせるような、ドイツ伝統の本格的なセンターフォワードである。
このロッツェンの凄いところは、無理な体勢からでも相手がマークについていても、とにかくシュートを枠に飛ばす力があるところだ。
つまり日本としては完璧に崩されていなくても、ロッツェンにボールを入れられただけで失点に直結するリスクが生まれることになる。逆にドイツはロッツェンが居ることで、どんな場面からでもシンプルな攻撃で得点を奪うことができるのは大きい。

ドイツの攻撃力を考えるとある程度の失点は避けられないかもしれないけれど、まずは何とかディフェンスラインを高く保ち、ボランチの猶本、藤田らを中心に中盤でプレッシャーをかけ続けることが重要になってくるだろう。

そして日本の攻撃の際には、田中陽子、柴田、田中美南たちの2列目が、どれだけドイツの守備を撹乱できるかが鍵を握るのではないだろうか。

香川真司や乾貴士を見ていても、小柄でもアジリティーとテクニックのある日本の選手たちは、ドイツのディフェンダーたちが苦手とするタイプである。そう考えると、柴田や田中美南のドリブルは充分にドイツにも通用する可能性はあるだろう。
田中陽子も体は小さいけれど、ボールと相手との間に体を入れながらスッと入れ替わるようなプレーが上手い。それがうまく行けば大柄なディフェンダーでも抜き去ることができるし、駄目な場合でもファールをもらうのが上手いのも、田中陽子の特長の一つだ。そしてゴール前でフリーキックを得ることができれば、田中陽子の両足が火を噴くことになるだろう。

ドイツは日本を除いて考えれば、間違いなく今大会最強のチームだと言える。
そしてこれまで比較的戦いやすい相手との試合が続いた日本としては、今大会で初めて経験する「優勝候補とのガチンコ対決」にもなる。

苦戦は避けられないけれども、それでもホームで戦えるという地の利だけでなく、世界トップクラスの「個人技」という武器もあるのが日本の強みだ。
そして日本がその力を100%発揮することが出来れば、ドイツと言っても絶対に勝てない相手ではないだろう。

どちらにしても僕たちファンとしては、次はいよいよ「これぞワールドカップ」というスリルに満ちた試合を観ることができるのではないだろうか。

そしてなでしこジャパンが1年前に達成したように、”巨人” ドイツを沈める「ジャイアントキリング」を、リトルなでしこにも観せてもらいたいと願っている。

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