北島三郎の「まつり」という歌がある。
サブちゃんが「はぁ〜ん」と独特のこぶしを効かせながら祭りのロマンを歌い上げたインパクト絶大な名曲だけど、今日のゲームはそんなテーマソングがよく似合う一戦だった。
マリノス4-0の圧勝劇。
結果のインパクトもさることながら、内容はむしろ点差以上。
昨年10位のマリノスが、昨年2位のフロンターレを終始圧倒し続けての、文句なしの快勝である。
マリノスを牽引した天才、中村俊輔
まさに「お祭り」状態のゲームだった。
これには何よりも、マリノスファンである僕自身が驚いている。
マリノスは昔から、地味なサッカーがほとんど伝統になっているようなチームだ。
2連覇を果たした岡田監督時代でさえ、ねばり強く戦って勝利を拾うというイメージが強かった。
ここまでマリノスが、内容でも結果でも圧倒したゲームというのはどれくらいぶりなのだろうか?
僕にはあまり記憶にないほどである。
いったいマリノスに何が起こったのか?
一つは間違いなく、中村俊輔の加入だろう。
前節でも大活躍を見せた俊輔だったけど、今日のゲームでもチームの中核として好プレーを見せていた。
中でも、ポストに当たったシュートを相手ディフェンダーが何とかクリアーした、そのこぼれ球をペナルティエリア右外から決めた1点目は出色。
僕は思わず、元マリノスでJリーグの初代得点王、そして世界的ストライカーでもあったラモン・ディアスのプレーを想起した。
昔ながらのファンの方には、同じようにイメージされた方も多かったのではないだろうか。
まさにディアスに匹敵するような、芸術的一発であった。
俊輔の影響力の大きさは、今日の彼は後半17分という比較的早い時間帯に退いたにもかかわらず、4ゴールの全てが俊輔が交代するまでの間に生まれていることからも分かる。
本人も語っていたように今日はミスも多く、個人的には最高の出来とは言えなかった一戦だと思われるけど、それでも俊輔の存在感は絶大だった。
マリノスの「生ける伝説」、木村和司
そして昨年からのもう一つの変化といえば、木村和司監督の就任だ。
現役時代は日産および日本代表のエースとして長く君臨した、名手の中の名手。
しかし、Jリーグの監督としては今年がルーキーシーズンとなる。
日本サッカー界の伝説である釜本邦茂や奥寺康彦が、監督としてはパッとした成績を残せなかったことからも、やはり「名選手、名監督にあらず」。
カズシ監督もかなり苦戦するだろうと、開幕戦までの僕は考えていた。
ところが、である。
俊輔加入後の2試合、マリノスは近年まれに見るほどの素晴らしいサッカーを披露している。
少なくともここまでのカズシ監督は、賞賛に値する結果を残していると言っていいだろう。
もちろんシーズンはまだ長いため手放しで評価することはできないけども、これが秋まで続くようなら本物だ。
横浜マリノス、その潜在能力
そんな俊輔効果とカズシ効果によって、他の選手達も活きいきとしたプレーを見せ始めた。
今日の主役は文句なしに山瀬功治だろう。
2ゴールも素晴らしかったが、俊輔を上回るほどのキレキレプレーを随所に連発していた。
山瀬以外でも、前節の「怒りの一撃」でスタメンに返り咲いた狩野健太、今日の裏の主役であった渡辺千真をはじめ、兵藤慎剛、栗原勇蔵、飯倉大樹らは皆一様に素晴らしかった。
これからも、試合ごとに”日替わりスター”が生まれてきそうな勢いである。
はじめは「神奈川ダービー」ということもあってフロンターレの事も書こうと思っていたのだけれど、やっぱりやめておく。
それほど、今日のマリノスは衝撃的だった。
カズシと俊輔、2人の天才によってマリノスが生まれ変わろうとしている。
今日の試合も観客動員は大入りの35,870人。
しかし、日産スタジアムは何と言っても日本最大の7万人収容だ。
まだまだ、もっと多くのサポーターに足を運んでもらいたい。
今のマリノスには、それだけの価値が、絶対にある。
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