「色の白いは七難隠す」という言葉があるけれども、美人はそれだけ得なんだそうである。
しかしサッカー界にはその逆に、実力はあるのに「顔で損をしている」ジャンルの選手たちがいると思う。
誠に失敬ながら、いまいちサッカーが上手そうに見えない顔の選手たちの事だ。
日本でなら中村俊輔や平山相太あたりがその筆頭株だろうか。
海外だと個人的にはポール・スコールズを推したい。
僕はスコールズとベッカムの顔が逆だったら、選手としての評価も逆転していたのではないかと思っている
(名前を挙げさせていただいた3選手、本当にゴメンナサイ)。
そしてもう一人、韓国代表のパク・チソンも、そんな一人に数えられる選手だ。
「顔で損をしている選手」、パク・チソン
細長い目にエラの張った輪郭、ニキビ顔のパク・チソンは、顔もプレーもいかにも地味である。
区役所の窓口あたりに座っていたとしても、何の違和感も感じないだろう。
そしてその地味さ故に、彼の記事がマスコミで大きく扱われることは少ない。
少なくとも、その実績と比べれば。
かく言う僕も、最近までパク・チソンという選手に対して、掘り下げて考えることは無かった。
運動量は豊富。ずば抜けたテクニックは無いけども、ポジショニングが良くて攻守に顔を出す。
マンUではファーガソン監督のお気に入りで、近年ではレギュラークラスとして活躍。
でも地味。
攻撃のセンスと総合力では、中田英寿のほうが上だ。
そんな印象を持っていた。
しかしリバプールを逆転で下したこの試合で、パク・チソンは大車輪の活躍を見せる。
得点を決めたというだけではない。
ディフェンスでは、自陣バイタルエリア付近まで戻ってボールホルダーをつぶし、ひとたび攻撃に移れば、一気に敵陣まで駆けあがって起点となる。
時には体を張ったキープでマーカーたちをブロックし、果敢にシュートも狙う。
まさに攻守のオールラウンダー。
ピッチのあらゆる場面に顔を出す、彼の持ち味が随所に出た一戦だった。
僕はイングランドではリバプールを応援しているけど、この日のパクのプレーは素直に「凄かった」と認めたい。
パク・チソン、その輝かしい実績の数々
しかしよく考えてみれば、パク・チソンの実績は凄まじいのである。
ワールドカップでは中心選手の一人として4強入りを達成。
マンUではレギュラークラスとして(決勝戦には出場できなかったものの)UEFAチャンピオンズリーグで優勝も経験。
PSV時代にもチャンピオンズリーグでベスト4に入り、その年のUEFA選定のFW部門のMVPに、ロナウジーニョやエトーらを抑えて選ばれた。
この輝かしい実績!!
実績だけで比較すれば、パク・チソンは日本が誇るフットボーラーたち、中田英寿、中村俊輔、小野伸二らと比較しても、悔しいが格上だと言わざるを得ない。
それどころか往年の名選手であるチャ・ブンクン、奥寺康彦らを抑えて、アジアの史上最高の選手と言えるのではなかろうか。
オーストラリアをアジアに含めて考え、マーク・ビドゥカ、ハリー・キューウェルらと比べてみたとしても、実績ではパクのほうが上であろう。
これほど偉大なフットボーラーであるにもかかわらず、パク・チソンはそれに見合った評価を受けているとは言い難い。
京都パープルサンガで3シーズンプレーした時代もありながら、日本のメディアで大きく取り上げられることは稀。
それどころか母国・韓国でも、人気があるとかカリスマ的な存在だとかの話はあまり聞いたことがない。
かつてのアン・ジョンファンやパク・チュヨンに対するフィーバーぶりとは対照的である。
この点は、パクがKリーグでのプレー経験が無いことも関係しているのかもしれない。
けど僕たちは、同じアジア人として、パク・チソンをもっと正当に評価しても良いのではないだろうか。
最近僕は、そんなことを考えたりする。
日陰に咲く「アジア最高の花」、パク・チソン
確かにパクは地味である。
しかし、それを理由にパク・チソンを過小評価するのはフェアではない。
アジアが生んだ稀代のフットボーラーのプレーを、色眼鏡を外して、もっとこの目に焼き付けておくべきなのではないだろうか。
僕らはパクの存在を、もっと誇りに感じても良いのではないだろうか。
若いイメージのままとらえていたパク・チソンも、もう29歳である。
全盛期の彼のプレーを世界の大舞台で見る機会は、もうそれほど多くは無いのかもしれないのだから。
派手なテクニックを持っているわけでも、ずば抜けたスピードがあるわけでもない。
体格もいたって平凡だ。
しかし、パク・チソンは間違いなく偉大なフットボーラーである。
チームメイトのリオ・ファーディナンドの言葉。
「パクの素晴らしさは専門家やメディアより、チームメイトが一番わかっている」。
この言葉こそが、何よりも雄弁にパク・チソンの価値を物語っているように、僕は思うのだ。
[ 関連エントリー ]