Photo by Bjørn Giesenbauer
“夢の舞台” に立つというのは、どんな気分なのだろうか。
その世界において “聖地” と呼ばれる場所がある。
高校球児にとっては甲子園、ミュージシャンにとっては日本武道館、高校サッカーなら国立競技場になるだろう。
一握りの “選ばれし者” だけが、立つことを許される場所。
その世界に生きる誰もが憧れる、最高の舞台。
僕は残念ながら凡人なので、そのような舞台に立った事はない。
しかしそこに立った人間が、日常では味わえないような高揚感に襲われるであろうことは、想像に難くない。
それは極限まで高まった歓喜なのか、感動なのか、もしくは緊張なのか。
あるいは言いようのない恐怖の念か ー。
本田圭佑はこの日、”夢の舞台” に立った。
スタジオ・ジュゼッペ・メアッツァ、通称サン・シーロ。
ミラノの2大クラブ、ACミランとインテル・ミラノの本拠地である。
少年時代からこの舞台に憧れ続けた本田圭佑は、UEFAチャンピオンズリーグの大舞台で、ついにその地を踏むことになる。
“幸せな場所” にならなかった夢の舞台
この日の本田の胸に、どんな思いが去来していたのかは分からない。
おそらく、長年の夢が現実のものとなった事への、喜びと達成感を感じていた部分もあるだろう。
そして同時に、目の前の強敵、インテル・ミラノとの対戦に、多少なりとも緊張感を感じていた面もあったのではないか。
一つだけ確実に言えることがあるとすれば、それはこの夢の舞台が、本田にとっては “幸せな場所” とはならなかったということである。
結果は 0-1の敗北。
内容はむしろ、0-1でラッキーだったと思えるようなものだった。
ここまで快進撃を見せてきたCSKAも、カルチョの巨人との実力差は歴然だった。
本田もこの日は、インテルMF陣の激しいマークに何もさせてもらえず、後半途中に交代。
しかもディエゴ・ミリートの決勝点は、中盤のプレスに本田がボールを奪われてからの、カウンターから生まれたものだった。
少年時代からの夢は、苦い思い出に変わった。
しかしチームの首の皮は、まだ繋がっている。
モスクワで行われる 2ndレグで、CSKAはヨーロッパ中を驚かす事をやってのけなければならない。
次戦はエース格のミロシュ・クラシッチが出場停止。
何かを起こすとすれば、この日本人の左足をおいて他にはないはずだ。
いつでも逆境を跳ね返し続けてきた本田圭佑は、再び奇跡を起こすことができるのか。
そう、勝負はまだ、半分しか終わっていないのである。
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