Photo by Freakland – フリークランド

声楽歌手による荘厳な国歌斉唱が夜空に響き、発炎筒の赤い炎が煌々とピッチを照らす。

そこには、日本国内とは全く違った世界があった。

韓国・ソウルで行われた日韓戦。

親善試合であっても、この両国の対戦は単なるテストマッチではない。
場内には厳戒ムードとも言える、物々しい雰囲気が立ち込めていた。

そして試合が始まり、僕は心の底から驚いた。

驚愕したと言ってもいい。

チームというのは、これほど短期間に成長するものなのか、と。

プライドをかけた宿命の対決、日韓戦

アルベルト・ザッケローニ監督が率いる、新生日本代表の第2戦目。

就任初戦でいきなりアルゼンチンに勝つという大金星を挙げたザッケローニだけれども、この日韓戦はアルゼンチン戦とは全く違った性格のものだった。

宿命のライバルとのアウェー戦。

その厳しさは、アルゼンチン戦を上回るものになるのではと予想されていた。

そしてその予想は、現実のものとなる。

ともにほぼベストメンバーを揃えた両チームは、立ち上がりからアクセル全開のガチンコ勝負に突入した。

中盤で両チームともがハードなプレッシングをかけ合い、攻守がめまぐるしく入れ替わる。
その中で前半早々の 12分、激しい接触プレーから駒野友一が腕を骨折し、負傷退場するというアクシデントも発生した。

まさに両国のプライドをかけた戦い。

下手な公式戦などとは比べものにならないほどの、日韓の激しいぶつかり合いが展開された。

しかし試合を観始めてすぐ、僕はいい意味での「違和感」を覚える。

原因は前日に観た、AFC U-19選手権である。

このフル代表の日韓戦に先立つ月曜日、日本は来年の U-20ワールドカップ出場権をかけた AFC U-19選手権で、同じく韓国と対戦していた。

そしてこの試合で日本は、2点を先行しながら 15分で3点を奪われて逆転されるという最悪の形で敗れ、ワールドカップの出場権をも逃していた。

その結果もさる事ながら、内容はさらに最悪なもの。

韓国の球際の強さと正確なボールコントロールに次々に決定機を作られては、戦術も連携もない日本は前線の選手たちの個人能力に頼るサッカーに終始して、為す術も無く敗れ去った。

この U-19の試合を観戦した僕にとっては、翌日のフル代表の日韓戦も、ある種の既視感を伴うものだった。

事実、シンプルにボールを繋いでフィジカルの強さで勝負を仕掛けつつ、ディフェンス時にはハイプレッシャーをかけてくる韓国の戦いぶりは、U-19代表のそれと酷似していたと言ってもいい。

しかし、全く違うことが一つだけあった。

それは日本代表の戦いぶりである。

日本の見せた見事な戦い

ちなみにサッカーにおいて、「監督」がチーム力を左右する重要なファクターになることはよく知られたところだと思う。
僕もアーセン・ベンゲルやイビチャ・オシムが劇的にチームを変貌させてきた歴史を見てきたので、ご多分にもれず「監督力」の信奉者の一人でもある。

しかしそんな僕でも、まさかここまで急激に日本代表が変わるとは、まったく予想もしていなかった。

ザッケローニが就任してわずか2戦で、日本は完全に違うチームであるかのような確変ぶりを見せていたのである。

この日の日本は、韓国に負けず劣らずの激しいプレッシャーをかけて、中盤のボール奪取で互角の戦いを見せていた。
U-19が球際の攻防で圧倒された時の弱々しさからは、想像できなかった姿である。

チーム全体が守備に対する高い意識を持って、攻撃的な全体守備で、90分を通じて安定した守りを見せた日本。

攻撃に回っても、ボールを奪うと前線の選手たちにシンプルにつないでは、以前よりもゴールに直結するプレーを狙う。
場合によっては中盤を省略して、タテに早いダイレクトな攻撃を見せる。
かと思えば、時にはオシム・岡田時代から培ってきた軽快なパス回しを見せて、韓国 DF陣を翻弄した。

この日は特に、本田圭佑・長谷部誠・松井大輔・遠藤保仁らの中盤が素晴らしいプレーぶりを披露する。
僕がこれまで観た代表の試合の中でも、屈指の中盤の働きぶりだったと言ってもいいかもしれない。

中盤のキーマンたちは、激しいプレッシングでボールを奪うと、自らゴリゴリとボールを持ち上がり、そこからラストパス or フィニッシュに持ち込むというタスクをほぼ完璧に実行していた。

けっきょく得点は生まれなかったけれども、90分を通じて両チームが高い集中力とモチベーションを発揮し、白熱の攻防が続いた名勝負だったと言えるだろう。

アウェーであることと、韓国のハンドによる PKが見逃されたシーンもあったことも考えれば、限りなく勝利に近い引き分けだったと言っていいと思う。

ザッケローニの披露した “マジック”

それにしても、日本はまかりなりにもワールドカップで世界のベスト 16に入ったチームである。

それはほんの3〜4ヶ月前の話だし、あの時点でも日本は、持てる能力を限界に近いところまで発揮するチーム作りを実践していたはずだった。

しかしザッケローニは、日本代表選手たちの持つ潜在能力をさらに引き出すことに成功した。
これはもう、驚きだとしか言いようがない。

ザックいわく「まだ自分たちの能力を信じていない選手たちがいる」そうだけれども、観ている僕からしても、日本の選手たちにまだまだこれほど眠っていた能力があったとは、まったく想像できていなかった。

いまの日本は、間違いなくワールドカップの時よりも成長している。

これまでも日本は「上手い」あるいは「粘り強い」チームではあったけれども、いまはそれ以上に「強い」という印象を抱かせる。

そしてさらに驚きなのは、これがザッケローニが就任して、まだたったの2試合目でしかないことだ。

その人柄の良さもあって、日本では概ね好意的に受け入れられた新監督のアルベルト・ザッケローニ。

しかしその手腕がベールに包まれていたこれまでは、とりあえずただの「人の良さようなイタリアのおっちゃん」というイメージだった。

しかしザッケローニは、この 10月のアルゼンチン戦と韓国戦で、その持てる手腕を遺憾なく発揮してみせた。
名刺がわりとしては、この上ない結果だと言えるだろう。

やはり「セリエA優勝監督」の肩書きは、伊達ではない。

わずか2試合で早くも披露された、ザッケローニの “マジック”。

これからこのチームは、どこまで進化していくのだろうか。

その未来に、俄然、期待をせずにはいられない。

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