リーガ・エスパニョーラはバルセロナの2連覇で幕を閉じたけれども、ヨーロッパ各国リーグもこの週末までに、そのほとんどが最終戦を迎えた。
そしてイングランドで、今シーズンのチャンピオンとなったのがチェルシーである。
モウリーニョの影に悩まされ続けたチェルシー
「チェルシー」。
数年前まではほとんどの日本人にとって、チェルシーと言えば駅のキオスクで売っている飴ちゃんの名前であった。
しかし2003年にロシア人の大富豪ロマン・アブラモビッチがオーナーに就任すると、05年には実に50年ぶりにプレミアリーグを制覇。
以来、日本国内での認識も、「チェルシー」と言えば「ロンドンの強豪サッカーチーム」というように変わっていったのである。
しかし、黄金時代を築いた監督ジョゼ・モウリーニョがチームを去って以降、チェルシーは彼に匹敵する「真の指揮官」を見つけられずにいた。
2シーズンで3人の監督が入れ替わり、その間にマンチェスター・ユナイテッドにリーグ3連覇を許してしまう。
チェルシーのブランドは、次第にリーグでの存在感を薄める形となりつつあった。
しかし今シーズン、チェルシーはいよいよモウリーニョの幻影を払拭する「待ち人」を手に入れた。
それはACミランで黄金時代を築いたイタリア人監督、カルロ・アンチェロッティである。
チェルシーに現れた待ち人、カルロ・アンチェロッティ
アンチェロッティは僕から見ると不思議な監督である。
見かけは気難しそうで、いつも不機嫌そうな表情をしているようにも見える。その風貌から受けるパッと見の印象では、何となくあまり有能そうな監督には映らない。
明らかに「オッサン」と呼ぶべき年齢だけれども、その割には半ズボンと蝶ネクタイが似合いそうな、金持ちの家の小学生のようなオーラも漂わせている(あくまでも個人的な主観です、あくまでも…)
見事な二重アゴはスラムダンクの安西先生を彷彿とさせ、そこにおぼっちゃまくんとがきデカを足して3で割ったような漫画チックなビジュアルは、ちょっと僕の考える「名将」のイメージとはギャップがあったりもするのだ。
とりあえず全国のアンチェロッティファンの皆さん、ごめんなさい。
ところがこのアンチェロッティ監督が、実は大変な人格者なんだそうである。
ACミラン時代から、選手の人心掌握術には高い評価を受けていたアンチェロッティ。
彼がチェルシーでも選手たちと太い信頼関係を築き上げたことが、今季の覇権奪回の大きな要因となったようだ。
思えばモウリーニョも、選手たちとファミリー的な関係を築く能力に長けたカリスマ性あふれる監督だった。
チェルシーは世界的なスーパースターの集まったチームである。それだけに選手個々のプライドも高い。
かつてワールドカップでもトヨタカップでも世界チャンピオンに輝いたフェリペ・スコラーリのような名監督でさえ、チェルシーではディディエ・ドログバらの軸となる選手と良好な関係を築けずに失敗した。
しかしアンチェロッティは、その最大の難関をクリアーしたのである。
スコラーリが扱い切れなかったドログバとは親子のような関係をつくり上げ、2回目のプレミアリーグ得点王へと導いた。
また、キャプテンのジョン・テリーがスキャンダル問題の渦中にある時期にも、常にアンチェロッティはテリーの側に立ち続けた。
こうして、チェルシーの監督と選手たちの固い絆は作り上げられていった。
スターぞろいのチームが「ファミリー」となれば鬼に金棒である。
チェルシーは4シーズンぶりにプレミアリーグの覇権を奪回し、さらにFAカップとの2冠も達成。
これはモウリーニョ時代にも成し得なかった、クラブ史上初の快挙である。
そして同時に、クラブを見事に再生させたアンチェロッティの手腕の賜でもあった。
チェルシーとアンチェロッティ、来季に向けての新たな挑戦
とうとうアンチェロッティという「待ち人」を手に入れたチェルシー。
しかしマンチェスター・ユナイテッド、アーセナルらのライバルたちもこのまま黙っているはずがない。
今季2冠に輝いたチェルシーと言えども、リーグ2連覇は容易なミッションではないだろう。
しかし完全復活を遂げたチェルシーもまた、来季も間違いなく他チームにとっての脅威となるはずだ。
そしてその輪の中心には、カルロ・アンチェロッティがいるはずである。
真の「金持ちのファミリー」であるチェルシーで、確かな足跡を残したアンチェロッティ。
その風貌とは裏腹の鋭い采配で、来シーズンもプレミアリーグを盛り上げてくれることだろう。
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