Photo by Crystian Cruz
長友佑都がイタリアへ渡ってから、およそ4ヶ月が経った。
9月には一時は首位に立ったチェゼーナも、気がつけば今では 18位。
セリエB上がりのチームとしては定位置とも言える、降格圏内にまで順位を急降下させてしまっていた。
もともと戦力が充実しているとは言いがたいチェゼーナにとって、現在の順位は驚くべきことではない。
ただしセリエA残留に向けては、この時期が一つの踏ん張りどころになるだろう。
そしてそのチェゼーナは今節、イタリアを代表する強豪・ユベントスの新ホームスタジアム、スタディオ・オリンピコに乗り込んだのである。
ユベントスを慌てさせた、チェゼーナと長友佑都
長友佑都にとって、順位を 17個落としたこの2ヶ月間は、苦悩の日々だったに違いない。
しかしその逆境が、長友をさらに一回り大きいプレイヤーに育て上げていたのも、また事実だった。
右サイドバックで先発出場した長友は、特に前半は素晴らしいプレーぶりを披露する。
得意のオーバーラップでチャンスに絡んだかと思えば、ユベントスの誇る、イタリア代表をズラリと並べた攻撃陣にも堂々たる対応を見せる。
特にトイメンに入ったイタリア代表、クラウディオ・マルキージオは、長友佑都の前に何度となくその創造性を封じ込められた。
抜群の読みとポジショニングで、前半途中までは完璧なディフェンスを見せた長友佑都。
たまらずマルキージオは試合途中から逆サイドにポジションを変え、このマッチアップは長友の完勝に終わった。
そして長友の好プレーの影響もあって、チーム自体も勢いづく。
迎えた前半 11分。
左サイドでボールを持った、チェゼーナのエマヌエレ・ジャッケリーニがクロスを上げる。
これをファーサイドのエゼキエル・スケロットが折り返したボールを、最後はルイス・ヒメネスが決めて、何とアウェーのチェゼーナが先制点を奪ったのである。
まるで大金星を挙げた ACミラン戦を彷彿とさせるような展開。
さらに得点後もチェゼーナはカウンターからチャンスを創り出し、4位の強豪ユベントスを相手に互角の戦いぶりを披露した。
まさかあのミラン戦の奇跡が、また再現されるのか –.
チェゼーナを応援する誰もが、そんな期待を胸に抱いたことだったろう。
しかしチェゼーナにとっての「夢の時間」は、わずか 20分足らずで終わりを告げることになるのである。
チェゼーナを襲った「現実の重み」
30分、アレッサンドロ・デルピエロの蹴ったボールは、チェゼーナのゴールに吸い込まれていった。
チェゼーナはこの直前、マキシミリアーノ・ペジェグリーノのファウルで PKを与えてしまっていたのだ。
同点に追いつかれ、「夢の時」が過ぎ去ったチェゼーナ。
そしてここからは代わりに、「現実の重み」がチェゼーナに襲いかかることになる。
およそ 10分後の 41分には、ペジェグリーノが2枚目のイエローを受けて退場。
そしてその直後、10人になったチェゼーナに、ゼブラの巨人が牙をむいた。
右サイドでボールを持った、ユベントスのマルキージオ。
その右足からのクロスは長友佑都の頭上を超えて、ファビオ・クアリラレッラの頭を捉える。
このクアリラレッラのヘディングシュートが突き刺さって、チェゼーナは一気に 2-1と逆転を許してしまう。
そして1人足りないチェゼーナにはもう、これを覆す力は残されてはいなかった。
後半のユベントスは、まるで「流して」いるかのような戦いぶり。
58分には早々にデルピエロとモハメド・シソコを下げて、余裕をまざまざと見せつける。
そして 87分には、再びクアリラレッラに決められて万事休す。
けきょく 3-1というスコアで、チェゼーナが「順当な敗北」を喫したのである。
チェゼーナを迎える「試練の時」
試合後、長友佑都は無言でスタジアムを後にした。
それも無理もない。
チェゼーナはこれで、引き分けひとつを挟んで6連敗。
順位をさらに 19位にまで下げ、いよいよセリエA残留に黄信号が灯ってきた。
ただ、シーズンはまだ3分の1も消化していない。
ここからの頑張り次第ではもちろん、再び残留圏内に順位を上げることも充分に可能なはずだ。
そしてこの苦しい時期を越えて、復活を実現できるかどうか。
そのチェゼーナの底力がいま、試されていると言ってもいいだろう。
チェゼーナが早くも迎えた “正念場” の時。
ACチェゼーナと長友佑都の、試練の戦いは続く。
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