ヤングなでしこの手にした「収穫と課題」。/国際親善試合@U-20日本女子代表 2-2 U-20カナダ女子代表

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Flowers…..On The 4th Aniversary Of That Special Someone…. / Mohamed Malik

“なでしこジャパン旋風” が吹き荒れたロンドン・オリンピックの興奮も冷めやらぬ昨今、皆さんいかがお過ごしでしょうか?

しか〜し大きな大会が終わってからも、ずっとそのサイクルが続いていくのがサッカーの良いところ。4年後、8年後を目指して既に動き始めている女子サッカー界の次なる話題は、日本で開催されるU-20女子ワールドカップになる。
8月19日、つまり次の日曜日に開幕するこの大会で優勝を目指すU-20女子代表 “ヤングなでしこ” が、壮行試合のカナダ戦に臨んだ。

次代を担うタレント軍団、「ヤングなでしこ」。

なでしこジャパンが世界に与えた “日本サッカーのイメージ” と言うと、「技術が高く」「組織的で」「最後まで諦めない」という感じになるだろうか。そしてもちろん、日本の若い世代の選手たちも同じような特長を持っている。特に指導環境の整備が本格化してきた影響で、若い世代になるほど技術レベルが高くなっているのが、日本の女子サッカー界の現状だと言えるだろう。

このU-20代表も、フィジカルや経験値ではなでしこジャパンに劣るものの、技術レベルでは非常に高いという評価を受けている。
特にこの世代は2年前のU-17女子ワールドカップで準優勝に輝き、世界一まであと一歩まで迫ったメンバーを多数据えていることで、能力の高さは折り紙つき。今回のU-20女子ワールドカップがホームの日本で開催されることも併せて考えると、「優勝候補」の名にふさわしいポテンシャルを持っていると言えるだろう。

チームの中心となるのは、トップ下またはボランチを務めるMFの田中陽子と、同じくボランチを主戦場とする猶本光のコンビ。さらにはボランチでプレーするゲームキャプテンの藤田のぞみと、2010年のU-17女子ワールドカップでシルバーボール賞(MVPランキング2位)に輝いたドリブラーの横山久美。そして、代表では左サイドバックだけれども所属クラブのスペランツァFC大阪高槻ではフォワードやサイドハーフでレギュラーを張る浜田遥といった面々。
本当ならここにエースストライカーの京川舞がいたけれど、残念ながら膝に大怪我を負ってリハビリ中で、本大会は不参加となってしまった。また、年齢的にはこのU-20代表に参加資格のあるなでしこジャパンの岩渕真奈も、怪我の関係もあって今大会は参加を辞退している。

このように主力を欠いて本大会に臨むことになったヤングなでしこ。
しかしこの壮行試合では、持ち前の技術を活かして、今後に期待を抱かせるプレーを見せてくれたのである。

ヤングなでしこ、内容では圧倒したドローゲーム

対戦相手のカナダは大柄な選手たちを揃え、フィジカルの強さを活かして攻め込んでくるタイプのチームだ。その反面、技術は高くはなく、とにかくロングボールを前線に放り込んでシンプルな攻撃を仕掛けてくる。そして序盤の日本は、そのカナダの強靭なフィジカルに苦しんだ。
しかし徐々にカナダの強さにも慣れてくると、ワンパターンなカナダの攻撃をしのいで、日本は主導権を握れるようになっていく。

そして前半20分、先制点は生まれた。
左サイドでボールを受けた横山久美がドリブルでカットイン。1人をかわしてから右足でファーサイドを狙ってミドルシュートを放つ。これが見事に決まって 1-0。
10番・横山の鮮やかなゴールが決まって、日本がまずはリードに成功した。

ちなみにこの日も日本の攻撃の中心となったのは、9番を背負った田中陽子だった。
トップ下で先発した田中陽子は前線を所狭しと走り回り、ドリブル・パス・ミドルシュート・セットプレーと、攻撃のあらゆる場面に顔を出していく。
その田中陽子を支える猶本光・藤田のぞみ のボランチコンビも期待に違わぬ働きぶり。特に前半は藤田が活き活きとしたプレーを見せていて、得意のディフェンスだけではなく、ミドルシュートなどの攻撃面でもチームをリードした。

そして迎えた後半、日本はメンバーを一気に4人入れ替えて、サブメンバーのテストを試みる。藤田がベンチに下がって、ボランチは田中陽子と猶本光のコンビに変更。トップ下には柴田華絵を入れる布陣でパフォーマンスをチェックした。
結果的にはメンバーを交代してからも日本の構成力は低下することなく、カナダを一方的に押しこむ展開が続く。ただし、ボランチに下がったことで田中陽子が攻撃に絡むシーンが前半よりは減り、前線の破壊力はやや低下してしまったように感じた。

試合は85分に田中陽子のフリーキックからカナダのオウンゴールを誘発して2点目を奪ったけれども、57分と88分にそれぞれミドルシュートを決められて 2-2のドロー。
失点は1点目がカウンターから、2点目がディフェンダーのクリアミスからということで致命的な失点ではなかったけれども、ヤングなでしことしては、収穫と課題の両方を残して本大会を迎える格好になった。

ヤングなでしこの手にした「収穫と課題」

日本のストロングポイントは、やはり主力選手が揃う「中盤」ということになりそうだ。田中陽子には完全にチームのエースとしての風格が出てきたし、猶本光、藤田のぞみのボランチコンビも攻守に高いクオリティーを見せつけた。

反面、課題としてはまず、失点シーンに見られたようなディフェンダーの集中力の部分が挙げられる。
しかしここに関しては、先発の土光真代と村松智子の「日テレ・ベレーザ高校生コンビ」が前半は集中した守りを見せていたので、大きな問題はなさそうだ。

むしろ個人的に不安を感じるのは、6月のアメリカ戦でも見られた「決定力不足」の部分である。

このチームの中盤はクオリティーの高い選手が揃っているけれども、別の視点から見ると、得点力も中盤の田中陽子たちに頼りすぎている傾向が見られる。本来ならワントップの道上彩花、この日に1ゴールを挙げた横山久美あたりがポイントゲッターになるべきだけれども、そうなりきれていないのが現状だ。
道上は高さ、横山はドリブルからのミドルシュートという武器があって「一発」を持っているのは頼もしいけれども、その反面、2人とも運動量が乏しくて、90分を通じてコンスタントにチャンスに絡むことはあまり期待できそうにない。

それでも相手が弱いうちはチーム全体の得点力でカバーできるけれども、厳しい相手とのゲームになればなるほどストライカーの得点が必要になってくるのは、大儀見優季や大野忍が貴重なゴールをマークしたオリンピックでのブラジル戦、フランス戦、アメリカ戦などを見ても明らかだろう。
ここに京川や岩渕がいれば…と思ってしまうけれども、居ないものは仕方がない。得点の部分では、今のメンバーの奮起に期待したいところだ。

とは言っても、このゲームでの日本は圧倒的にゲームを支配していて、「内容」という部分では完全にカナダを上回っていた。
あとは、ゴール前での攻守両面でのクオリティーを上げることができるかどうか。

大会を通じてそれらを身につけていくことができたとしたら、上位進出や優勝も期待していいのではないだろうか。

オリンピックの銀メダルで、先輩のなでしこジャパンからは最高に近い形でバトンが手渡された。
今のこの「女子サッカー熱」をさらに盛り上げていくためにも、若きなでしこたちの奮闘に期待したい。

そして読者の皆さんもぜひ、ヤングなでしこの戦いに注目してあげてください!

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