Photo by “KIUKO”

正直なところ僕は、まだ気持ちの整理がついていない。

Jリーグ発足当初からサッカーファンとなった僕は、その頃からサッカー日本代表チームを応援し続けている。

そしてもちろんこれまでの歴史の中で、悔しい敗戦というものも何度も経験してきた。

中でも印象深いものをいくつか挙げるとしたら、93年のワールドカップ予選「ドーハの悲劇」、99年のワールドユース決勝、2002年ワールドカップのトルコ戦、そして先の南アフリカワールドカップでのパラグアイ戦あたりになるだろうか。

とりわけドーハの悲劇で体験した衝撃は、17年が経った今でも忘れがたいものがある。

「喪失感」や「絶望感」といった言葉だけでは言い表せられないほどの、まるで現実と虚構との境目が分からなくなったような虚脱感。

「こんな思いは2度としたくない」。

当時の僕はそう思ったものだけど、しかし悲しいかな、歴史は繰り返す。

U-17女子ワールドカップ決勝は、僕が再び味わった、日本代表の「歴史的敗北」だった。

日本の喫した「歴史的敗北」

トリニダード・トバゴで行われていた FIFA U-17女子ワールドカップ。

日本はこの大会で快進撃を続け、FIFA主催の世界大会としては 99年のワールドユース、01年のコンフェデレーションズカップに続く3回目の決勝戦進出を果たした。

初戦のスペイン戦こそ落として黒星発進した日本だったけれども、その後はベネズエラ戦ニュージランド戦を大勝してベスト8に進出。
決勝トーナメントでもアイルランド北朝鮮という強敵を退けて、いよいよ優勝まであと1勝というところまで駒を進めていた。

そのプロセスの中で、北朝鮮戦でスーパーゴールを挙げた横山久美のようなスターも誕生。
優勝に向けて、まさに万全の体制が整っていた。

…はずだった。

しかし、宿命のライバル韓国を相手に戦ったこの決勝戦。
日本はゲーム内容で圧倒しながら、PK戰の末に涙を飲むことになってしまう。

日本が見せた快進撃

2年前となる前回大会でも、大会 MVPを受賞した岩渕真奈ら高いスキルを持った選手を揃え、大会の華となった日本代表。

今大会のチームは2年前ほどの華麗さはないけれども、田中陽子・猶本光・川島はるな らで組む中盤の技術レベルは極めて高く、そこに京川舞・加藤千佳・仲田歩夢・そして岩渕真奈に続く大会の「超新星」となった横山久美らのアタック陣が絡む攻撃力は、前回大会に負けず劣らずの爆発力を持っていた。

そこにさらに「粘り強さ」を組み合わせた今回の代表は、アイルランド戦の勝利でベスト8の壁を突破。
前回大会を上回る成績を残し、見事にファイナル進出を果たす。

決勝の韓国戦も、技術レベルで日本が韓国を凌駕していたのは明白だった。

最終的なシュート数は、日本の 37本に対して韓国は 15本。
コーナーキックの数も日本 8本、韓国 2本。
どちらが試合を支配していたかは議論の余地がないだろう。

しかしそれが結果に直結するわけではないのが、サッカーの奥深さでもある。

勝ち切れなかったリトルなでしこ

試合開始直後、日本は悪くない立ち上がりを見せていた。
ところが先制点を挙げたのは韓国。

6分、日本のクリアボールを拾われた流れからイ・ジョンウンのミドルシュートが決まって、まずは韓国が1点をリードする。

しかし5分後の 11分、日本も同じような形から韓国のクリアを拾い、猶本光がミドルを叩き込んで同点に。

さらにその6分後の 17分、大会を通じて中盤の要として大活躍した田中陽子が、ロングレンジからコースを突いた絶妙なシュートを突き刺す。
自身の今大会4得点目となるゴールで、その存在感を見せつけた。

ボランチ2人による2本のシュートで逆転に成功した日本。
その後もゲームを支配し、この時点で日本は勝利に大きく前進したかと思われた。

しかしその後、日本は大きな落とし穴にはまってしまう。

前半も残り僅かとなったロスタイム、日本は韓国にフリーキックを与えてしまう。

遠目のレンジ。
直接狙われる脅威は、それほど感じられる距離ではなかった。

しかし韓国のシュート力は、僕の予想を遥かに超えていた。
ロングレンジから放たれたキム・アルムのフリーキックはドライブ回転のかかった弾道を描き、日本のゴールに突き刺さったのである。

日本にとっては、最も与えたくない時間帯で与えてしまった1点。
このゴールで同点に追いつかれたまま、試合はハーフタイムを迎える。

技術レベルでは、遥かに日本の後塵を拝する韓国。
それでも韓国がここまで勝ち上がってきた理由は、その勝負強さにあった。
それをリトルなでしこは、このシュートでまざまざと見せつけられてしまう。

しかし後半戦、なでしこたちもその底力を発揮することになる。

迎えた後半の 57分。

左サイドでボールを受けたのは横山久美だった。

準決勝の北朝鮮戦で、歴史に残る5人抜きのスーパーゴールを挙げ、一躍世界の注目を集める存在になった横山久美。

ところがこのファイナルでは、横山を警戒する韓国の徹底マークに苦しめられていた。

しかしその横山が、ついにこの場面で決定的な仕事を果たす。

ペナルティエリア内、左サイドでボールを受けた横山久美は、そのまま縦にドリブル突破。

マークにきた韓国 DF陣をワンフェイントでぶっちぎると、中央に鋭いボールを折り返し。
これを韓国 GKが弾いたところに、待っていたのは日本の加藤千佳だった。
加藤は韓国 DFともつれ合いながら、体でこのボールをゴールに押し込む。

この加藤千佳の気迫のゴールが決まって、日本が再び1点をリードした。

「まさかの一撃」を2発浴びながら、3点目を奪って勝ち越しに成功した日本。
いよいよ日本の勝利が現実味を帯びてきた瞬間だった。

ここから日本は勢いづき、さらに怒涛の猛攻を仕掛ける。

交代した川島はるな に代わってトップ下の位置に入った田中陽子が、まさに中盤の「女王」となってチームを牽引。
ドリブルに、パスに、シュートに大活躍を見せると、それに呼応してチームも躍動。
この時間帯に日本は、再三の決定的チャンスを創造する。

しかし何度も迎えた決定機でシュートミスを繰り返し、日本はこの優位な時間帯で追加点を挙げることができない。

そして結果的にこのミスの数々によって、日本は自分の首を締めることになってしまった。

試合も残り約 10分となった 79分。
「もう無いだろう」と思っていた展開が、3たび日本の目の前で繰り返されてしまう。

日本のクリアボールに反応したのは、交代出場した韓国のイ・ソダムだった。

バイタルエリアでこのボールを捉えたイは、ハーフボレーのような形で右足を一閃。
このシュートが轟音を立てて日本の GK平尾恵理の頭上を突き破り、韓国に3点目となる同点ゴールが生まれたのである。

呆然とする日本の選手たち。

まったく同じような形から3点を失い、試合は延長戦へともつれこむ。

そして延長でも決着はつかず、試合はとうとう PK戦での決着を迎えることとなった。

解消されない日本の弱点

僕は準決勝の記事で、「日本の優勝を確信している」と書いた。
負け惜しみになってしまうけれども、それでも僕はそう感じた自分の直感が、間違っていたとは今でもあながち思っていない。

事実、日本は韓国を圧倒する戦いぶりを見せ、120分を戦ってもスコアの上では負けていなかった。

しかし結果として日本は、ゲーム内容で上回りながら、3発のミドルシュートを食らって PK戦に持ち込まれてしまう。

失った3失点は、その3本ともが、ゴールキーパーの頭上を狙ったシュート。
それは2年前のチームが敗れた準々決勝イングランド戦と、全くと言っていいほど同じ展開だった。
結果として日本の弱点は解消されていなかったのだ。

いや日本のと言うよりも、世界の女子サッカーの、と言うべきだろうか。
この大会を通じて見ても、GKに問題を抱えているチームが数多く見受けられた。
それだけロングシュートが決まりやすい女子サッカーでは、男子とは戦術も多少変わってくる部分もある。

そしてその女子サッカー特有の必殺技「ロングシュート」を、徹底的に磨いてきたのが韓国だった。

ボール回しなどの技術面で日本に圧倒されながら、韓国がスコアの上で互角の戦いに持ち込んだのは、その飛び道具があったからである。

それに対抗するためにも、日本の大型ゴールキーパーの育成は急務だと言えるだろう。

日本の味わった「受け入れがたい敗戦」

試合は PK戦に突入し、そして日本はここでも2年前と同じように、 PK戦で敗れた。

GK平尾恵理は1本目をストップする活躍を見せたものの、日本も1人が外して、決着はサドンデスへ。

そして日本の6人目のキッカーが失敗し、ほんの僅かな差で日本は準優勝に終わった。

サッカーはもちろん、勝敗を競うゲームである。

そしてトーナメントではなおさら、最終的には何らかの形で優劣をつけなくてはならない。

だからサッカーは、負けを避けては通れないスポーツだ。

大空翼くんはキャアリアを通じて1度しか負けていないけど、現実のサッカーは、常に勝利とともに敗北とも隣り合わせの競技である。

でも僕は、負け方にも3通りのパターンがあると考えている。

1つは全力を出し切った上での敗北。
勝利に向かって完全燃焼し、その結果惜しくも敗れたパターン。

これは先の南アフリカワールドカップでのパラグアイ戦などが該当すると思う。
負けはしたものの、どこか清々しさが残る敗戦だ。

もう1つは明らかに力負けしたというパターン。
ドイツワールドカップでのブラジル戦などのような、強豪国との対戦はこれに当たるだろう。

こちらは負けることがある程度予想されているだけに致し方ない部分もあって、比較的ショックも少ない。

そして3つ目のパターンが、勝てる試合を落としてしまったケースだ。
これは力で負けていたわけではないだけに、フラストレーションだけが残る敗戦となる。

そして今回は、この最悪の負けパターンにはまってしまったと、個人的には思った。

勝負にタラレバは無いのは常識だけども、それでも後半に数多くあった決定機をもう1つでも決めていれば…と思うと、悔やんでも悔やみきれない敗戦。

もちろん韓国の驚異的なシュート力と精神力は賞賛に値するとは思う。
しかしそれでも、日本が充分に勝てた試合だったことも確かだろう。

日本が初の世界チャンピオンになる瞬間を、こんな形で逃してしまった現実を、僕は今でも消化しきれていない。
僕自身にとってはまさに 10年に1度クラスの、受け入れがたい敗戦だった。

しかし一縷の希望は、選手たちがこの結果を前向きに捉えていたことである。

敗戦の中に見えた一縷の希望

試合直後には号泣していた日本代表「リトルなでしこ」の選手たち。

ただし表彰式が行われる頃には、彼女たちの中には笑顔も見られていた。

こういう時に女性は強い。

確かに決勝こそ悔いが残ったけれども、世界大会で準優勝という結果は間違いなく立派なものだ。

選手たちにはぜひ、胸を張って日本に帰ってきてほしいと思う。

そして僕自身も、この敗戦の中から「意味」を見出した部分も無いではない。

あと一歩のところで世界チャンピオンに手が届かなかった、若きなでしこたち。

しかし裏を返せば、それは今後に向けてのモチベーションにもなるはずだ。

シルバーメダリストに終わった日本の選手たちと、MVP争いでもシルバーボールに終わった横山久美には、黄金に輝くメダルを目指して技を磨く余地が残された。

優勝を逃したことは悔しいことに違いはないけれど、それでも彼女たちの長いキャリアを考えれば、U-17は1つの通過点に過ぎない。

この敗戦の悔しさをぜひ、今後の成長に繋げていってほしいと思う。

リトルなでしこたちが見せてくれた素晴らしい6試合と、あと一歩で逃した世界チャンピオンの称号。

それはサッカーの神様が彼女たちに贈った、貴重なプレゼントなのだと僕は信じたい。

なぜなら彼女たちには、この悔しさを晴らす機会が、まだたっぷりと残されているのだから。

そして僕はいまから夢見ている。

このチームに岩渕真奈を加えた、日本女子サッカー界の「黄金世代」たち。

その彼女たちが世界の頂点に立つ、日本サッカー界の至福の瞬間。

そんな悲願が実現する姿を僕たちが目の当たりにする、必ず来るであろう「Xデイ」の訪れを。

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