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現代サッカーでは、試合数の増加がひとつの問題になっている。
国内リーグに加えて、カップ戦、国際トーナメント、さらに代表戦まで絡んでくれば、1選手の年間出場試合数は 50を超えることとも珍しくはない。
そうなってくると、選手の体にも疲労が蓄積されることになってくる。
アレッサンドロ・ネスタなんかはそれが理由でイタリア代表を引退したけれども、代表戦と並んで選手の負担となってくるのが、国内リーグとチャンピオンズリーグとの掛け持ちだ。
ちなみに僕は普段デスクワークをメインにこなしているけれども、仕事の都合でたまに外に打ち合わせなんかに出ることもある。
それが例えば2〜3時間の外出だったとしても、戻ってきてからまた普段の仕事をこなそうとするとドッと疲れるのだ。
パフォーマンスはざっと見積もって 40%ダウンといったところだろうか。
まあ話の次元が違いすぎるのであまり参考にならないかもしれないですが…。
とにかくそれだけ「掛け持ち」というのは余計にエネルギーを費やすということだ。
そして内田篤人の所属するシャルケ04も、この「掛け持ち」に苦しんでいるチームのひとつである。
シャルケ04、2つのリーグで見せる大きなギャップ
シャルケ04は昨シーズンのブンデスリーガで旋風を巻き起こし、リーグ2位という好成績を収めた。
そしてその結果、今シーズンは UEFAチャンピオンズリーグの出場権を手にしている。
チャンピオンズリーグでのシャルケは好調だ。
リヨン、ベンフィカといった難敵と同じグループながら、ここまで3試合をこなして勝ち点6。
決勝トーナメント進出圏内の、グループ2位の位置につけている。
しかしその反面、ブンデスリーガでは前節まで 16位と絶不調。
ゲーム内容も酷いもので、昨年2位の面影は全く見られないチームに成り下がってしまった。
そして迎えた今週。
ミッドウィークのチャンピオンズリーグ、ハポエル・テルアビブ戦では、ラウル・ゴンザレスの2ゴール、内田篤人のフル出場と明るい話題を振りまきながら 3-1と快勝したシャルケ。
その勢いで、この週末のブンデスリーガも良い試合を見せてくれるのでは、と僕は期待していた。
しかし結果的に、その期待は完全に裏切られることとなってしまう。
シャルケ04がアイントラハト・フランクフルトのホームスタジアム、ヴァルトシュタディオンに乗り込んだ第9節。
内田篤人はこのゲームでも先発出場を果たした。
前半の内田は、おおむね無難な出来だったと言えるだろう。
相変わらずポジショニングの甘さからピンチを招く部分も見られたけれども、攻撃面では的確な繋ぎを見せるような場面も見られて、悪い出来ではなかったように感じた。
チーム自体も、前半は可もなく不可もなくといった展開。
ジェフェルソン・ファルファンの精力的な動きが目立っていたけれども、期待のラウルも惜しいシュートを放つ場面も見られて、後半への期待を抱かせる内容だった。
しかし迎えた後半、シャルケはまるで全く別のチームかのように、突然に「崩壊」してしまうのである。
シャルケ04の「崩壊」
後半、ゲームは一方的なフランクフルトペースとなった。
フランクフルトの前線からの激しいプレスの前に、ボールを全く運べないシャルケ。
ファルファンだけは相変わらず頑張っていたけれども、ラウルもフンテラールも、後半はほぼ沈黙。
左サイドに至っては、ほとんど攻撃に絡んでこなかった。
そんなチーム状態の中、内田のパフォーマンスも低下の色を見せてしまう。
70分にはフランクフルトの 10番、ハリル・アルティントップのドリブル突破に完全にぶっちぎられる場面もあって、ディフェンス面での危うさをまたまた露呈してしまった。
この場面以外でも中途半端なポジショニングから、何度もクロスを上げられる場面も目立った内田。
けっきょく内田はこの日も、85分に途中交代させられてしまう。
ただし、この日に悪かったのは内田だけというわけではない。
内田と逆の左サイドも何度も突破されていたし、センターバックの守りも相変わらずチグハグ。
内田が絡む・絡まないに関わらず、シャルケはたびたび決定的チャンスを許してしまった。
しかし、結果的にテオファニス・ゲカス、パトリック・オクスらのフランクフルト攻撃陣の決定力不足に助けられ、試合は何とかスコアレスドローで凌ぎきることができたという印象である。
シャルケ04を苦しめる「2足のわらじ」
後半、シャルケが崩壊してしまった理由には、たぶんミッドウィークにチャンピオンズリーグを戦っていた影響もあったのだろう。
明らかにシャルケの選手たちの運動量は落ちて、試合終盤には脚が止まってしまった選手たちも少なくなかった。
シャルケのように選手層の薄いチームにとって、1週間に2試合をこなすというのは想像以上の激務になってくるということだろうか。
そして内田個人としては、相変わらずポジショニングの甘さが目立つ。
内側の選手をケアしていたら外側に走りこんだ選手への対応が遅れて、いいクロスを上げられてしまう、という場面がここ何試合もずっと続いているような気がする。
ただ、これは内田個人の責任というだけではなくて、周囲とのマークの受け渡し、そのコンビネーションの問題も大であると考えられる。
内田篤人、クリストフ・メツェルダーをはじめ、ディフェンスラインに新加入の選手が多いシャルケだけに、この問題が解消されるにはまだ時間がかかるのだろう。
しかし、フェリックス・マガト監督の首は、かろうじて皮一枚つながっているような状態だ。
シャルケにとっては今後も、ギリギリの戦いが続くことになる。
内田篤人とシャルケ04を苦しめる「2足のわらじ」。
彼らは果たして、その難しいチャレンジを乗り越えることができるのだろうか。
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