ひとことで言うと「面白いゲーム」であった。
現在は下位に低迷する両チームの対戦となったこの一戦。
至極当然のことだけれども、通常、リーグ戦の順位というのはチームの実力を判断する材料になる。
ただしこれがシーズン途中の順位だった場合には、必ずしもそれが実力を正確に反映させるとは限らない。
そしてこの日のゲームも、現時点での順位の高低を超えたハイレベルな好ゲームとなったのである。
両チームの持ち味が発揮された好ゲーム
先制したのはホームの湘南ベルマーレだった。立ち上がりからなかなかエンジンのかからないガンバ大阪を尻目に、11分に阿部吉朗がゲット。
その後はガンバがボールを保持するものの、西野監督も語ったように「ボールを持たされていた」ような展開で、実際にはベルマーレの守備の前に主導権を握らせてもらえない。
しかし苦しい展開の中で迎えた41分、後方からのロングフィードをルーカスがポストプレーで落とし、そのボールを平井将生がゲットしてガンバが同点に追いついた。
ところがその直後、その後の試合の流れを大きく分ける場面が訪れる。
ガンバのペナルティーエリア内でファールが発生し、ベルマーレにPKが与えられる。
前半終了間際の時間帯、決めれば勝ち越しとなる最高のタイミングで得たチャンス。
しかしこれをキッカーの坂本紘司が外し、ベルマーレは勝ち越しの最大のチャンスを逃してしまった。
すると後半は一転して、遠藤保仁を中心にしたガンバの流麗なパスワークが回り始める。
しかし、集散の早いプレッシングでそれに対抗するベルマーレ。
後半は両チームの持ち味が発揮された、好ゲームの様相を呈した。
しかし55分、CKからガンバが2点目を決め逆転に成功。
そして圧巻だったのは、62分の3点目だった。
カウンターから中盤付近でボールを受けたガンバ大阪の平井将生が、ベルマーレDF陣がブロックを築く最終ラインに向かって中央突破を図る。
当然それを阻止しようと2重・3重の包囲網を敷くベルマーレ。
しかし平井は一発のフェイントでベルマーレDF陣をぶっちぎると、目の前には唯一GKが立ちはだかるだけだった。
そして平井がペナルティーエリアライン付近から放った弾丸シュートがベルマーレゴールに突き刺さり、実質とどめとなる3点目をゲットしたのである。
今後に期待の持てる「可能性」
この試合は前節終了時点で16位の湘南ベルマーレと、14位のガンバ大阪の対戦だった。
それぞれ下位に低迷する両チームだったものの、ゲーム内容、特に後半は下位チーム同士とは思えないほどのハイレベルな好ゲームであった。
後半のガンバは自慢のパスサッカーが完璧に機能していた。
それは大黒柱の遠藤保仁の復調が大きいと思う。
シーズン前から代表・ACL・Jリーグとフル回転だった遠藤は、疲労の影響もあって今シーズンは満足いくパフォーマンスを見せられていなかったけれども、この試合では豊富な運動量で攻守に貢献し、見違えるようなプレーを見せていた。
遠藤の調子が上がればチームの調子も上がる、それがガンバ大阪である。
そしてそこに、この試合でも好プレーを連発していた平井将生や宇佐美貴史ら、活きのいいヤングスターたちの活躍が重なり、中断前最後のゲームとなった試合をガンバは非常にいい形で終えた。
もともと力のあるチームだけに、再開後の巻き返しに大いに期待したいところだろう。
対するベルマーレも、試合内容自体は悪いものではなかった。
この敗戦で最下位に陥落してしまったものの、組織的なプレッシングとパスワークは高いレベルに到達しつつあったように僕には思えた。
ただベルマーレの場合は、どうしても選手層が小粒な感は否めない。
特にGKも含めたDF陣は経験の浅い選手が多く、この日も組織で崩されたというよりは個人の能力でやられたような場面が目立っていたように感じた。
この部分を今後どう修正していくかが、J1残留の成否を左右する鍵となるだろうか。
下位チーム同士の対戦となったこの試合。しかし両チームともに、今後に期待を抱かせる内容だった。
この試合を最後に、Jリーグは2ヶ月間の中断期間に入る。
7月にまたリーグが再開された時には、この両チームがそれぞれの課題を克服し、上位進出へと突っ走ってくれることを期待したい。
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