ACチェゼーナの隠し持った『ダブルフェイス』/セリエA@ACチェゼーナ 1-0 SSラツィオ


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そのゴールが決まったのは、84分の出来事だった。

ACチェゼーナのゲームメーカー、マルコ・パローロは中盤でボールを受けると、四角いゴールマウスの位置を確認する。

次の瞬間、バローロの右足から放たれた弾道は 25メートルの空間を越えて、フェルナンド・ムスレラの守るゴールに突き刺さったのである。

チェゼーナにとっては砂漠での真水ほどに渇望していた、8試合ぶりの白星が手に入った瞬間だった。

チェゼーナが挙げた2つめの大金星

長友佑都の所属する ACチェゼーナは、いま試練の時を迎えている。

今シーズンにセリエBから昇格し、開幕3試合を2勝1分けで乗り切って、一時は首位に立ったチェゼーナ。

しかし4節でカターニャに敗れると、ここからチームは大失速してしまう。

気がつけば引き分け1つを挟んで6連敗。

順位は 19位にまで下降し、一転して残留争いの真っ只中に放りこまれた格好だった。

そんなチェゼーナは今週日曜日にユベントスと対戦すると、水曜日にはラツィオ、そして土曜日にはフィオレンティーナという3連戦が組まれている。

セリエAを代表する強豪3チームと、1週間足らずで3試合を行うという超・強行軍。

この3試合でどれだけの勝ち点を稼ぐことができるかが、チェゼーナのその後の運命を少なからず左右することになるだろう。

チェゼーナにとっては、まさに正念場の3連戦となった。

その初戦となったユベントス戦では1点を先制しながらも、その後3点を献上して逆転負けを喫したチェゼーナ。

そして続くこのラツィオ戦も、目下首位に立つチームとの対戦ということで、当然苦戦が予想されていた。

ところがこの日のチェゼーナは、第2節の ACミラン戦以来、今シーズン2回目の大金星を挙げることになる。

試合中盤からはラツィオに押し込まれていたチェゼーナだったけれども、粘り強い守備でなんとかこれを耐えぬく。
そしてバローロの起死回生のロングシュートが決まって、劇的な勝利をものにしたのである。

これはラツィオを首位から陥落させるとともに、自身も 18位へと順位を上げることに成功した、優勝争いにも影響を与える重要な一勝となった。

チェゼーナの持つ「ダブルフェイス」

ところで長友佑都個人としては、皮肉にもこの試合は、いつもと比べればあまりいい出来ではなかったように思う。

守備では判断ミスからピンチを招く場面も何度か見られ、オーバーラップしても効果的なチャンスに繋がる場面は多くはなかった。

ただし、それでも首位から挙げた勝ち点3は、長友にとってもこの上なく甘美な勝利となっただろう。

それにしてもチェゼーナの戦績は、もう摩訶不思議としか言いようがない。

今季ここまでで挙げた3勝のうち、2勝はミランとラツィオからのもの。
そして2つの引き分けのうちの1つは、ローマとの間で演じたものだった。

下位に低迷する弱小クラブでありながら、ビッグクラブには滅法強いチェゼーナ。

その異能の勝負強さで、チェゼーナはどの試合でも全く結果の読めない戦いぶりを披露している。

続く週末のフィオレンティーナ戦でも、その輝きは発揮されるのだろうか。

カルチョの世界で随一の、「ダブルフェイス(二面性)」を持ち合わせる ACチェゼーナ。

シーズンの全 38試合が終わったとき、彼らが立っているのは「残留」という名の楽園なのか。

それとも、「降格」という名の奈落の底か。

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