Castello del Valentino – Torino / Eric Borda
各国にその国を代表する対戦『ナショナルダービー』は存在するけれども、イタリアにとってのそれは、インテル・ミラノとユベントスとの対戦を指す。
『デルビーイタリアーノ』。
英語で言うところの “イタリアダービー” だ。
もともとはこの2チームだけが、一度もセリエBに降格したことのない「名門中の名門」だったことから、この対戦はデルビーイタリアーノと呼ばれることになった。
06年、俗に言うカルチョ・スキャンダルに関わる八百長問題でユベントスがセリエBに強制降格させられたことで、この対戦をナショナルダービーとすることに疑問の声が挙がるようになったそうだけれど、それでもこれがリーグを代表するビッグマッチの一つであることに変わりはない。
そして僕たち日本人にとっては、今年のデルビーイタリアーノは、また違った興味を提供してくれるものとなった。
インテルでデビューしたばかりの長友佑都が、このダービーマッチのピッチに立ったのである。
苦戦を強いられたインテル・ミラノ
舞台はユベントスのホーム、スタディオ・オリンピコ。
前節までの時点で、ユベントスは8位に低迷。
対するインテルはレオナルド監督の就任以降、急速に調子を上げて、首位 ACミランに5ポイント差の3位に浮上していた。
しかしその順位とは裏腹に、試合はホーム・ユベントスのペースで展開する。
前半 30分のアレッサンドロ・マトリの得点で、ユベントスが 1-0とリードをしたまま終盤を迎えていた。
そして 73分、長友佑都がいよいよこのピッチに姿を見せる。
インテルでのデビュー戦となった前節ローマ戦よりも2分早く、長友はこのビッグマッチの渦中に投入されたのだ。
長友は前節に引き続き、腰の座ったプレーを見せた。
特にこの日はディフェンス面で健闘。
ユベントスの右サイドのキーマン、ミロシュ・クラシッチに対しては、その得意のドリブル突破を何度も抑えこむ完璧な対応を見せる。
また自陣のバイタルエリア付近で、チアーゴ・モッタからスライディングでボールを奪い取る場面もあった。
攻撃ではウェズレイ・スナイデル、サミュエル・エトーらと積極的に絡み、何度かオーバーラップによる攻撃参加を見せる。
しかし、チーム全体がユベントスのディフェンスに苦しんでいたこともあって、ローマ戦のように決定機に絡む場面は見られず。
エトーが絶好の場面でシュートミスを犯した影響もあって、試合はけっきょく 0-1のままタイムアップ。
インテルとしては不調のライバルに対して、痛恨の一敗を喫してしまう一戦となった。
デルビーイタリアーノが長友佑都にもたらしたもの
試合の後、長友佑都は無言でロッカールームへと去ったそうだ。
ローマ戦では絶賛を浴びた長友も、今節では一転してイタリアメディアからの酷評を受けることになる。
個人的には、この日の長友のプレーは悪くなかったと思う。
特にディフェンス面では完璧と言ってもいいほどの対応を見せていた。
それでも1点のビハインドを背負って投入された以上、ディフェンダーと言えども得点に絡むことが要求されるということだろうか。
攻撃面でインパクトを残せなかった長友は、チームが敗れたこともあって、手のひらを返したように厳しい評価にさらされたのである。
その評価が的確かどうかは別としても、この厳しさこそが、本場イタリアのマスコミなのだと言うことだろう。
チェゼーナに比べれば比較にならないほどの注目とプレッシャーにさらされるインテルという環境は、選手にも過酷な勝負を強いる。
ただし、この厳しい環境でプレーすることが、長友佑都をさらに成長させることも、また事実だ。
長友にとってはホロ苦い経験となったデルビーイタリアーノ。
それでも長友佑都はこうやって少しずつ、「世界最高のサイドバック」へと近づいていくのではないだろうか。
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